第10話 vs 彼氏持ち×彼氏
「ちょっと、間違ってたら悪いんだけどさ」
「はい?」
公園で待ち合わせをしている時、ベンチに座っていると見知らぬ男性から話しかけられた。イケメンで、背も高い。大学生かな?
「もしかしてキミって、堤さんだったりする?」
「え?そうですけど・・・」
・・・何で知ってるんだろ・・・。
「やっぱり!そっか、キミが堤さんか」
「どこかでお会いしましたっけ・・・?」
私、全然見覚え無いんだけど・・・。
「悪い悪い、急に言われても戸惑うよな。俺は伊藤
「・・・伊藤?」
名前言われても分からないな・・・。
「ま、聞いてもピンとこないよな。ほら、堤さんのクラスに、槍真奈美っているだろ?」
「あぁ、はい、いますね」
ウチのクラスの彼氏持ち。・・・ん?その話を今するってことはもしかして・・・。
「俺があいつの彼氏だ」
* * *
「ほら、スポーツドリンク」
「あ、すいません、ありがとうございます」
ジュースをおごってもらっちゃった。へぇ、この人が槍さんの彼氏か。4つも年上だったんだ、全然知らなかった。どうやら今日は今からデートみたいで、公園を待ち合わせをしていたらしい。そして、同じく人を待っている私を見て話しかけた、と。
「でも、どうして私のことを・・・」
「真奈美から聞いててな。あいつのクラスに面白いやつがいる、って写真で紹介してくれてさ」
「面白い、って・・・」
誰のせいで私が苦労してると思ってるんだか・・・。
「ちょっと話さないか?どうせ俺の方も遅れてるみたいだし」
「まぁ、いいですけど」
時間を潰しがてら、彼氏さんと話すことになった。
「上手く行ってますか?槍さ・・・真奈美ちゃんとは」
一応彼氏さんの前だから、呼び方を若干改める。
「まぁ上手くいってないことはないんだけど・・・」
「何か問題でも?」
喉に何か詰まったような言い方だな、何かあるのかな?私は、買ってもらったドリンクを飲みながら尋ねる。
「貞操の危機だな」
「ぶほっ・・・」
いきなりそういう話かよ・・・。思わずジュースを吹き出しそうになる。
「・・・あのですねぇ、それが初対面の女子にする話ですか?」
「堤なら良いって真奈美から聞いてる」
何勝手に認めてんだよ!!よくないからっ!
「恥ずかしながら、俺ってまだ未経験でさ」
会話続いてるし。付き合うしかないやつじゃん、これ・・・。
「ほら、俺たち付き合ってるからたまに真奈美の家に行ったりするんだよ。そん時が一番ヤバいな。あいつ容赦ないから」
「はぁ・・・」
「それにしても家にいるときじゃなくても・・・。急に親御さんが帰ってきたらどうするんですか」
「それだよ」
「それ?」
「それがあいつの狙い。どうやら、手塩にかけた娘がどこの馬の骨とも知らない彼氏に襲われているシーンを父親に見せつけたいんだと」
「・・・はい?」
「どのくらい悲しんでくれるのかな、って知りたいってさ。ま、思春期の子供が家を飛び出して、親に心配してもらいたい心理と同じだよ。かわいいもんさ」
「いや全然ですから!!まったくかわいくないです!天と地ですよ!」
何てこと考えてるわけ、あの子!?父親にとって娘っていうのは・・・って、そういえば槍さんのお父さんの不倫の末、槍さんが生まれたんだっけ・・・。だとしたら、その親あっての子・・・なのかな・・・。
「そ、そういわば、二人の馴れ初めって何だったんですか?」
これ以上踏み込むと変な方向に行きそうだったので、話題を変える。
「馴れ初めか。俺と真奈美が付き合ったのは、2年前だな」
ってことは、槍さんが中3のときか。早いなぁ。
「俺、大学で探偵サークルなんてのに入っててさ」
「探偵サークル?」
「ああ、その名の通り、依頼人が来たらどんな内容でも調査するってサークル。ある時浮気調査をしてくれ、って依頼が来てな。同じ大学の生徒から」
「浮気調査・・・」
そんな重いのもやるんだ。しかも依頼者同じ学校の生徒って。
「決定的な瞬間をカメラに収めるためにラブホテルの前に張り込んで待ってたんだよ。ほら、例のラブホテル」
「あぁ、あそこの、じゃないです。雑なノリツッコミさせないでください」
知らないからラブホの所在なんて。・・・ここからどう出会いにつながるわけ?
「俺一人で物陰に隠れてたら、なーんか人の気配が他にもするなぁ、と思ってたらそれが真奈美だったってわけ」
「はぁ!?」
「あいつ、言ったら不倫マニアだからさ。ホテルから出てくる客は全員不倫してるって勝手に想像して楽しむのが趣味だったらしくて」
「趣味が悪すぎる!!」
あの子らしいっちゃらしいけど・・・。ってか中3でラブホテルの前に張り込むってどんな精神してるわけ?
「向こうから話しかけられて。不倫愛好者ですか?って」
「絶対第一にする質問じゃないですよね!?」
何だよ不倫愛好者って!!
「そこから意気投合して。俺も結構家庭が複雑でな。異父兄弟が何人かいるらしくて、まぁ会ったことがないやつもいるんだけど」
「えぇ・・・」
さらっと凄いこと言ってるよ・・・。
「ごめーん、待ったぁ?」
私が会話についていけなくなりかけていた時、タイミングよく女の子の声がする。良かった、やっと来たよ・・・。
「いや、今来たとこだ」
定番の返しだこと。さて、これから二人は楽しい時間だし、私は邪魔しないように・・・って、え?
「誰!?」
来たの槍さんじゃないんだけど!!大学生だよね、見た目!?
「え、この人とどんな関係なんですか、伊藤さん!」
「愛人」
「さらっと言うなよ!!はぁ、愛人!?真奈美ちゃんと付き合ってるのに他の人にも手を付けてるんですか!?」
「おいおい、そんな最低な男を見るような目をしないでくれよ」
「だって・・・」
「そうだよ!言成は悪くないんだって!私は真奈美公認の愛人だから!」
名も分からない恐らくは大学生の女性がフォローに入る。真奈美ちゃん公認・・・?
「ほら、あいつ、たまに浮気してないと怒るからさ・・・」
「あ」
あー・・・、言ってたわ、そういえばあの子・・・。最近彼氏が浮気しない、って嘆いてたわ・・・。
「私、言成のこと好きだけど、どうしても真奈美には勝てそうにないからさ。でもよくよく考えたら、一夫多妻、なんて言葉もあるくらいだし、こんな形でもありかな、って思って」
「・・・か、寛容ですね・・・」
こ、これが大人の恋愛、なのか・・・?
「それに、いかがわしい行為は何もしてないから!」
「あぁ、健全な方だよ、俺たちは」
なるほどー、こんな風な恋愛の形もあるのかー。肉体関係がないなら、確かに健全なお付き合いだー、はははー。
「って!!んなわけあるかいっ!!」
to be continued...
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