設定5作目…「その鬼の目に恋をする。」(仮)
『きっかけ』
何の作品かは忘れたが、人外キャラが出てくる作品を見たのがきっかけ。
それと、異世界系の作品の影響もあった。
『ストーリー設定』
10歳の夏、怪談好きであり心霊スポットへ行く事が好きだった少年は、夏休みを利用して訪れた祖父母の家がある小さな村で、1つの怪談話を聞く。
この村には、あの世に続く扉がある。
だが、あの世は極楽浄土の世界ではなく、魑魅魍魎の住む世界だ。
一度その扉をくぐってしまえば、魑魅魍魎に、腕を、足を、臓物を、魂さえも、食いつぶされてしまう。
そうなってしまえば最後、当然こちらの世界に戻ってくる事は出来ない。
文字通り死が待っているぞ。
酒を呑んだ男達はそんな事ある訳がないと笑い、女達は子供に変な事吹き込まないでと嫌悪する。
嫌がる子供もいる中で、少年だけは、その話に胸を躍らせた。
親も、少年がそういう話を好きなのは知っているから、止めるような事はしない。
そして、少年は村でお盆を迎えた時、数日の間、その姿をくらませる。
大人達は慌てた。
山に迷い込んだのか、近くの川で流されたのか、警察を巻き込んでの大騒ぎ。
探せど、探せど、少年の姿はない。
周りが諦めかけた時、少年は発見される。
怪談話、あの世に続く扉があると言われている場所で…。
見つかった少年は、今までどこにいたのか、どうやって無事でいたのかを覚えていない。
ただただ忘れたくないと泣きじゃくるだけだった。
失踪事件以来、祖父母の家には行っていない。
あれから10年。
その時起きた出来事は、思い出となり、うろ覚えの断片だけが残る事となった。
少年は成人し、祖父の訃報を受けて、再びあの村へと足を踏み入れる。
僅かなりに覚えている村の風景が…、10年前と変わらない風景が、青年の心を揺さぶった。
喪失感が胸を刺す。
夜、都会とは違う満点の星空を見ながら、蚊取り線香の横でたばこに火をつける。
何をしていても落ち着かない。
ここにいると、気づけば何かを探すように視線を動かしている。
忘れてはいけない、忘れてしまった何か。
青年は歩き出す、街灯のほとんどない夜道を携帯の明かりを頼りに進んでいく。
あの、扉に向かって…。
【怪談話】
山に囲まれ、道も入り組み、人を迷わせると言われてきた場所に村はある。
そのためか、昔から人の往来は少なく、戦乱の世では落武者が逃げ込み、隠れ住む場所でもあった。
逃げて来た落武者の中には、自身が死んだ事に気付かず、延々と助けを求めながら彷徨い続ける者も多くいたという。
恨みつらみが強く、村人を呪い殺してしまいかねない霊もいたとか。
そんな者達が最終的に村のとある場所にたどり着く。
共同の畑があった場所だ。
皆で丹精込めて野菜を作り、そしてできた作物を使って作った鍋を村人全員でつつく。
料理は、それはもうご馳走で、村人全員が「またあのご馳走を食べよう」と一丸となって畑を育てていた。
だが、その場所だけ、霊達がたどり着く場所だけ、どうやっても作物が育たない。
他の場所と同じようにやってもダメ、育てる作物を変えてもダメ、肥料を変えてもダメ、水を与える量を変えてもダメ、日に当てる時間を変えてもダメ、土を入れ替える…なんて事もしたらしいが、それもダメ。
そんなこんなで、「あそこは呪われている」「これ以上あそこに手を出そうものなら、いつか死人が出る」…なんて言われ、誰も寄り付かなくなり、その場所やその近くの畑は使われなくなって、その土地は荒れ果てた場所となった。
幾ばくかの時間が流れ、満月が真夜中の村を照らすお盆の時、幽霊を見たという村人が現れた。
そんなモノ、もう見慣れちまったと、笑う者が多くいる中、その目撃数はあっという間に見慣れたという人間の数を超える。
そして、「鬼を見た。」「怪物を見た。」「人が喰われているのを見た。」なんて、地獄を見たかのように叫ぶ村人が現れ始めた。
1人や2人じゃない。
見たモノも人によって違う。
それからというもの、お盆の時期になると、何かしらの怪異を見たという話が出るようになった。
同じ人間がそれを口にすれば、それはただのほら吹きか、人を脅かして楽しむ人でなしかになるが、そうじゃない。
去年まで「そんな事ある訳がない」と鼻で笑っていた奴も、次の年には「化け物を見た」と口にしだした。
そういった類のモノを見たという人間が、ついには村人の半数に及び、最終的には村人全員が人ではなく獣でもない声を聞くようになる。
田畑が荒らされている時があった、道に人とは思えない程の大きさの足跡がついていた時もあった。
酷い時には人が死んだ。
クマにでも襲われたかのように、肉が喰いちぎれられ、臓物が喰い荒らされていた、亡骸が見つからず、ただただ姿を消した子供がいた…女がいた。
意味の分からない事ばかりが起きて、亡骸が見つからない連中は死んだのではなく、どこか村以外の場所に逃げたのだろうという話も出たが、それにしては亡骸が見つからない者達が偏っている。
子供と女だけで、生きていけるわけがないと、村の皆が分かっていた。
そんな、自身の村の異常さに目を背けられなくなってきた時、1人の僧侶が村を訪れる。
この地は魂の終着地だ、次の場所へ行くための扉がそこにあるのだが、あなた達は手入れを怠ってしまった。
それだけならよかった、何をしようとしたかは聞くまいが、土地を弄り返したせいでその扉が壊れてしまったと言っていい。
扉は汚れ、穢れ、そのせいで、本来なら入る時のみ開く扉が、今では常に開いている状態になってしまっている。
普段ならさしたる影響はないだろうが、盆の時など魂が己の家に帰る時に入口でしかない扉から魂が出てきてしまう。
それは良くない事だ。
幼子を知らない土地に放り出して、お前は家に帰れと言うようなもの。
そして迷える魂は魑魅魍魎の恰好の獲物だ。
結果、ここは餌場となってしまっている。
もっと早急に対処できていればよかったが、もう遅かろう。
魑魅魍魎はこの土地だけでなく、壊れた扉の先にまで巣食ってしまっているに違いない。
最近の喰い荒らされた死体は、人の魂に飽きた魑魅魍魎達が、現世の人間に手を出した結果だ。
姿を消した女子供は、扉の先に連れ去られたのだろう。
僧侶は嘆いた。
首を横に振り、もう扉が治る事はないと村人達に告げる。
できる限り、扉のある土地を手入れする事だ。
直そうとするのではなく、これ以上汚れないように、これ以上穢れないように、その土地を綺麗にしなさい。
そうすれば扉が常に開かれているという事は無くなるだろう。
ここの扉から霊が出てくるという事も少なくなるはずだ。
しかし、この扉はすでに入口ではなく出入り口である事を忘れなきように
霊が向こうの世界とこの世を行き来する事が多くなる季節は、夜に家の外へ出ない事だ。
時間はかかるだろうが、魑魅魍魎の姿も減っていくに違いない。
最後に僧侶は、魔除けの護符を書き、「お盆の夜は玄関にこの護符を張って早くに寝なさい」と言い残すと、村を去っていった。
村人たちは僧侶の言葉を信じ、荒れた土地を手入れして、お盆が来ると必ず玄関に護符を張る。
そしていつしか、人ならざるモノを見たという話は尾を潜め、人ならざるモノ、獣ならざるモノの声も、誰も聞かなくなった。
それから長い年月が経った今でも、お盆の夜に村に住む人間は外に出ない。
扉があるとされた場所の前には祠が建てられ、年に1度、村人全員でその周辺を手入れしている。
『舞台設定』
山奥にある田舎な村と、魑魅魍魎の世界が舞台。
村には昔から、死んだ生き物の魂があの世へと行く扉があり、幽霊が集まりやすい場所となっている。
そんな霊達を喰おうとする魑魅魍魎も現れた事から、お盆の時になると、その村では夜に家の外に出てはいけないという習慣もあった。
現在では、教訓を昔話として伝えてきたものの、その習慣は廃れ気味になっている。
魑魅魍魎の世界は、村と扉を挟んで隣り合っている。
そこは、差し詰め、昔、戦乱の世の街の風景を切り取ったかのような歴史を感じなくもない場所。
魑魅魍魎がそこに巣食うようになってから、まるでそこの時間は止まってしまっているかのように、文明的なモノは進歩していない。
もちろん科学も。
『用語』
【あの世への扉】
村にある、魂が次の世界に行くために通る道、扉の事。
基本的に一方通行で、一度入ってしまえば出てくる事は出来ない。
必ずしも、扉を越えた先があの世という訳でもないが、少なくとも人の世界とはかけ離れている。
村にある扉は、人間が村の開拓のために土地の改良を試み、失敗した後は手を付けず放置した結果、扉は穢れ、あの世へ向かうための扉と言う形、在り方が壊れ、言うなれば扉が開きっ放しな状態となってしまった。
お盆など人の魂が自身の家に帰る際、その扉を通って現世に戻ってきてしまうようになる。
そうやって戻ってきてしまった霊は、例えるなら、「いつも通る帰り道しか知らない子供を見ず知らずな土地に放り出して、お前は勝手に家に帰れ。」と言っているようなもの。
当然霊達は家に帰る事ができず、村やその周辺を彷徨うようになり、そんな霊達を狙って魑魅魍魎が村に集まるようになった。
現在では、人間の世界側はちゃんと掃除など手入れを行って、穢れを落とした結果、最悪な状態からは脱却できたものの、完全に直る事は無く、お盆の時期になると、霊が出てくる。
扉を進んだ先は、今では魑魅魍魎の1つの住処となっている。
そこが全てではなく、その住処はあくまで道中にある町みたいなモノ。
【魑魅魍魎】
文字通りの存在。
妖怪、怪異、様々な化け物の事。
作品での魑魅魍魎は、一方的に悪事を働いたりする訳ではなく、ただ生活をしているだけ。
しかし、村に出てくる魑魅魍魎は生き物の魂、もしくは生き物そのものを主食としている(そうでない者もいる)ため、人に害を成す。
村にある扉を越えた先に住処を作り、生活をしている。
主食としている中でも、生きた人間は何よりもご馳走であり、それが子供であれば取り合いになるほどの贅沢品。
だからこそ、人間の子供を無駄にしようものなら裏切り者として首を落とされる。
住処は、本来の形以上に魂の行き来が多く穴場としての価値が相当に高いが、場所が場所なだけに人間が迷い込む事が全くと言っていい程無い場所。
だからこそ、一度人間が迷い込んでいると知れれば、魑魅魍魎達は血眼になってソレを探し、捕まってしまえば二度と人間の世界には戻れない。
それもあって、生きた人間を逃すような者に与える罪が過剰な程に重いモノになっている。
人間の基準で言うなら、魂は保存の効く干し肉のような食料、生きた人間は文字通り新鮮な食糧。
生きた動物の肉も良いが、動物は扉の存在に敏感で、人間以上に迷い込む事は無い、というかほぼ無いと言っていい。
とにかく、魂と生きた生き物の差は大きいモノ。
普段から魂ばかり食べている魑魅魍魎達からしてみれば、生きた生き物の肉はよりおいしくなる。
【片目鬼】
魑魅魍魎の一種族。
産まれた時から左右のどちらかの目しかない隻眼の鬼。
基本的に、角は額から上に伸びるモノが2本、長さは千差万別。
別名「寄り添いの鬼」と言われ、つがいを見つけると、自身の無い目を相手から移植して、自分または相手が死んでも、未来永劫その相手と共にあり続け、慕い続ける。
相手の種族は問わず、強さも関係ない。
男と女、どちらかが片目鬼なら、生まれてくる子供は基本的に片目鬼となる。
元から片目しかないせいか、その目には普通の目より、大なり小なり力があるとされ、大昔にはその目を求めて魑魅魍魎の間で鬼狩りが行われた。
その結果、片目鬼の個体数はさほど多くはない。
実際、なにか特殊な力が有ったりする訳ではなく、片目だからこそ、他の種族の目と比べて丈夫で、視力が高いというだけ。
それだけでも魅力を感じるだけの代物ではあるのだが、鬼の種族なだけあり、その戦闘能力もその辺の魑魅魍魎には負けないだけの力がある。
それを踏まえると、割に合わない。
【赤鬼】
文字通りの存在。
赤い肌に、額には1~2本の角がある。
男女共にそれ相応の性別らしい体格をしているが、どちらも筋骨隆々。
赤鬼全般、赤い肌をしているが、色の濃さには個人差がある。
体格も相まって、戦闘能力が高く、強さこそ男の証であり、「女を落とすなら相手よりも強くあれ、男を落とすなら自分より強い者と添い遂げよ。」なんて風習があるほど(もちろん例外アリ)。
戦闘等で興奮状態になったりした時、その赤い肌が発光したかのように浮かびあがって見えるようになる。
【化け蛙】
カエルの魑魅魍魎。
カエルの種類は多種多様、水辺で河童とよく間違えられる。
人と蛙と足して割った様な存在。
肌や手足、目など、カエルの特徴を残し、子供の時などはオタマジャクシの尻尾もある、それ以外は髪の毛があるなど人間に近い。
オタマジャクシの尻尾は成長と共に縮んでいき、完全に無くなれば成人したと見なされる。
生殖行動は人間寄り、体内受精。
大昔、人間を丸呑みにしてきた大蛙から、人の姿に似たカエルが生まれた事が発端。
その時よりも時が経つにつれて、生まれてくる子供がどんどん人間に近づいて行ったが、それも現在の姿で止まっている。
日差しに弱く、暑いのも苦手。
自分の舌を、身長の倍の長さまで伸ばす事ができる。
【狗天狗】
人の体に犬の頭と尻尾を持つ魑魅魍魎。
忠誠心に厚く、主従関係を大事にしている。
生真面目な者が多く、自由気ままな者が多い魑魅魍魎の中では、それなりに異質な種族。
犬だけあって、嗅覚に優れていて、捜索等に強い。
身体能力も魑魅魍魎の中でも高い方。
イヌ科の動物となら言葉を交わし、意思疎通ができる。
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