第3話竜宮京 乙女(りゅうぐうきょう おとめ)(魔法少女は探検中)

私は、乙女。9歳の小学3年生。

今日は、私の通っている小学校が創立記念日でお休みなのでお姉ちゃんの通っている学校に遊びに来ました。


「乙女ちゃんおはよー」

「あら、乙女ちゃん久しぶりじゃない」

「よっ、乙女。元気にしてたか」

お姉ちゃんの学校の人たちはみんないい人ばかりです。「ね、みるく」


『みるく』は私の願いをいつも叶えてくれる妖精さんで、大切なお友達。今日もお姉ちゃんの学校に行くために妖精の粉を頭にかけてくれました。


「体は大きくなったから、あとはお姉ちゃんの制服を借りて、髪は三つ編みにして、あとは、めがね、めがね、あ、あったわ」

変身すると声や、体だけではなく、小学生の私では到底知り得ない知識や言葉が頭の中に入っている。

(あっ、あんなことや、こ、こんな、事まで…)

『ぷしゅーぅー』

「ふにゃぁ〜」


いつも変身直後は大人の階段を上る大変さを思い知らされドキドキがとまらない…

しばらくすると落ち着きを取り戻し、心の平穏がおとずれるので、それを待って、『みるく』に約束通り『ミルクキャンディ』をあげることで今回の魔法契約成立です。


この1回分の契約成立効果は5時間続き、ただ単に魔法を掛けてもらっただけだと…うーん、どうなるのか分かりません。

変身させてくれた『みるく』にキャンディをあげない。そんな人の所には妖精は訪れてくれなかったのではないでしょうか。多分…。


「さあ、もうすぐおねえちゃんの学校よ、あと少し我慢しててね、みるく」

制服のポケットの中にいる『みるく』が心配で

登校中のみんなの挨拶の合間にこっそりとのぞくと『みるく』はにっこりと笑顔を返してくれる。

「あ〜なんて可愛らしいのかしら」

こっそりのぞく。笑顔が返る。

こっそりのぞく。笑顔が返る。

こっそり返る。笑顔が返る。

そんなことを何度か繰り返しようやく正門へたどりつく。

しかし、まだ安心はできない。

ここが一番難関な関所。門の脇には警備員室と監視カメラがあり24時間体制の出入りチェックを行っている。

「おはようございます。乙女ちゃん」警備員室から知り合いの

『徳ノ川 慶伍(とくのがわ けいご)』君が勢いよく飛び出してきて、「はい、これ」と入校許可証を渡してくれた。

「有り難う。今日は正門はけいごくんなんだ。緊張して損しちゃったよ。でも、なんで、私が来るのが分かったの」

けいごくんは近づいてくると「お母さんが、今日乙女ちゃんが来るからって、朝早く校長室からわざわざここまで持ってきてくれたんだよ」、と耳打ちしてくれた。

「そっかー。ママ…、こほん。お母さん学校に泊まってたんだ」

私のお母さんは、この学校の校長先生をしている。いつも仕事が忙しく帰宅するのが夜中になるため会えることがたまにしかなく、お姉ちゃんが私の面倒を見てくれています。

お父さんは6年前に病気で亡くなったそうで、あまりよく覚えていない。けいごくんはお父さんの会社の元部下でお母さんの信頼も厚く、ちょくちょく遊びに来てくれるお兄さん。

今でもよく水蜘蛛を使って公園の池を泳いだり、かぎ梯子(ばしご)をぶらんこにして遊んでくれる。

あっ、変身前の9歳の私とです。

私が変身出来ることを知っているのは、家族とけいごくんだけで、困っていると、どこからともなく(壁の中から)現れ、(手裏剣で)解決し、(大凧で)去って行く頼もしいお兄さん。

まるで、忍者のようだねっ、て本人に言ったらとても焦っていたその態度からすると、もう私の中では忍者で確定している。

高校生になっている今の私ならまだまだ事の真相に攻め込むことが出来るわ。覚悟して、けいごくん。

「ところで、けいごくん。松尾…芭蕉…」【伊賀の忍者ではないかと言われている】【諸説あり】

あっ、肩が少しピクッてした。

「ケムマキ…」【あの超有名忍者アニメ『忍者○○○○くんに』登場する甲賀忍者】

「………」


(伊賀なのね)【諸説あり】

これを聞いたけいごくんは

『ふゅーふゅー』と鳴らない口笛を吹いて、空を見上げている。

昭和のノリに突っ込みを入れるべきだろうか、と迷っていると「君のお父さんは立派な頭領だった」空を見上げたまま、ぼそりと応えてくれた。

目尻には、きらり光るものが…


私は、それ以上聞くことができなくなった。

「さぁ、今日は学校に遊びに来たんだろ。いった、いった」、と校内に背中を押し出してくれた。

「失礼ね、勉強よ、勉強。学食のだけど…」

「はい、はい、帰りはまたここに寄って、入校許可証を返すんだぞ−」、と大きく手を振ってくれている。

まわりの子達が何事かとみてるじゃない。

「まったく大人のくせして、あんなに大きな声で恥ずかしい…」

でも、お父さんを立派だったって言ってくれた事はとても嬉しい。それだけでも今日来た甲斐があったってもんだい「かぁふぁ」、と鼻をすすった。

頭の中に、昭和のノリがインプットされていた。





「今日一日、楽しんでおいで乙女…」

「入校許可証を…返しにきたとき…本当の事を…」

「おれが、おまえの、お



【次回予告】

『神代 託(かみしろ たくす)』おにいちゃんへ。

前回の予告で、乙女が給食のおばちゃんだっていっていますが、うそはよくないと思います。

だから、生徒会長を辞めさせられたんだと思いますす。これからは、気をつけてください。乙女より。

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