第2話アウトローで恋愛修行中。前生徒会長『神代 託(かみしろ たくす)』

俺の名前は神代 託(かみしろ たくす)。

私立あらら高校3年生の生徒会長だ。

『前任の生徒会長の推薦があれば選挙を行うことなく生徒会役員全員一致の推挙で決めることが出来る

2年に進級した春、突然前任の生徒会長『春先 和花(はるさき のどか)3年生』に推薦され生徒会長となった。

『私立あらら高校』

この国屈指の超進学校にもかかわらずこのふざけた名前は何だ、と皆さんは思われるだろう。

俺もそうだった、がこの名前は春先先輩が名付けられたので誰であろうと異論は認めん。

新たに生徒会長に任ぜられた者は最初にやらなくてはならない仕事がある。

学校名を改名するかそのまま残すかの選択だ。

考えるまでもない。

俺は…


春先 和花(はるさき のどか)先輩とは同じ出身中学だった。ごく普通のどこにでもある市立中学だ。

喧嘩早いやつや、オタクと呼ばれてるやつ、それに、宇宙人だと噂されてるやつなんか多種多様の人間がいる。

そんな中で、学校中の俺を含めた有象無象の輩から、一心に尊敬の念を抱かれている人がいた。

それが、春先 和花(はるさき のどか)先輩だ。

そこにいるだけで輝きを放つ存在。

容姿もさることながらその華やかな立ち振る舞いは先輩をより一層美しく輝かせた。

いつのまにか俺は、自然と目が先輩を追うようになっていた。(つ、つまりだ…す、好きにななっていたたのだ。そう言う、事だ)


俺にとって人生を変える事となるこの日も、

ご多分に漏れず血気盛んな俺は授業をサボり、街へ繰り出し、『よそ校』の奴らをしめに向かっていた。

俺は誰でもしめてるわけじゃねえ。

「おっ、あいつらまた性懲りも無くやってるのか」

いつものようにカツアゲをしてた連中を見つけ汚く薄暗いビルの谷間の路地裏で叩きのめしていた。

「つまんねーなおい、もう終わりかよ」

本当のところは、ただ単に力を見せつけ見下したかった、のかもしれない。

カラン、カランと金属音が雑居ビルの間に響きそちらに振り向くと金属バットを地に引きずりながらゾロゾロと10人程が集まってきやがった。

「そうじゃなくちゃな」

こんなことはいつものことだが、今日は様子が違っていた。

「上等じゃねえか、人数集めなきゃ喧嘩もできねえへたれどもは、俺ひとりで…」充分だと言い終わらずに右こめかみに衝撃を受け目の前の視界が赤く染まった。

「ちっ、後ろから攻撃とか腐ってやがるな、おまえた…ち…」

振り向くとそこには、異形な者が立っている。

身体は全身が鍛えられた筋肉と毛で覆われ顔は狼、鋭い牙の間からは液体が垂れ流れている。

周りにいた奴らは叫び声を上げながらいなくなり、俺と狼野郎の二人きりになった。

ああっ、あの鋭い爪でやられたのか…

その鋭いかぎ爪が真っ赤に染まっているのを見た俺は初めて恐怖を感じ、そして死を覚悟した。

「ああっ…こんなことなら春先 和花(はるさき のどか)先輩に告白しとくんだったな…」

狼野郎が口からダラダラと液体をまき散らし鋭いかぎ爪の腕を振り上げながら向かってくる。

「こんな時にフルネームはないか…どうせ死ぬんだ。のどか先輩…、いや、のどか、俺はあんたが好きだ。付き合ってくれ…なんてな」

「いやだね」

「?!」

彼女、春先先輩が突然目の前の空間の裂け目、その中から現れた

「せん… ぱい… ですか…」

あまりの出来事に動揺して本人の顔は分かっていたが思わず口に出していた。

同時に『ガシン』、と金属どうしがぶつかり合った低く鈍い音が、路地裏に鳴り響く。

先輩の顔は俺の方に向いているが、後ろ手に大剣で狼野郎の重い爪の攻撃を受け支えている、にもかかわらず、ふわふわ浮いていて、重い攻撃を受けているようにはまるで見えない。なぜだ、と

地面から離れている美しく透き通ったなま足に自然と目が行き見つめていると、

「おいおい、そんなにあたしのなま足は魅力的かい」と言われ、『はっ』、と我に返り見上げると、そこには先輩の顔が目の前に。

「諦めて死を受け入れる様なやつとはつきあえねえな」

さっきの俺が言った告白の答えだ…

ものすごい勢いで、顔に熱をおびていくのがわかる。

カンカンカン…その間にも大剣は軽やかに攻撃を仕掛けてくる爪をはじいている

「あたしはねー、『不撓不屈(ふとうふくつ)』って言葉が好きなのさ。どんな災難や困難に見舞われようとも、心は決して折れない。諦めて勝手に死を受け入れるんじゃないよ。分かったか」

俺は身体が硬直し動けなくなっていたため顔を小さくコクコクとうなずかせるだけで精一杯。それを見た先輩はニコッと微笑み反対側に向き直ると『一刀両断』狼を真っ二つに切り裂いた。

強い…圧倒的な強さだ。

本当の強さとはこう言う事なんだと思い知らされ、今まで自分がやってきたことの愚かさと後悔で涙が止まらなくなった。

「あ、あたしと、つ、付き合いたいんなら諦めない覚悟が必要だが、その心構えがあるのかい…」

と、そっぽを向き照れたような表情で指先がその赤くなった頬をなぞっている。

「と、当然です、先輩。俺は先輩みたくなりたい。人として本当の強さを手に入れたら改めて告白させていただきます。」

「………」


「…ま、まあ、そうだな…そんなおまえに私の好きな言葉を教えてやるよ」

『百錬鋼を成す(ひゃくれんこうをなす)』

「本当の強さを求めるのなら諦めないで幾度も心身共に鍛えあげる事が必要さ。そうすればおまえは、何者にも屈することがない、鋼の意志を手に入れることが出来る。そこが人の強さのスタート地点となるのさ」

「ありがとうございます 先輩。今その言葉。確かにこの胸に刻み込みました。そして、人として恥ずかしくない生き方をします。それから…」

「それから先輩をもらいにいきます!!」

『かぁー//』

「お、おお、おう、まっ、待ってるぜ」


俺は、この時決意した。

何があろうとも春先 和花(はるさき のどか)先輩にふさわしい男になることを。

聞くと先輩は、この国屈指の超進学校『私立硬鉄高校』に入学が決まったそうだ。

そこでやることがあるらしい。

聞かれるまでもない。

俺もそこに必ず入ってやる。

あと1年。絶対に諦めねーぜ、先輩。



次は、

俺が入学した高校の給食のおばちゃんの話だ。おばちゃんと呼ばれてはいるが20代らしい。

『竜宮京 乙女(りゅうぐうきょう おとめ)』の話をお届けする。

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