第2話「新たなスタート」
「春人君......独り言を言ってましたけどどうかしましたか?」
「ん?あ、いやメールを確認してただけだよ。」
「メール?誰からのメールだったんですか?」
この様子からすると沙也加にはこの管理人からのメールが届いていない。これは沙也加に言うべきだろうか。いや、ゲーム内で自分が死ぬとか言ったら不安にさせてしまう可能性があるのでやめておこう。
「このゲームの管理人さんからだよ。」
「内容はなんて書かれていたんですか?」
俺はこのゲームのシステムだけ簡単に伝えた。
「なるほど.....RPGなのにレベルが関係ないんですか.....」
「二人で協力して生きのび.....クエストをクリアするしかないな。」
やばい、勢いで生き延びるって言いかけてしまった。
「はい、一緒に頑張りましょう!」
どうやら俺の間違って言いそうになった言葉には気がついていないみたいだ。
俺たちはメニューから装備を確認した。
「えーっと、俺のジョブは剣士で持っている武器はショートソード、スキルはエンチャントか。沙也加はどんな感じだった?」
「私はジョブが魔導師で武器は木の杖でした。スキルはヒールです!」
まぁ、RPGの最初ってこんな感じだよな。
期待した俺がバカだったわ。
「ヒールは確か回復魔法だったよな。」
「確かそうです!春人君のエンチャントというスキルはどういう効果なのですか?」
俺はエンチャントのスキル詳細を確認した。
「えーっと、剣に色んな属性を付与する事ができ、攻撃力が上がる(何回でも使用可能)..だって。」
「それってかなり使えるスキルじゃないですか!」
「そ、そうなのか?」
「はい!RPGやアクションゲームでは攻略に欠かせない必須スキルです!」
「なるほど..」
俺たちは装備の確認を終えた。
「沙也加、せっかくだしこの街を見て回ろうか。」
「いいですね!それ!」
俺たちは街をゆっくり歩きながら見て回る。
-街の中央にて-
「うわぁ〜あのお花素敵ですね〜!あ、あれも見てください!お城ですよ!お城!!すごいです〜」
「やっぱり女の子はこういうの好きなんだな。」
「はい!大好きです!」
「そっかぁ。」
「あ、春人さん!あれも見てください!わぁ〜すごい!」
沙也加がこんなに笑って楽しそうにしている表情を見るのは初めてかもしれない。
学校ではいつも笑顔でクラスメートに振舞っていたがそれとは違く、なんというか自然な感じだった。
すると、俺は物騒な男たちに無理やり路地裏に連れていかれている女の子の姿が見えた。
「ん?何やってんだあいつら」
「春人君どうしたんですか?何かおもしろいものでも見つけましたか?」
「あ、いやなんでもないよ!」
俺は気になりすぎて奴らの後を追うことにした。
「沙也加、ちょっとトイレ行ってくるからここで待ってて!」
「はい!分かりました!」
あの女の子は確かこっちに行った気が...
ー路地裏ー
するとそこには剣を腰につけた巨漢の男2人が女の子に怒鳴り散らかしていた。
俺は慌てて身を隠したて聞き耳を立てた。
「おい、クラリスちゃん〜昨日貸してた金返えせよ!」
「ごめんなさい。今は返せません。」
「はぁあああ????返せないってどういう事だよ?これだから貧乏人は困るんだよなあああ!!」
「すいません.....」
「お前じゃ話にならねえから。母親の所に連れてけ!」
「そ、それは無理です。母親は一週間前に病気で亡くなりました。」
「ハッハッハ!あいつ死んじまったのか?ざまぁねえなあ?じゃあよ、そいつのいらなくなった服とか売って金にしろや」
アイリスは涙ながらに答えた。
「そ.....それも無理です.....」
「おいおいおいおい。じゃあさこうしよう。金がないならお前が体で払えよ。」
「や、やだ....やめ...」
男たちは女の子の言葉を聞き流し女の子の服を脱がそうとした。
「おい、おっさん」
「ああ?なんだテメェ」
「その女の子からその薄汚ねえ手を退けろよ。」
「口の利き方には気をつけた方がいいぞ?小僧。次言ったら殺すぞ。」
「だから、女の子から薄汚え手を...」
「おい、次言ったら殺すって言ったよなぁ?」
「あれ、言ったっけ?」
次の瞬間、男は勢いよく剣を抜き俺に向かって走ってきた。
「逃げて!!お兄ちゃん!!!!この人は昔王様に仕えていた兵士なの!」
「もう!遅せえええ!!ガキ!!」
男は春人に勢いよく剣を振りかざした。
ーキンッ!パキンッ!ー
という音が鳴り響いた。
「遅いぜ、おっさん。ダイエットした方がいいんじゃないか?」
と男の耳元で言い。
春人は素早く男の剣を弾き飛ばし背後に回り男の腰を切りつけた。
それは一瞬の出来事だった。
「なッ⁉︎」
春人は腰を斬ったのではなくズボンのベルトを斬っていたのだった。
するとおっさんのズボンはベルトが切れた影響で緩々になり下がってしまった。
「早くその汚ねえパンツをしまって失せろよ。」
男は何も反論する事ももなくズボンを上げながら帰っていった。
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