8#邂逅

 猟奇なハンター共は、カケスの話では鳥獣保護法で全員逮捕されたらしい。


 イノシシのブッピ達、森の動物達の勝利だ。


 森の平和が守られたことを祝して、みんなで集まってパーティーをすることにした。


 しかし、森の動物達を見回してひとり足りないこと気づいた。


 「あれっ?クマのブーウがいないや・・・」


 「あっ・・・本当だ・・・」


 「何でさよならもいわずに去るなんて・・・」


 ツキノワグマのブーウはこの森を去っていった。


 “山の主”を認めなかったことに対することと、追放事件をけしかけたことが、ブーウにとって自分が許せなかったのだろう。


 ブーウはここにいるより、戒めを選んだのだ。


 「生真面目なブーウらしいね・・・」


 ブーウと友達だったシカのフラコがうっすらと涙を浮かべた。


 シカのフラコは、“山の主”に追放事件のあの時き思い切り後ろ蹴りをくらわせたことを悔やんでいた。




 「さあて、パーティーをする前に・・・」とイノシシのブッピはゴム風船の入っていたあのゴミ袋を持ち出し、


 「この中に入っている、“山の主”が死んだ場所の周辺で置いてあった割れたゴム風船を、先の作戦の膨らませ割りに使った割れたゴム風船をあの丘に埋めて、“山の主”のお墓を作りたいんだけど・・・」


 とイノシシのブッピが尋ねたところ、


 「賛成!」「賛成!」「賛成です。」「賛成だよ。」と満数一致に可決した。


 「みんな・・・ありがとう・・・」


 とイノシシのブッピは声を詰まらせて、感涙した。


 「泣くなよブッピ、いや新しい“山の主”」


 「えっ?僕は“山の主”って柄じゃないし・・・」


 「いや、あんたは気持ちがぐちゃぐちゃだったみんなに“絆”の心を教えてくれた。“山の主”に相応しいよ!」


 タヌキのポクは言った。


 「そうだ!そうだ!」とリスのグリボンも相槌をうった。


 「でも・・・“山の主”の名称はあの“ブーさん”いや、死んだ大イノシシに永遠に名付けたいと思うんだ。僕は普通のイノシシでいいよ。」


 ブッピは遠慮がちに言った。


 「そうだ!そうだ!」


 とまたリスのグリボンが相槌をうった。

 「“山の主”は僕らの心に生き続けるんだ。さあ、“山の主”のお墓を作ってあげに行こう!」 



 ・・・・・・



 「さあ、ついたぞ!」


  そこは街が見下ろせる小高い丘だった。


 たまにここから、“山の主”が大好きだった風船が飛んできたので、何か考え事をよくしてた時にこの丘にどっかりと座りこんで街を見つめていたのだろう。


 “山の主”がいたと思しき場所に穴を掘る事に決め、森の動物達が一緒になり穴を掘り進んだが、なかなか地面が固くて要因に掘れなかった。


 穴掘りが得意なアナグマのプチャでもこんな固い地面は難しかった。


 動物達が途方に暮れていた頃、見覚えのある者が立っていた。


 森を後にして去っていったと思っていたクマのブーウだった。


 「俺はまだあいつに別れを言っていないんだ。」


 ブーウはそう言った穴掘りの手伝いをしてくれた。


 穴は、みるみるうちにあの割れたゴム風船の入ってるゴミ袋がすっぽり入る大きさになった。


 「ブッピ、お願いだ!あの“山の主”と共にあったというゴム風船をゴミ袋ごと俺に渡してくれ!」


 ツキノワグマのブーウはゴミ袋を摘むと、穴に全部ぶちまけた。


 みんなで掘った穴。


 かつてみんなが嫌った“山の主”は今では“大切な仲間”になっていた。


 その“大切な仲間”の為に掘った穴に“山の主”が愛したゴム風船が・・・人里にゴム風船を求め、ハンターに大量の銃弾を受け、大好きだったゴム風船の群れの中で絶命する時、崩れ落ちるように倒れた時に、“山の主”の下敷きになり、一緒に天国にいったこの割れたゴム風船達・・・




“山の主”と共に・・・


 ・・・今、俺達が手厚く葬ってやるぜ・・・!


 ツキノワグマのブーウは目から大粒の涙がこぼれ落ちた。


 全部のゴミ袋の中の割れたゴム風船を穴の中にいれると、今度は、みんなが猟奇なハンターから森の動物達から守る防衛のために全員で膨らまし割った、おびただしい割れたゴム風船をその上に入れた。


 ・・・これが、俺達の・・・俺達が忌み嫌って、追放までしてしまった“山の主”への懺悔だ・・・


 「ごめんよ!ごめんよ!ごめんよおおお!!」


 突然、ツキノワグマのブーウは感極まり、うずくまり、ぐおおおおお!!と嗚咽した。




 全部のゴム風船が埋まり、今度は土に埋める作業の途中に、みんなの目からも涙がこぼれた。




 泣いていない者は誰もいなかった。


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