第3話
─1─
翌日。
俺は、不幸か幸いか未来さんと時間が被ってしまった。
……正直ものすごく気まずい。
昨日あんなことがあったばかりだから。
ここで、仕事が疎かになる程俺は、子供ではないのだ。
でも、彼女の方はそうでもなく、昨日と比べて完全に仕事の質が落ちていた。
………俺のこと怖がっているのかな?
普段の俺は、あんなに怖い声を出さない。
出す場面がないから。でも、昨日は、違った。
初対面の女の子に触れてはいけない存在と言われて、俺は自分が思った以上にそのことに怒ってしまった。
「あ、慧君。あの皿下げといて!」
「はい、わかりました」
そうだ。俺も余計なことなんて考える余裕ないんだ。
仕事に集中しないとな。
それから、俺は雑念が全て捨てて、仕事に没頭した。
休憩中の女子ロッカー室では、こんなことが話し合われていた。
「ねえ、今日の慧君なんか変じゃなかった?」
「そうね。なにか、考えているような、そんな感じだったね」
「でも、慧君だって年頃の男の子よ。だから、いろいろと悩むことが多いのよ。私たちおばさんたちとは違ってね」
「そうね」
「じゃあ、私たちも仕事に戻りますか」
─2─
今日の仕事は、無事に何事もなく終わった。
そして帰り道 。
「助けてください!!」
と誰が叫んでいるような声が聞こえた。
最初は、俺は無視しようとした。
ここでヒーロー気取りで、助けに言ったところで、俺になにかできるわけでもない。
むしろ、俺自身も被害にあってしまうかもしれなかったから。
でも、助けを求めていたのが、新しくバイトとして入ってきた未来だった。
だから、俺は、自分がどうなってもいいから、どうなるかなんて分かりもしないから、なにも考えずに未来の方へと駆け出した。
「は、一人で助けに来やがって、それで助けれるとでも思っているのか?こっちは、3人いるんだぞ。とんだヒーロー気取りが!」
確かに、これは、ヒーロー気取りだ。
助けたら、かっこいいから、助けたら、助けた子のヒーローになれるものだから。
でも、俺は、別に彼女のヒーローになりたいわけじゃない。
それに、たぶん、俺はいくらなにかやったところで彼女は、俺を自分のヒーローだとは思ってくれない。
昨日あんな姿を見せてしまったから。
でも、
「俺は、知り合いがなにかされることが、嫌なんだよ!」
「知り合いね。でもさ、さっきも言ったけど、こっちは、3人だよ。勝てるの?」
「そんなのわかんない。分かるわけがない。わかったところで、俺は、この行動を変える気持ちはない!」
「そうか。じゃあ、やってしまえ!」
その声と共に、2人が俺に襲いかかってくる。
……っは、こんなで俺を倒せるなんて思われるなんてな。
襲いかかってくる2人をいとも簡単に避ける。
「ねえ、これが、あなたたちの実力?は、笑わせるね。こんなじゃ、俺には勝てないよ」
「ふ、ふざけるな!この子が、どうなってもいいのか!」
そう言うと彼女の首もとにナイフを近づけた。
「っひ!」
「殺せるのか?」
「はあ?」
「だから、お前はその子を殺せるのかって聞いているんだ」
「殺せるに決まっているだろ」
「そうか。じゃあ、やってみろ」
「え?」
彼女の顔が一気に青くなった。
「まあ、そんな玩具じゃ無理だと思うけど」
「な、なんでそれを!」
「そんなことは、どうでもいいだろ」
そして、俺は、彼女の首もとにナイフを当てている男を殴り飛ばし、彼女を無事に助けることができた。
「この人たちどういいんだ?これって正当防衛って言えるのか?でも、俺暴力受けてないし、それに君にも暴力加えてないみたいだしどうしよう………………」
そんな困った姿を見ていた、未来が小さな声で「あ、あのー、そ、それなら、あの人のポケットの中にボイスレコーダーが入っていると思います。だから、それを警察に渡せばいいと思います」
「あ、ああそうか」
その後は、俺は、ボイスレコーダーを男のポケットから取り出し、その場を彼女と後にした。
人が多くなったところで、俺はこんなことを聞いた。
「なんで、あんなことになっていたんだ?」
失礼かもしれない、それは分かっていた。
でも、知らずにはいられなかった。
「そ、それは………………言えません」
「そうか」
「………………」
「………………」
「………あ、あのー。慧先輩」
「なんだ?」
「こ、この前は、あんなこと言ってしまいすいませんでした」
「別にいいよ。それに俺も君を怖らせてしまったし」
「はい。………………それで、お願いなのですが。私を慧先輩の家にしばらくの間泊めさせてくれないでしょうか?」
無理だ。とすぐに言うことができなかった。
この子には、なにかまだ秘密があるじゃないかって思って。
「返事をする前に聞くぞ。なんで俺の家に泊まりたいんだ?」
「実は、私は1人暮らしなんです。だから、怖いです。また、なにかあるじゃないかって思ってしまって」
「そうか。いますぐには、泊めてやるとは言えない。こればっかりは、ごめん。妹にも許可を取らないといけないからな」
「わかりました」
「でも、たぶん、妹もいいって言ってくれると思うぞ」
それよりか、俺と一緒に過ごしてもいいのか?
その言葉を、俺は心の中で留めて置いた。
今聞いてはいけない気がしたから。
「ありがとございます」
「まあ、とりあえず。俺の家に行くか」
そして、俺と彼女は歩き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます