第8話 vs 面倒臭がり屋×風紀委員
「あー、いつも通りなのね・・・」
「えぇ、まったく、困ったものです」
女王様気質の風紀委員、東葛風季さんといっしょに嘆くは、目の前で幸せそうに寝ている生粋のダラけ体質、漫正也くんを見ているから。
「私もいろいろと試したのですけどね。今回は難儀していまして」
ホント、寝るくらいなら、夏休みなのに何でわざわざ学校まで出てきてるんだか・・・。家で寝ろよ、家で。お蔭でまた戸締りに支障をきたしてるし。
「あなたがここを通りかかったのも何かの縁なので、ここは一つ」
「まぁ、手伝ってあげるのは─」
「喘ぎなさい」
「ちょい!?」
明後日の方向からキラーパス来たけど!?
「はぁ!?頭湧いてんの!?」
この夏の日差しにやられて!
「だって起きないじゃないですか、彼。だったらもうあなたが喘ぐしかないですし」
「『だったら』が分からないから!何でそんな結論になるの!」
「知らないのですか?男性が最も効率的に目を覚ますには、女性の喘ぎ声が一番です」
「何だよ、そのデータ・・・」
「検証しましたから、一年のとき」
「え、検証・・・?」
「教室で寝てる人が多かったので、スマホからAVを流してみました」
「おい、風紀委員!!」
風紀乱してるし!
「ご心配なく、一瞬ですから」
「一瞬でもアウトだよ!教室どんな空気になったわけ!?」
「疑心暗鬼の塊ですね。男女構わず」
「そりゃそうでしょ・・・」
「『え、今のって・・・』みたいにざわざわとなりましてね。ただ口に出したら出したで変な空気になるので、結局皆さん押し黙りまして」
良かったよ、その教室にいないで・・・。
「本当に、私の掌で皆さんが躍っているという感じで、快感の極みでした」
「このドS!!」
ホント、根っからのサディスト・・・。
「と、いうわけでですね。喘ぎなさい、あなたが」
「嫌だよ!!」
考えるまでもないわ!
「あら、どうしてですか?声優にしろ、セクシー女優にしろ、好きなタイミングで喘ぎ声ぐらい出せないと」
「だ・か・ら!!私はそんな夢持ってないから!!」
いつから出回ったんだか、そんなデマ・・・。
「大体、それならスマホ使えばいいじゃん!」
「生憎、今日は持ち合わせていませんので」
「じゃあ東葛さん自身がやってよ!」
「嫌ですよ、そんな恥知らずなこと」
「私もだからー!恥知らずって分かってるなら言ってくんなっての!!」
「はぁ、もういいですから。さっさとやってください」
「何で呆れてるわけ・・・?」
何で私が物分り悪い子になってるわけ・・・?
「彼、よっぽど疲れているのか知りませんけど、全然起きないんですよ。私はもう疲れたので、あなたが適当にやって起こしてくださいよ」
「適当にやって恥をさらしたくないんだよ・・・」
漫くんは漫くんで、こんな近くで結構な大声出してるのに、全然起きないし・・・。
「いいじゃないですか。さっさと喘いで彼を起こして、寝ぼけた漫さんに胸でも触られてください」
「短時間で大事なものいろいろ失う未来だから、それ!!」
余計なオプション付いて来たんだけど!!
「不意に胸を触られる。憧れでしょう?」
「憧れるか!!」
そんなの2次元の中だけだから!!現実にやったらセクハラ!!
「・・・ん?あぁ、その手がありましたね」
「え?」
何か思いついたように、彼女は閃いた顔をする。
「私が彼の耳元で囁けばいいですね。起きたら胸、触らせてあげるって」
「もっとデリケートに生きろよ!!」
たかが人起こす為にそこまでするなよ!!
「そうは言っても、起こさないといけないのは事実ですし、あなたは協力してくれないのでしょう?」
「・・・それは、まぁ・・・。でも、男子にそんなことさせるのは・・・」
「ふふ、いやですね、本気にしないでくださいよ。口八丁ってやつですよ」
「あ、そうなんだ」
「ひと揉みしかさせません」
「十分だよ、それ!!」
男子にとって女子の胸がどれほどのサンクチュアリか分かってるの!?って、女子の私が思うのも変だけど!!
「いやいや、堤さん。私の胸のハリと弾力を考えると、一回というのがいかに残酷なことか・・・」
「知るかよ!」
「加えて、嘘はつきたくないですからね。風紀委員ですし」
「今更過ぎるから!!風紀もへったくれもないから!!」
「最初からこうすれば良かったですね。すいませんね、堤さん。付き合わせて」
「・・・東葛さんがそれでいいなら止めないけどさ・・・」
絶対もっと効率がいいやり方ある気がする・・・。
「所詮、男なんて乳です。胸のないあなたに頼むこと自体がお門違いでしたね」
・・・かっちーん。
「さて、それでは漫さん・・・」
「ちょっと待って」
私は漫くんに近寄る東葛さんに割り込んで、彼の耳元で小さな声で囁く。
「漫くん・・・」
「- - -・・・」
「・・・えっ・・・!?」
「・・・おはよ、漫くん」
「・・・堤、東葛・・・。あれ、何だろうな、今起きないと絶対に損する気がしたんだが・・・」
漫くんはまだ状況を把握できていないように起きる。
「ふんっ!見た?別に喘がなくたって、胸が無くたって、男の子を起こすことくらいできるんだから!」
私は耳を真っ赤にさせつつ、東葛さんに啖呵を切った。・・・にしても、あんな恥ずかしいことよく言ったよ、我ながら・・・。とにかく、これで少しは東葛さんを見返して・・・。
「はい、ご苦労様でした」
「え」
東葛さんはしらー、と冷めた顔で荷物をまとめ始める。
「ほら、漫さん。さっと動いてください。あなたがいたら戸締りができないでしょう」
「・・・ん?あぁ、悪い・・・」
漫くんも、人の気も知らずにぼりぼりと頭をかきながら席を立つ。あれ、東葛さん?こんな淡泊な感じなわけ?・・・あれ、これってまさか・・・。
「・・・ねぇ、東葛さん。もしかして・・・」
「扱いやすいですね、相変わらず」
「・・・んな・・・」
「さぁ、帰りますよ、堤さん、漫さん」
何事も無かったように、二人は教室を出る。
「・・・くぅ・・・」
・・・いいように乗せられたよ、またも・・・。
to be continued...
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