第4話

─1─

「ただいま」

「お帰りなさい、兄さん」

ここまでは、よかった。

普段と変わらない。と言いたいところなんだけど、何故か妹はきちんとした服を着ていた。

「で、後ろの女の子は誰なの?」

そして、まだ妹には見えていないはずなのにそう聞いてきた。

だから、俺も動揺しすぎて、「すいません!」

と言ってしまった。

そして、今は、俺と妹が隣に座って、その対面に未来が座っている。

「で、あなたは、なんで兄さんと一緒に家に来たんですか?」

「……………………」

「それってきか」

「兄さんは、黙っていて」

「はい」

「もしかして、彼女とか言うんですか?それなら今すぐ帰ってください。生憎家には、もう泊めるところなんてありませんから」

「いや、あ」

「だから、兄さんは黙って」

俺は、妹の鋭い目で萎縮してしまった。

俺あんな目見たことないんだけど。

「黙ってないで、答えてくれませんかね?」

「わかりました。私は、この人の彼女ですよ」

「いや、ちが」

「そうですよね?」

「………………」

「それって兄さん本当なの?」

「………………………」

「兄さん、怒らないから言って、本当か違うか言ってくれないかな?」

「……違う」

「よかった。って兄さんは、言ってますけど?」

「はい、慧先輩が言った通り私は彼女じゃないですよ。でも、彼女になる予定ですから」

え?そうなの、俺そんなこと聞いてないけど。

っていうか、俺のこと怖くないのか。

「そうですか。そんな未来はないですね」

「そうかなー。私、意外と可愛い方だと思うけどな」

「そうですね。私の10分の1くらいにはね」

「ふふ、やっぱり女子高生に大人気なモデルさんだけあって言うことが違うね」

「へー、私のこと知っていたんですね」

「それは、勿論。だって、私、エイティーン購読してるからね」

「それは、ありがとございます。で、話を戻しますよ。あなたに、この家で泊まりところなんてないです」

「でも、さっき慧先輩空いてる部屋はある的なこと言いかけてなかったけ?」

「そうでしたか?」

「はい、ね、先輩?」

と未来からは、そうですよねという顔でこっちを見てきて、妹の方から言っちゃ駄目だからね、兄さんとでも言いたげな顔でこっちを見てきた。

果たして、俺はなんと答えるべきなのだろうか。

あるよと答えるべきか、さっきそんなこと言ってないと言うべきなのか。

俺は、結局こう言うことにした。

「あ、空いてないよ」

と。妹に負けたわけだ。

そう言った後に、妹の顔は心の底から嬉しいそうな顔だった。

でも、未来の方へと、視線を移して見ると、悲しいそうな表情をしていた。

そこで、俺はこのままでは駄目だと思った。

ここで、このままに話を進めていけば、未来は家から出ていくことになってしまう。

それじゃ、駄目だ。

さっきのことでこの子は、1人になることを嫌がっている。

1人だと怖いから、また知らない人たちになにかされそうだから。

だから、泊めさせてくださいと言ってきたんだろ。

それで俺は、泊めさせてあげられると思うとも、妹も事情を聞けば、泊めることを許してくれると思うとも言ったはずだ。

それを、自分で否定してどうする。

それじゃあ唯の嘘つきだ。

考えるんだ、なにかあるはずだ。

そこで、俺は自分がさっき思ったからこの状況を打破する手段を思いついた。

妹に、未来の事情を話せばいいんだと。



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