第5話 豪華客船サントノレ号
豪華客船の中は想像以上に広かった。
困ったな。これじゃ、どこにウォルナッツさんがいるのか全然わからない。
というか、そもそも私はウォルナッツさんの顔すら知らない。
大声で名前を呼んで探すわけにもいかないし、ここは乗組員の人に尋ねた方がよさそうだ。
あそこにいる人の良さそうな二人組の乗組員さんに聞いてみよう。
私はさっそく彼らの所へ行き、ウォルナッツさんがどの部屋にいるのかと尋ねてみた。
「ウォルナッツ様…ですか…?少々お待ちください」
乗組員の一人が、乗客名簿を調べ始める。
清潔そうな短髪で、背筋はピンとしており、いかにも真面目そうな男性だ。
「お兄さん、そんな分厚いコート着て暑くないの?」
ロムの格好に気付いたもう一人の乗組員が、ヘラヘラと笑いながら――しかし心なしか意味深な口調で彼に聞いた。
こちらの乗組員は金髪のロン毛で、甘い顔立ちをしたちょっとチャラそうな感じのイケメンだ。
どう見ても真面目そうには見えない。
水兵帽は斜めに被ってるし、胸元に趣味の悪い派手なバッジをいっぱい付けている。
こういう制服のある業界って、もっとルールとか厳しくなかったっけ?本当に乗組員なのかな?
「確かに少し暑いが、紫外線で皮膚が溶けるのを防ぐためだ。仕方なかろう」
大真面目な顔でそう答えるロムを見て、ロン毛の乗組員は目をパチクリとさせていた。
あーらら…。完全に頭のイカれた奴だと思われたわね…。
「ああ、この方ですね」
ちょうどタイミングよく、短髪のお兄さんがウォルナッツさんの名を名簿の中から見つけ出したようだ。
「ウォルナッツ様のお部屋は1003号室です。場所はこちらです」
短髪のお兄さんは私達に船内図を見せてくれた。
ここからちょっと遠いけど、急げば出航時間までには間に合いそうだ。
「行こう、ロム」
私はすぐさまロムと共に1003号室へと向かった。
どうかウォルナッツさんが部屋にいますようにと願いながら。
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