6#流浪


 僕は涙でくしゃくしゃになった、顔のまま割れてしまった“丸い物”の破片を加えて、ほとりをトボトボと歩いた。


 外は真っ暗闇の夜。腹が減った。何か食べたい・・・


 辺りを探った。何も食べ物はなかった。

 突然、畑が目に飛び込んだ。おいしそうなスイカ・・・いただきま~す!!


 僕はわき目もふらず、一目散に畑のスイカをむしゃむしゃと頬ばる。 


 おいしい!生き返った感じだ。久し振りの食べ物に我を忘れた。僕の腹は、スイカでどんどんと風船のように膨らんでいった。 


 ・・・風船か・・・


 食べることに夢中になりすぎて、周りを気にしなかったのが、悪かった。後ろから


 「コラ~っ!この泥棒イノシシめ~!!」


 と畑の主の人間が棒切れを振り回して、追いかけてきた。 僕はビックリして一目散に逃げ出した。鼻を鳴らして叫び声を挙げながら、夢中で走った。


 ごめんなさい!ただお腹がすいてたから仕方がなかったんだ!!


 辺りでワンワン吠えたてる飼い犬。僕の居場所はどこにあるんだ!!


 やっと、命拾いして隠れたのは、人間が道端に捨てた放置車の中。いつもは森の仲間がはねられて死なすこの人間の“走る凶器”も、今は僕を守る居場所だ。


 ふと、僕はずっとくわえていた、割れた“丸い物”を畑に忘れてきたことを思い出した。


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