第6話 仕事の打診
それは去年の10月の事でした。
白いうさぎに登録して間もない時、兄から突然メールが来ました。
「着られるスーツ有るのか?新しい仕事の下見に行くから同行しろ。」
僕は日の出屋を退職して2年以上経っていました。スーツも革靴も手入れせず、放置していました。働く気がまるで無かったのです。
先ずはクローゼットのスーツを確認しました。驚きました。スーツにカビが生えていたのです。サイズが合う合わないの問題ではありません。
礼服や黒いネクタイにもカビが生え、ワイシャツは黄ばんでいて着れません。
革靴を確認するとこちらもカビが生え履く事が出来ません。日の出屋を辞め腑抜け状態の影響が出ました。
兄にメールの返信をして、下見に何時行くのか尋ねると、3日後だと返事が来ました。
僕はすぐに新しいスーツ一式と革靴を買う為に紳士服店に向かいました。ズボンの裾上げが1日で出来ると聞きそれをオーダーしました。
いい機会だと思いスーツを2着買いました。
そしてワイシャツ、下着、靴下、ネクタイ、ベルト、革靴と一式揃えました。
総額18万円。大きな出費でした。それでも日の出屋に戻れば稼げると錯覚していました。兄に聞くとアルバイト扱いだと言うのです。それでは稼げません。
それでもタンポポよりも稼げるので期待しました。
後日、悲しい知らせが入りました。仕事がお流れになり無くなったのでした。兄は軽い気持ちで僕を誘った様ですが深く傷つきました。
僕は気持ちを切り替え、クローゼットの中にある衣類とカビの生えた革靴を全て捨てました。
今も新品のスーツは着る機会を待っています。
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