第23節「選択の時」

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――「イメージの世界」だ。そろそろ、決めないとならない。


 CRTディスプレイのデスクトップパソコンっていう時代じゃもうないか。


 そう、灯理さんが使う未来的ヴァーチャル・リアリティオーグメンテッドリアリティ技術によるデバイスで、何もない空間に明滅する立体ディスプレイが浮かび上がっている。


 でも、どんなにデバイスが発達しても、人間に問われるのが究極的には言語情報による決断である、という点は変わらない。


 目の前のディスプレイには、こう、選択肢が表示されている。



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 大きい破綻から時間を経て、あなた自身は何とか「日常」を取り戻す目途が立ってきました。


 そんな中で、あなたの大事な人が未だ立ち上がれないのを目の当たりにしたとして。


 あなたは。


1/助ける。

2/やめておく。


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 エンターキー。これも、キーボード自体が物理的に存在しなくなってきた最近では、もう消失していく概念なのか。


 だけどこっちも、どんなにデバイスが進化しても、何らかの決断・決定を意味する記号は残り続けるはずだ。そういう意味で、「エンターキー」はいつまでも世界に存在し続ける。


 だから。


 俺は指を伸ばし、エンターキーを押しこんだ。


 Ready?


 って聞かれた時、迷わなかったかって?


 迷わなかったね。


「なぜなら俺は、今はもう街アカリの復興部の五人目だからだ」



――ここで質問だ。キミならどちらを選ぶ? 答えは明らかなはずだろう。それともホムラ一人がそう思っているだけか?


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