第6話 テンシンタワービル

ぼやけていた視界が晴れると共に、ジャラジャラと何かが激しくぶつかり合うような耳障りな音が聞こえてきた。


俺とミルテは、雀卓が所狭しと設置された広い部屋のど真ん中に立っていた。


どの雀卓も四人の人間に囲まれており、それぞれが白熱の対局を繰り広げている。


なるほど、ここがテンシンタワービルの試合会場か。


「ウォルナッツさんはどこかしら」


ミルテが会場内をきょろきょろと見回す。


「ここにいるとは限らないぜ。もしかしたら予選敗退してるかもしれないからな」


「ウォルナッツさんは世界各地の雀荘を旅打ちして周っていたのよ。そんなあっさりと負けたりしないわよ。きっとどこかにいるはずだわ」


「しかしどうやって探すんだ?お前、奴の顔を知らないんだろ?」


「そんなの係員の人とかに聞けばわかるわよ」


ミルテは得意気にそう言うと、雀卓の周りで試合を見守る審判員の一人に近付いて行って声をかけた。


「え?ウォルナッツ様ですか?」


審判員の男は煩わしそうに選手名簿を一枚ずつめくり始めた。五枚目の用紙をめくって手を止め、事務的な口調で話し出す。


「ウォルナッツ選手は本日の試合には出場されておりません。予定ですと、彼は明日の決勝戦に出場することになっております」


「ええ…!?じゃあ、ウォルナッツさんはこのタワービルにはいないということですか?」


「いえ、彼はテンシンタワービルの客室フロアの方に滞在しておりますので、試合のない日はご自身のお部屋にいらっしゃるかと…」


審判員が言い終わらないうちに、ミルテはすでに駆け出していた。


まったく呆れた奴だ。肝心のウォルナッツの部屋番号も聞かずに行っちまうとは。


「おい」


俺は審判員を見下ろしながら居丈高に言った。


「ウォルナッツの部屋番号を教えろ」







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