第3話「アイリス」

アイリスの精神状態はボロボロでボーッとした感じでこういった。

「あ、あの、助けていただいて本当にありがとうございます.....で、では....」

俺は無意識のうちに女の子をそっと抱き寄せてこう言った。

「アイリス...もう大丈夫だ...君はもう頑張らなくてもいい..辛い思いもしなくてもいい..休んいいんだ....」

アイリスは今まで抱え込んできた辛いことを吐き出すかのように泣きながら言ってきた。

「わ、私...すごい悔しかったです.....母親が病気で寝込んでいるのに私は何もしてやれませんでした...そしてあいつらが家に押しかけてきた時は寝込んでいる母親を殴ったり蹴ったりして私はそれを見ているだけで.....何も....」

俺はこの事を聞いて自然と涙が出てきた。

「何もしてやれてないわけではなかったと思うよ。」

「でも私は何も..」

「多分、母親にとってはどんなに自分が辛い状況でも娘が無事でいてくれる事が何より嬉しい事、アイリスはお母さんのそばにいるだけで心の支えになっていたんだよ。」

「お、お母さん.....」

そしてこの状況が3分続いた。

ー3分後ー

「アイリス、落ち着いたか。」

「はい。」

「春人君〜!春人君〜!!!!!!どこにいるんですか〜?」

すると遠くから沙也加の声が聞こえてきた。

「おーーい!沙也加!!こっちだぞ!」

沙也加はこちらの声に気づき路地裏に来た。

「どこに行ってたんですか〜!!トイレにしては長すぎません??」

「ごめん、ちょっとな。」

「てか、その可愛い女の子誰ですか!!!まさか春人君....ゲームの世界でナンパを!!」

「おい、ナンパ野郎と一緒にするな。」

「結局誰なんですか?」

「これから俺たちと一緒に行動するアイリスだ。」

「アイリスです..えっと...不束者ですがどうぞよろしくお願いします。」

すると沙也加はアイリスにくっつきいた。

「か、可愛いです〜。この銀色でサラサラの髪。そして、この甘い香り。これぞまさに美少女ですね!春人君!」

普通に沙也加も可愛い方だと思うんだが...学校では人気あったし。

「キャラ崩壊してんぞ〜沙也加〜。っていうかあんまくっつかれるとアイリスが迷惑だろ。」

「アイリスちゃんごめんなさい。」

「私は全然大丈夫です!」

「まぁ、それならいいんだけど。ちなみにこのベタベタしてきた人の名前は西澤沙也加、んで俺は小早川春人だ。よろしくな。」

「はい、よろしくお願いします!」

「ところで春人君、私たち、まだ“パーティ“を組んでないよね?」

”パーティ“は行動を共にする仲間という意味が含まれている。RPGゲームをやっている人なら分かるだろう。

「そういやぁそうだったな。じゃあちょうど三人いるからパーティを組むか。」

「そうしましょう!」

「パーティ??ですか?」

「簡単に言えばこれから一緒に行動していく仲間だね。」

「なるほどです!教えていただきありがとうございます!」

「そんなにかしこまらなくてもいいよ。」

「はい!」

「よし、じゃあパーティ申請送るから承認してくれ。」

俺は沙也加とアイリスにパーティ申請をした。

メッセージ

-一緒にパーティを組まないか?ー

「あ、来ました!これは”はい“を選べばいいんですね。」

「そうそう!」

アイリスは承認ボタンを押した。

「多分パーティというものに入れました!」

ーアイリスがパーティに参加しましたー

ー沙也加がパーティに参加しましたー

「お、来た来た。これでパーティが組まれたな。」

パーティを組むと仲間のステータスが表示される。

魔法を使うジョブの人はMPが表示される。


だがこの世界ではHPは表示されない。なぜならHPという概念がない。つまり、俺たちが元いた世界と同じくいつ死んでもおかしくはない。

俺はアイリスのステータスを見た。

ーアイリス lv12ー

ジョブ:アーチャー スキル:シャイニングアロー

「アイリスは弓が得意なのか?」

「得意というわけではないのですが、小さい時におじいちゃんから教わっていました。」

「そうなんだ。だからジョブはアーチャーなんだな。」

「はい!春人さんと沙也加さんのジョブは何なんですか?」

「私のジョブは魔導師だよ。」

「魔導士は確か...攻撃魔法と回復魔法両方を得意とするジョブですよね?」

「うん、そうだよ!」

「ちなみに何が使えるんですか?」

「回復魔法は”ヒール“、攻撃魔法は”ウィンド“が使えるよ!」

「ヒール!そしてウィンド!カッコいいです!」

「沙也加...いつの間に攻撃魔法を覚えていたんだ?」

「えーっと....実は....この世界に来た時にはもう覚えていました。」

「ん?というと?」

「最初、この世界に来た時装備を確認しましたよね?その時に攻撃魔法が使えることを伝え忘れていました!」


テヘペロみたいな顔をされても困るんだが。

「なんだよただの伝え忘れかよ(笑)てっきり、レベルが上がる新しい攻撃魔法を覚えたのかと...」

「流石にこんな短い時間でレベルを上げれませんよ。というかまだ私たち敵とたたかってないですよね...」

ちなみに沙也加はLv14、俺はLv19だ。

なぜレベル1からスタートじゃないんだよ。という疑問が生まれるだろうが俺もイマイチ分からない。

多分このゲームの仕様なのだろう。

「まぁこの世界に来てまだ4時間くらいしか経ってないから無理もないな。」

「春人さんのジョブは確か剣士でしたよね?」

「そうだよ。」

「剣士のスキルはどのようなものがあるのでしょうか?」

「俺が持っているスキルは...剣にいろんな属性を纏わすことができる“エンチャント”、回避、攻撃スキルの“アンティシペイトカウンター(見切り反撃)”くらいだね。」

沙也加とアイリスは口を揃えて「あんてぃしぺいと??」と言った。

「アンティシペイトカウンターってどんな感じの攻撃なんですか?」

「春人君こそそのスキルはいつ覚えたんんですか!!」

俺は二人から質問攻めにあった。

「えっと....アンティシペイトカウンターは...」

アンティシペイトカウンター(見切り反撃)はさっき奴らが襲ってきたときに使ったスキルで、その効果は敵が攻撃をした時にそれを見切り、攻撃を弾き、相手の懐に回り込み攻撃をするという技だ。

という説明を二人にした。

「私を助けてくれた時に使っていたものがそのスキルだったんですね.....あの時は春人さんの動きが早すぎて何が起きたのか分からなかったです。」

「まぁ、そういうスキルだからな(笑)」

「そのスキル最強すぎませんか!!」

「いやそれがそうでもないんだ。あの技は一対一で使うなら強いかもしれないが、複数体と戦う事になったらあのスキルは少し弱体化するんだ。」

「ちなみに弱体化する内容は....?」

「あのスキルを一回使ってしまったら次に出せるまでに10秒かかる。つまりインターバルがあるという事だ。」

「た、確かに。それはかなり弱くなってしまいますね。複数体と戦うことになってまとめてかかってきたら....」

「その時は自分の力で回避し、攻撃をしなければならない。」

「そうなったら私達が春人君を全力で援護するから任せてよ!」

「そうですよ!春人さん!」

「ありがとう。」

俺は沙也加から聞かれていた「いつそのスキルを覚えたの?」という質問に答えた。

「それと沙也加、このスキルはレベルが上がって取得したスキルだよ。」

「敵も倒してないのになんでレベル上がってるんですか!」

いつレベルが上がったかというとさっき襲ってきた奴らを撃退した時だ。

このことを、沙也加に伝えた。

「そうだったんですか.....てかナンパしてた訳じゃないですね。」

「沙也加は俺をなんだと思ってるんだ....」

ークスクスー

すると、アイリスは笑いながらこう言った。

「お二人さんはとても仲が良いのですね(笑)まるでカップルみたいですね!」

「ま、まぁ仲良くさせてもらってるよ...いや流石にカップルには見えんだろ...なぁ、沙也加?」

すると沙也加は顔を赤くして小声で「か、カップル....カップル...」

「おい、沙也加これは冗談で言ってるんだからな。」

沙也加はリンゴみたいに顔を赤くして照れながらこう言った。

「い、言われなくても分かってます.....」

「もしかして照れてるのか(笑)」

「照れてないですよ!」

「いや照れてんじゃん(笑)」

「だから照れてないって!怒りますよ!」

「すまんすまん(笑)よし、パーティも組んだしクエストでも受けるか」

「そうですね!」

「うん...」

アイリスは多分無理をしながら俺たちに明るく振舞っているのだろう。

何せ、あの出来事があって数時間しか経っていないのだから。


























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