自己肯定




自己肯定する言葉はたくさん出てきても、なんだかどれもしっくりこなくて、他人からの評価が痛いほど気になった。


高校生の時、ぽっちゃりで地味な私に付けられたあだ名は誰がどう捉えても褒めてもらえるようなものではなかった。毎日浴びせられる冷たい視線とドス黒い罵声に、耐える以外の選択肢なんて存在していなかった私は、どうして私ばかりどうして私なのと、たくさん理由を考えてみてもただただクラスメイトの非難罵倒が頭を巡るだけだった。


もう変わるしかないんだ。

もう他人に戒められる人生はお終いだ。


太りやすい体質だから必死にダイエットをしたし、化粧もファッションも勉強した。優しいと思われたいから人一倍他人に親切にした。嫌われない努力を沢山した。もう絶対私を悪くいう人なんて出てこないように。


努力が報われた私に、周りは希望通りの賛美の声をかけてくれる。ずっと欲しかった言葉、ずっと欲しかった他人からのプラスの評価。もう絶対手放しはしない、もう絶対他人に忌み嫌われる人生なんて嫌だ。


今の自分には満足していたけど、たまに怖い夢を見る。


「その作られた貴女は本物なの?」

暗闇の中からそう問いかける声がどんどん足音と共に近づいてきて、目が慣れてきた頃には足音も止まる。はっきり顔が見えるようになると、その子は昔の私そっくりな女の子で、思わず背筋が凍り目線を反らす。いくら逃げようとしても突き放そうとしても、同じ距離感で同じ言葉を繰り返した。

「みんなに愛されても自分を愛する事はできないのね」

震える私を見て、ずっと繰り返していた言葉を止めるた彼女最後はニコリと笑いながらそう言った。


夢から醒めると、いつものように化粧をして髪を整え綺麗にアイロンがけした服に袖を通す。


朝ご飯に少し焦げてしまった目玉焼きとコーヒーを並べ、口に運びながらアルバムを開いて昔の私を眺める。


不細工だけど今より綺麗に笑う写真の中の私を見てこう呟いた。



ごめんね、私はまだ私を好きになれないけど嫌いにもなれないんだ。




だからまだ、もう少し待っててね。









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