第7話 これは夢だと、次郎が言った。
夢をみている
もうずっと長い間
夢をみている
いつか君に会えると信じて
夢をみている
この地獄が終わりを迎えると
鬼が来たよ
鬼が来たよ
まあるいお月様 真っ赤になった
鬼が笑うよ
鬼が笑うよ
村の娘は隠しやんせ
鬼が泣くよ
鬼が泣くよ
泉湧いたらささもって踊れ
夢みてるんだ いつかお前が 俺を殺してくれる日が来ることを
霞みがかったモヤの向こうに、次郎の姿が見える。
手を伸ばしてみるけど
全然届かない。
次郎!と呼びかけたいのに
俺の声はまるで霞みの中で奪われて音をなくしてしまうようだった。
次郎は俺に気づかない。
いつもは見せない悲しい顔が、目に焼き付いて離れない……
急に霞が深くなってきた。
強い風が吹いてきて、辺り一面真っ白になる。
まるで吹雪のど真ん中に放り込まれたようだ。
おい!次郎!おま、ちょっと手貸せ!!
はぐれまいと腕を伸ばす。
そして一寸先も見えない白い風が掌に叩きつけているものに気づいた。
桜……の、花びら?
気づいた途端、風も花吹雪も急激に勢いを増す。
ダメだ、このままじゃ見失う……!
「待てよ!次郎!!」
ガバッと起き上がる。
「どこで?」
「は? あれ?」
「どこで待つんだ?」
「次郎……?」
しゃくしゃくしゃくしゃく。
ガ○ガリという名の氷菓子を貪る次郎。
「何食ってんだよお前……」
「見りゃわかんだろ」
「じゃなくて、なんでお前がこんなところにいるんだ」
「お前がウーウー獣みたいな呻き声上げて寝てっからだろ」
心配して見に来たのに。と食い終わった棒をペロリと舐める。
「そりゃどうも。てか出てけ。何勝手に人の部屋入ってんだ。あと布団の上でアイス食うな。」
「つれないねー」
「いいから!ほら!どけって!」
掛け布団の上に乗っかる次郎を、布団の中から蹴り上げる。
「わーったって。お。頭にゴミついてるぞ」
次郎は俺の髪についたゴミを取って俺に手渡す。
「わざわざ渡さんでいい!ゴミ箱に捨てろよもー」
今日は土曜だぞー。
そう言って部屋を出て行く次郎に向かって文句投げた。
ったく何だよゴミって……
俺は渡された右手のひらを開いた。
「え……」
桜…………?
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