8#夢覚

 僕は袋・・・いや風船を口で鼻の穴とほっぺたをパンパンにして膨らませていた。

 ふと、口から風船を離してみる。


 ぷしゅ~~~~っ!しゅるしゅる。


 風船の空気が吹き口から吐き出して、萎みながら吹っ飛んでいった。


 「これも風船の力だよ。風船っていうのは、空気を入れると膨らむの。離すと空気が飛び出して萎むよ。軽い空気を入れると、鳥みたいに空も飛べるし、息を入れるとついて遊べる。尖った物を刺せば、鉄砲みたいな激しい音を出して破裂する。


 風船は、入れた空気でいろんな表情を見せるから好き。貴方もいろんなつらいことがあっても、いいことに考えを入れ替えて、風船のように自由に生きるのよ!」


 母さんは体中に結わえた無数の風船で、空にふわりと浮かぶと、どんどん登っていった。


母さん、待って!母さん!行かないで!ねえ母さ・・・バーン!!


 僕は母さんを追いかけるのに夢中で、脚元の大きな風船を思わず踏み割った・・・いや、そこで目が覚めた。


 僕は放置車の中。僕は天井に嫌というほど頭をぶつけた。いや、僕の図体が大きすぎから、必然的に頭をぶつける高さ。天井がその衝撃で凹んだだけでなく、放置車までひしゃげた。


 自分の力・・・僕は大イノシシ。山の大イノシシ。山の主になり損なった臆病者・・・


 で、あのバーンの音は?


 鉄砲・・・銃声だ!


 自分が畑のスイカを食べてしまったから・・・その時は、お腹が死ぬほど空いてたんだよ。見逃してくれ!


 しかし・・・抜けない・・・体が!ひしゃげた放置車が邪魔で・・・助けて母さん!!

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