3#過去


 イノシシのブッピがまだうり坊だった頃だ。



 イノシシのブッピの父イノシシが食べ物探しのために山には食べ物が全く無く、人間の畑で野菜を失敬した時にハンターに追われた。


 父イノシシは頬がはちきれそうな位口にいっぱい野菜を入れ、母イノシシとうり坊達のもとに帰ってきた。が、


 野菜を盗まれた人間に父イノシシが追いかけられていた。


 そして、ブッピが父イノシシを迎えに行ったとたん、目の前で待ち構えていたハンターに


 バーン!バーン!


 父イノシシはその場で散弾銃に撃たれ、絶命した。


 「父ちゃああああん!!」

 

 ハンターに殺された『野菜泥棒』の父イノシシの前に今度は母イノシシが飛び出してきた。


 ハンターに渾身の力を込めて突進した母イノシシは散弾銃を構えるハンターを突き飛ばして襲った。


 が・・・




 バーン!バーン!




 今度は突き飛ばした仲間のハンターに母イノシシが撃たれて、もんどりうってもの悲しい金切り声をあげてそのまま倒れた。

 「母ちゃああ~ん!」


 ブッピは倒れた母イノシシに駆け寄った。

 「ブッピや・・・あなたはたったひとりの・・・息子だっ・・・がんばりな・・・」




 バーン!




 母イノシシへ留めの一発がハンターにお見舞いされた。


両親を一気に失ったプップはハンターを睨みつけた。


 そして今度はうり坊のプップにまでハンターが散弾銃を狙いを定めた瞬間・・・




 バッ!




 一瞬大きな影が迫った。


 大きな影はうり坊のブッピをがばっとくわえて猛ダッシュで攫った。


 ハンターがその影を撃とうとも、散弾銃の弾は全部弾き返した。


 ハンター達は舌打ちをすると、両親のイノシシを軽トラックの荷台に運んで去っていった。

 

 うり坊のブッピは自分のくわえている者を見た。


 親のイノシシより何倍もデカい大イノシシだった。


 大イノシシの鼻からぶーっ!ぶーっ!と轟音のような鼻息が飛び出していた。

 

 「なあうり坊や、ここまで来れば安全だ。」


 ブッピは見上げた。


 巨大な体のイノシシだ・・・!


 デカい鼻の穴から絶えずぶーっ!ぶーっ!と鼻息が飛び出していた。 


 「お・・・大きな体のイノシシさん!危ない所をありがとうございます!」


 「いえいえどういたしまして!」


 大きなイノシシは野太い声で答えた。


 「大きなイノシシさん!」 


 「僕の名前は“ブー”って言うんだ。でも周りのみんなは“山の主”と言われてるけどねっ!


  大きなイノシシもとい“山の主”はブッピを向いて片目を閉じてウインクをした。


 「うり坊の名前はなんだい?」「僕の名前はブッピって言うんだ。」


 「いい名前つけて貰ったね!両親に・・・」


 “山の主”が『両親』と言うと、ブッピはうっ・・・うっ・・・と泣きじゃくった。


 「ご・・・ごめんよ!思い出さしてごめんよ!なあブッピとやら、僕が今度はお前さんの親代わりになるぜ!」


 “山の主”はどん!と自分の胸を叩いた。


 「ありがとうございます!」ブッピは“山の主”の太っ腹に感謝した。


 「ところで・・・」ブッピは“山の主”に聞いてみた。


 「ブーおじちゃんって何でこんなに大きいの?」


 「おじちゃんって・・・まあいいけど僕の体は生まれついての大物だからさ!」


 「風船だと思った!」ブッピははしゃいだ。


 「風船って何?」


 「風船って空気を入れると大きく膨らむ入れ物だよ。もしかすると、どっかに空気を入れる詮があって、詮を抜いたらそっから空気がぷしゅ~~~~っと抜けるかもねえ!そしたら普通のサイズのイノシシに・・・」


 今度は“山の主”がうっ・・・うっ・・・と涙を浮かべた。


 「空気が抜けたいよ・・・空気が抜けたいよ・・・本当に空気の詮が僕の体にあればいいのになあ・・・」


 「ここかな?」


 「あそこかな?」


 今度はブッピはあちこちで“山の主”をコチョコチョとくすぐり始めた。


 「あっ!僕も!」と“山の主”もブッピをくすぐり始めた。


 こうして2匹の“くすぐり合い”の遊びで一緒にはしゃぎ廻った。




 こうして、ブッピと“山の主”との生活が始まり、一緒に遊んだり、いっちょ前のイノシシになるための掟を学び、やがてブッピはうり坊から成獣のイノシシにすくすく成長していった。


 しかし、ブッピと“山の主”こんな素晴らしい日々は長くは続かなかった。

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