7#協力
ブロロロロ・・・
キィーツ!!
カチャ、カチャ、カチャ、カチャ、カチャ、カチャ、カチャ、カチャ、
どやどやどやどやどやどやどやどや・・・
猟奇に満ちたハンター共がまた四輪駆動車に乗ってやって来た。
ライフル銃をそれぞれ抱え、猟犬もいた。
またハンターがやって来たことを森の動物達は知り、全員怯えた。「もうだめだ!」と泣き出す者もいた。
「みんな・・・お願いがあるんだ・・・」
イノシシのブッピは言った。
「このゴミ袋の中にはまだ膨らませていないゴム風船がいっぱい入っている。各自持てるだけ持って、ハンターが来たらみんなで一斉に膨らませてくれ!!」
「ええっ!」
「なんで俺が!」
という森の動物達は困惑した。
「嫌だ!」「断る!」
と言い出す者もあった。
「ふん!図に乗るなよ!あの自業自得野郎の風船を吹けるかっていうんだ!増してや風船を膨らましてハンターを退けるって出来るのか?だからイノシシは・・・」
ツキノワグマのブーウはイノシシのブッ
ピの作戦にケチをつけた。
イノシシのブッピはブーウをキッ!と睨みつけたが、ブーウは横を向いて、どこ吹く風と口笛を吹いていた。
ハンター共がどやどや迫って来る。
「もう・・・それしかみんなが助かる作戦はないんだ!みんな!早く!風船を!」
森の動物達は躊躇した。
イノシシのブッピを揶揄する者もいた。
「だから早く!」
イノシシのブッピは森の動物達が誰も風船に手を付けないことにやきもきした。
「早く!」
ハンターはすぐそこまで迫っていた。
「もういい!!僕だけでもやる!!」
誰も協力してくれない森の仲間に立腹したイノシシのブッピは、ゴム風船をゴミ袋から持てるだけ取り出し、迫り来るハンター共にむかってゴム風船をぷぅ~~っ!と口で膨らませた。
ハンターがイノシシのブッピの正に真ん前に迫り、銃を構えた。
森の動物達は「やめろ!」「撃たれるぞ!」「死ぬ気か!」と叫んだ。
その時・・・
バーーン!
「えっ?!」
銃をイノシシのブッピに向けていたハンターは、ブッピのゴム風船が膨らませすぎて破裂した音にビックリして立ち去ったのだ!
森の動物達はそれを見て、我も我もとゴミ袋からゴム風船を持てるだけ持ちだし、全員でまたやって来たハンター共に向けて、ゴム風船を一斉にぷう~~っ!ぷう~~っ!と口で膨らませた。
バーーン!
バーーン!
バーーン!
しかし、この風船膨らませ作戦に参加しない者が一頭いた。
ツキノワグマのブーウだった。
ブーウはまだ“山の主”のことでこだわっていた。
「何が風船だ!自己中野郎の風船なんて・・・」
そんなツキノワグマのブーウに危機が迫っていた。
猛り狂った猟犬がツキノワグマのブーウに迫った。
「ブーウさん!」
猟犬に咬まれる!と森の動物達は目を覆ったが、その瞬間・・・
バーーン!
きゃいん!きゃいん!
ツキノワグマのブーウは今さっき、イノシシのブッピが膨らませて、吹き口を離したゴム風船がそこに落ちていて、拾ったブーウは渾身の力でその風船を膨らませて、猟犬の正に耳元で破裂させたのだ!
流石に肺活量の凄いツキノワグマだと森の動物達は感嘆した。
ツキノワグマのブーウも風船膨らませ作戦に加わった。前脚には沢山の膨らませていないゴム風船が握られていた。
ツキノワグマのブーウもゴム風船を膨らませた。
よく見ると、ブーウの目から大粒の涙がこぼれていた。ブーウは、次から次へとゴム風船を泣きながらぷう~っ!バーン!ぷう~っ!バーン!膨らませ割った。
・・・肺活量の強いツキノワグマのブーウは凄いなあ・・・
イノシシのブッピは頼もしい戦力が加わり、よし僕も!と奮い立ち、もっとゴム風船を膨らませ割ろうとしたが、手元に無かった。
「はいっ。ゴム風船無いんだろ?」
ツキノワグマのブーウはイノシシのブッピに風船を少し分けてくれた。
「ブーウさん・・・」
最後まで、“山の主”に嫌悪観を抱き、イノシシのブッピと対立していたツキノワグマのブーウと仲直りした瞬間だった。
「ありがとう・・・」
ブッピの目には感激の涙がこぼれた。
よしっ!
イノシシのブッピはブーウの友情に答えるように、息を深く深く吸い込んで、ブーウに貰った風船に息を思い切り吹き込んだ。
クマのブーウはそれからも、風船が足りなくなった者にゴミ袋から風船を補充したり、肺活量に不利なリスや小鳥達をフォローした。
イノシシのブッピはゴム風船を膨らませてながら、周りを見た。
あの時、“山の主”を攻撃した者達・・・キツネのコルやタヌキのポク、アナグマのプチャ、その他鹿やウサギ、リスや小鳥、そしてクマのブーウも、みんな・・・顔を赤らめて一生懸命ゴム風船を膨らませ割り・・・
銃の音ではない。
森の動物達が膨らませたゴム風船は破裂した音だった。
ハンター共を翻弄している・・・嬉しい・・・みんな本当は“山の主”が・・・
“山の主”もとい“ブーさん”・・・付き合いが不器用だったんだよな・・・みんなに誤解されっばなしだったんだよ
な・・・でもみんな本当は・・・
「よし!ハンター共はみんな腰を抜かして森から出ていったぞ!」
「やったあ~~!!」
猟奇なハンター共は、森の動物達が全部目の前でゴム風船を膨らませ割りをしているのを見て、気味悪がり、四輪駆動車に乗って逃げていった。
おびただしい数の割れた風船の山の上で、森の動物達は体の空気が抜けたように膨らませ疲れて寝てしまった。
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