お疲れ様でした!
2017年3月。
「もうすぐ! 『ひよっこ!』」という番組が本編の前に特番として放送された。
番組の内容としては主演様以下出演者様のインタビュー。そして撮影の裏側だ。
俺様が参加した上野駅のシーン以外にもロケは存在した。
茨城県で行ったロケでは実際に稲刈りをしたり、聖火ランナーを再現したり、ボンネットバスを走らせたりした。
主人公の通う高校は長野県の高校でロケをしたみたいだ。
そして! 浜松オートレース場を舞台にした上野駅!
……実は、写っていたんですよ! 俺様の勇士が!
では、とくとご覧あれ!
――雑踏にもみくちゃにされる俺様。あまりの人混みのため、俺様は手にした風呂敷包みを頭の上に乗せる――。
ハイ! カットォ!
なに? これだけだって? どこにいるかだって?
よく見てくださいよ! 画面左端の少し上の辺りで、風呂敷包みを頭の上にのせるウグイス色の着物を纏った俺様の”背中”がぁ!
時間にしてコンマ5秒ぐらいかな?
撮影の時ご一緒した年配ご夫婦に比べたら、たった一日でこれだけ映れば御の字だ。
むしろ本編でこそ、俺様の独壇場になるだろう。眠れぬ夜が続くぜ!
こうしてめでたく『ひよっこ』の放送が開始された。
毎話録画し、自分の姿を今か今かとチェックする俺様。
・主人公の母親が上京するシーン。……いない。
まぁ、この時は撮影現場から離れていたしな。
・主人公が集団就職生と一緒に上京するシーン。……いない。
ま、まぁ、ここは主演様の独壇場だ。致し方ない。
・主人公一行がそれぞれの会社へ連れられていくシーン。
よっしゃあ! 何せここは悪徳商人から強欲社長になった俺様がカルガモと化し、集団就職生を引き連れた、まさに俺様の天下!
主演様一行のシーンはありましたが、ほかの集団就職生が連れ去られるシーンなんてありません。
クッ! だがな、エキストラたる者、画面に映るだけがすべてじゃねぇ。
俺様はあそこで立派に仕事を果たし、かけがえのない経験をしたんだ!
だから……だからもう泣くんじゃねぇ! マイ……ソウルよ……。
・主人公一行が行方不明になった同僚を捜しに上野駅へやってきたシーン
……よく憶えていないけど、カメラスライダーって屋台の後ろに引かれていたような気がするんだぁ……。
映るとしても屋台の親父さんの背中。
しかもピントは主人公一行にあわせてあるから、たとえ映っても流れる風景にしか認識できないと思うんだぁ。
・同僚の一人がサラリーマンにぶつかり倒れるシーン
・主人公一行がチンピラに絡まれるシーン
……この時は撮影を見学していた時だから、当然映るわけないよね。
・その他、昼夜問わず、上野駅の雑踏シーン。
……コマ送りして確認してもいませんでした。
ここで言いようのないわだかまりを感じる。
いえ、決して俺様が映っていないから気分が悪いといっているのではありません。
本編に登場する上野駅での主なシーンは、先ほど俺様が書き記したのが主である。
休憩ぬいて14時間分撮影したわけだが、ほとんど俺様が参加した火曜日で終わったのである。
しかし撮影は月曜日の半日と、火、水、木のフル16時間。
後の水曜日と木曜日は何をしたのだろうか?
同じシーンを再び水曜日、木曜日に撮影したのだろうか?
もっとも、悪天候、雪等の予備日として多めに日にちを確保したと見るべきかな?
そしてもう一つ。
俺様のカルガモシーンを筆頭に、本編で使われなかったシーンも数多く撮影していた。
主演様が出てくるシーンですら編集時にカットされるのに、なぜこういうことをするのだろう?
これはあくまで俺様の推測だが、これから2020年の東京オリンピックに向けて、いろいろな番組がNHKで制作され、放送されるだろう。
その中には前回、1964年の東京オリンピック時と比較した番組も作られるかもしれない。
2020年の上野駅はそのままロケをすればいいが、1964年時の上野駅の場合は今回の撮影したシーンを再現VTRとして使用するかもしれない。
当然、出演者様が映っているシーンは肖像権等あるので、一般の我々が映っているシーンを……。
うむ、さすがNHK。一度の撮影でいくつもの素材シーンを撮影するとは。
もっとも、あくまで推測の域をでないのだが……。
以上で俺様の戯れ言は終了である。
この日この撮影に関わったすべての出演者様、スタッフ様、そして、共に共演した愛すべきエキストラ様へ、私からこの言葉を捧げます。
『お疲れ様でした!』
”パチパチパチパチパチ!”
―― 終演 ――
えきすとらのえとせとら 宇枝一夫 @kazuoueda
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