第5話 栃木で最も美しい男、総帥と交渉す

「マッスル☆君」 レベル 35

HP 362/410

AP 0/0

腕力 82

速さ 110

知性 44

魅力 999


「いちご」 レベル 17

HP 12/80

AP 64/64

腕力 28

速さ 21

知性 3

魅力 79


「ウツノミヤ総帥」 レベル ?

HP 13780

AP ?

腕力 999

速さ 60

知性 35

魅力 6


「無理ですね、勝てるわけがない……美しさくらいしか対抗要素が

ありませんね」


「無理だね……って、あたしの知性低すぎ!?」


巨大なる男、ウツノミヤ総帥との圧倒的戦力差に、二人は戦う意思を

失ってしまった。

あとは殺されるのを待つのみか。


巨大な男は、怒りをあらわにした様子で二人にスーパーダンディボイスをぶつける。


「ワ シ の 部 下 を 殺 し 、 

役 所 を 破 壊 し た の は 貴 様 ら か ?」


美しい男は威圧感に吹き飛ばされそうになるのをごまかしながら、

両腕を両脇に構えながら大声で言った。


「いえ、それをしたのは先ほど四散したガキです」


「な る ほ ど …… し か し 貴 様 ら が ガ キ の 仲 間 で な い と

信 用 は で き ん な 。 や は り 殺 す か」


「まて!!! この人……お兄ちゃんだけは殺させやしない!」


ぼろぼろの少女が、いつのまにか美しい男の前に仁王立ちしていた。

そして、巨大な男に対して啖呵を切る。


「あたしの生命力全てをAPに変えて、貴様を倒す!!」


「お も し ろ い 、 使 う が い い 全 て の 力 を」


異様な構えをした少女は、左腕に全ての魔力を集中させていく。

その手を天にかざし……、


「バ カ な 、 そ の 魔 導 は ま さ か !」


「メテオッッ!!!!」



……。



特に何も起きなかった。



「あ、あれー、おっかしいなぁ。アニメだとこんな感じで……」


微妙な空気になってしまった瓦礫の上。

美しい男は、空気を打破すべく口を開いた。


「いちごさん、魔導とか使えたんですか?」


「いんや、全く。ああ、夜に明かりつける魔導くらいなら使えるよ」


「な ん か 凄 そ う な の で 、 こ の 魔 導 は ま さ か !

と か 言 っ て し ま っ た で は な い か ……」


総帥の意外な一面、ノリがいいということがわかったところで、

女性の、なおかつ低音なボイスがごちゃごちゃの会話を割いた。


「総帥! この惨事、やはり"魔導師"連中の仕業だったようです。

奴らが動いていたとは……」


「そ れ は 本 当 か ! ? ま ず い な 。

ワ シ は こ こ を 動 け ん し 、 奴 ら が 相 手 で は

並 み の 人 間 で は 太 刀  打 ち 不 可 能 よ」


女性低音の持ち主、クールでキマってる赤いスーツに身を包んだ女性は、

美しい男とその妹のほうを睨み、少し観察した後に言った。


「どうでしょう、この者に魔導師の討伐を任せてみては。

頭の悪そうな娘はさておき、美しすぎる男性のほうはかなりの使い手と見ました」


「よ い 考 え だ 。 美 し い 男 よ 、 条 件 を の  む か ?

断 れ ば こ の 場 で 貴 様 ら 兄 妹 を 殺 さ ね ば な る ま い 。

や は り 、 疑 わ し い 者 は 排 除 す る」


予想外の提案に、美しい男は少し驚きはしたが、

この先生きのこるためには条件をのむより他はなかろう。


美しきポーズを取りつつ、妹を横に抱きかかえながらキザ・スマイルで言った。


「フッ、いいでしょう。貴方を退けるほうが骨が折れそうだ……その代わりに、

彼奴らを始末した後の私達兄妹の安全、及び最低限の生活を保障しなさい」


「よ か ろ う 。 彼 奴 ど も を 始 末 で き れ ば 、

そ れ は お ろ か 最 高 水 準 の 生 活 を 保 障 し よ う」


美しい男は、妹を脇に抱きかかえたまま後ろを向き、

目を瞑りながら天を指差し言い放った。


「交渉成立ですね。それでは、また。

美しい私の顔と名をよく覚えておいてくださいね。

マッスル☆君 です」


「マッスル☆君様。覚えておきましょう。ご武運を」


そんなやりとりのあと、スーツ姿の女性は何かを思い出したように

彼の筋肉質背中へと駆け寄った。


「ここに、我々が集めた奴らの情報が全て記載されています。

居場所などもある程度はわかるはずです」


「助かります。貴女も中々美しいですね」


書類を受け取り、兄妹は去っていった。


転生した美しすぎる男と、ついでにその妹vs魔導師たちの

熾烈な戦いが始まろうとしている……!!!

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