逃亡癖
__喉につっかえたこの思いは、きっとこの先も吐き出せずに残るだろう。
テーブルの上に1つ置いてあるコップ。その底に広がる水滴を眺め、なんて時間の無駄だろうと窓の外を眺める。
何台もの車が行き交う中、曇天で暗くなった空気がポツリポツリと車窓にぶつかる。
これは人生で何度目の家出だろうか
初めての家出は小学3年生の時だった。兄と喧嘩をして止めに入った母親が、毎回兄の肩を持つことは知っていた。だけどその日は、無性に寂しくなってしまって飛び出した。
1時間経っても、3時間経っても、誰も迎えに来ることはなかったことに、さっきの寂しさより増してしまい、自分で家へと帰った。
5回目の家出は高校2年生の時だった。理由は些細なことすぎて忘れてしまった。毎回同じように寂しくて、苦しくて、私を見つけてもらいたかった。今度こそって愛情を確かめるように家を飛び出すが、見つけ出して貰えたことなんて1度もなかった。
その時、家族が探し出してくれなかった私を、君は見つけてくれたよね。
今日はね、君と出会って5回目の家出。
いつもすぐに見つけてくれる君がまだ現れないんだ。
寂しいという理由だけで逃げ出した私。
君が初めて見つけてくれた、街から少し外れたファミレス。
テーブルの上には氷が消えて水滴が着いたコップ。
6月なのに肌寒い今日は、あの日みたいだなってさっき気付いた。
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