第7話 vs ラガーマン×アスリート

「ひゃあ、速いもんだ」


学校の校庭。休み明けは運動会ということで、みんなそれぞれ練習している。私は別に練習の予定は入っていないので、何気なしにみんなの様子を眺めていた。スポーツは平凡以下の実力の私にとって、華麗に走る人とかは憧れる。


「やぁ、堤さん」

「ん?」


陸上部のホープ、駿河小春。


「駿河さん!あなたも練習?」

「ああ、陸上部は運動会関係なしに毎日走っているからね。もちろん、運動会も手は抜かないぞ、期待していてくれ」

「うん、楽しみにしてる」

全然違うよなぁ、クラスに陸上部がいたら・・・。彼女はリレーに出場するけど、ほぼ一勝もらっているようなものだもん。

「それはさておき、堤さんは暇かな?」

「まぁね」

「だったら丁度いい!実は一つ頼みたいことがあって!」

「・・・え」

このパターンって、またろくでもないことなんじゃ・・・。前科があるもんな、彼女には・・・。

「えーとね・・・」

どうしようかな・・・、また鞭を振るうのもなぁ・・・。


「お、堤じゃねぇか」

「あ、加瀬くん!」


部活熱心なラグビー部、加瀬伊能。


「今日も部活?」

「ああ、俺たちは運動会とか関係ないしな。まぁそれでも、騎馬戦は任せとけ!」

ガタイがいいもんね、当然パワーもあるし。加瀬くんとあたる相手は気の毒だよ。

「そうだ、おい堤、今空いてるか?ちょっとお願いがあんだけど」

「あー・・・」

あれー、タイミング悪くない、これ・・・。


「おい」

「ん?」

「無理強いをしないでくれないか?堤さんが困っているだろう。それに今、彼女は私の頼みを聞こうとしてくれていたんだ」

駿河さんが加瀬くんに物申す。いや、まだ頼まれたとは言ってないけど・・・。

「何だ、お前いたのか。どうせしょうもないことを頼んでたんだろ?俺の方が重要だから引っ込んでろ、ドMアスリート」

ドMアスリートて!

「こちらの台詞だ。身をわきまえるのはそっちだろう、セクハララガーマン」

セクハララガーマン!どっちもひどいあだ名だな・・・、あってるけど。

「「ふん!」」

「・・・え、なに、仲悪いの二人とも・・・」

お互いそっぽむいちゃったけど・・・。

「気をつけろよ、堤。こいつどうしようもねぇから」

「心外だな。セクハラ野郎の言葉に口なんて貸さない方がいい」

「「変態だから」」

「どの口が言ってんの!?」

私、二人からそれぞれ変態的行為受けましたけど!?

「とにかくだ、堤。こんな奴は放っておいて、ちょっと聞いてくれよ」

「先に依頼したのは私だ。後から来たものが身を引くのは当然だろう」

「・・・あのね、まだ私お願いを受けてあげるとも言ってないし、そもそも具体的な内容を聞いてないから・・・」

「ああ、そうだったな、すまない、早とちりをしてしまって・・・。ただ、堤さんにとっても利益のあるものだぞ」

「私にとっても・・・?」

「それを言うなら俺だ。お前が絶対喜ぶことだぜ?」

「私が喜ぶ・・・?」

・・・何だろ。私の想像と違って、ある程度まともな─。


「俺を思い切り殴ってくれ!前みたいに!」

「私を思い切り殴ってくれ!前みたいに!」


「─わけねぇよ!!分かってたよ!!」

想像通りだし・・・。ていうか・・・。

「ぅおいっ!!私を何だと思ってるんだよ!!そんなことしても私嬉しくないから!!」

「堤さんの言うとおりだ。お前みたいな軟弱な奴をしばいたところで堤さんも満足しまい」

「いや、そういう意味じゃ・・・」

「はっ、その台詞、そのままそっくり返すぜ。陸上部なんて所詮足だけを鍛えてるんだろ?それ以外の耐性はもろいくせに、でしゃばるなよ」

「いやだからね、聞けって・・・」

「私なんて、堤さんに思い切りロープで殴られたのだぞ?お前にそんなことはしてもらえないだろう?」

「なに!?そうなのか、堤!?」

「だってあれは・・・。あんな一生懸命頼まれたら・・・」

「へっ、なんだ、頼まれて無理やり、かよ。全然だな、そんなの」

「・・・どういうことだ?」

「俺なんて、堤が自ら俺の頭に踵落としをいれてくれたんだぜ?」

「な、なにっ!?堤さん自身の意思でだと!?本当なのか、堤さん!」

「あれは耐え難い注文をしてきたから・・・」

整形なんてできるか、っての・・・。

「ふっ、結局はただの誘導尋問か、くだらない」

「堤に嬲られるのなら俺の方が上手くできんに決まってるだろ?女っていうのは男を尻にしいてこそ魅力が高まるってもんだ」

「ふん、甘いな。同性だからこそ気兼ねなくプレイに集中できるのだよ。堤さんを輝かせるのは私に決まっているだろう」

「俺の方が堤のサディズムを引き立てられる!!」

「私の方が堤さんに女の悦びを与えられる!!」

「ボリューム下げろって!ここ外!」

「心配すんな、俺は気にしねぇから!」

「私もだ!」

「私が気にするんだよ!!」

周り結構見てるし、変な誤解されるって絶対これ・・・。二人もヒートアップしちゃって全然収まる気配ないし・・・。あぁ、もう!!


「止めて!私の為に争わないで!!」


私は二人の間に割って入った。

「こんな争いをしても不毛でしょ・・・。お互いに冷静になって話せば分かるはずだから!」

「・・・むぅ・・・」

「・・・まぁ・・・」

二人は少し頭を冷やしたように押し黙る。

「確かに、少し熱くなりすぎたか・・・」

「私も、反省せねばな・・・」

「うん、そうだよ。分かってくれたのならそれで・・・」


「良くないからっ!!言わせんなよっ!!」


「「え?」」

「女子の憧れの台詞だよね、これって!!二人の男子から挟まれて、って本来は憧れのシチュエーションでのものなのに!!なに、どっちが上手いこと私に虐げられるかで争ってんだよ!!」

台詞の無駄遣いだよ、これ!!

「・・・仕方ねぇ、ここはスポーツマンらしく、運動会で決着をつけるってのでどうだ?」

「成程、いいだろう。どちらかより勝利に貢献したか、堤さん自身に決めてもらおうじゃないか」

「よし、それでいこう」

「まぁ、私が負ける道理はないがな」


・・・ホント、好き勝手だし・・・。何か、素直に運動会で自分のチームを応援できない展開になったんだけど・・・。


to be continued...

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