第37話 vs 現実系オカ研
「ん」
「ん?」
出席番号1番、綾貸紀太。
「ほらよ」
「え、何これ」
ゲームや映画、小説などのホラーものが大好きで、部活はオカルト研究会なんてものに入っている。私、ホラーが好きな人の気持ちって分からないんだよな・・・。何で自分から好んで怖いものに関わろうとするんだろ、って思っちゃうから。そしてこれまたよく分からないものを手渡されたし。
「今度オカ研が心霊現象を調べにいくんだけど、その招待状」
「いや、いらないよ!何で私に渡すの!?」
「あれ、何だ?堤ってこういうのダメなのか?」
「ダメだよ・・・」
「ふ~ん、超意外だな」
「何で意外って思われているかは知らないけどさ・・・、私だって怖いモノは人並みに怖いから・・・」
「まぁ、そんな考えんなよ。幽霊なんてこの世にいるわけないだろ?」
「へ?」
「んだよ、そんな鳩が豆鉄砲喰らったみたいな顔して」
「え、いやだって、ホラー映画、好きだよね?」
「おう」
「部活もオカルト研究部だよね?」
「ああ」
「・・・それなのに、幽霊を信じないクチなの?」
「・・・はぁ、おいおい堤・・・」
ものすごい呆れた顔をされたんだけど・・・、腹立つねこれ。
「お前、幽霊見たことあるのか?」
「いや、無いけど・・・」
「そだろ?俺も無い。見たことないんだからいるわけないって考えるのが普通だろうよ」
「まぁ、そうだけど・・・」
「超常現象やら怪奇現象やら言われているものは、全部偶然か勘違いの集合体だ。気にするだけ損だぜ?」
「・・・じゃあ何でオカルト研究部とか入ってるわけ?」
「オカ研に入れば必然的に現象に関わる機会が増える。その全てが根拠あるものだと証明する為だな」
「変な理由・・・」
「ホラーコンテンツっていうのはしっかりフィクションとして楽しむものだろ?現実と絡ませるのはナンセンスだし」
「成程ね、一理あるかも。要は、オカルトの否定ってわけじゃないんだね」
「そうだよ。俺、お化け屋敷とかも好きで、並ぶことだってある」
「へぇ・・・」
そう言えば、生まれてこの方お化け屋敷なんて入ったことないな・・・。
「メイクをしてる演者の皆さん一人ずつに、『必死に人を怖がらせようとして、本当に、お疲れ様です』って言いまわるのが好きでな」
「冷やかし!並んでまですることかよ!」
ドンッ!!
「わっ」
綾貸くんの悪趣味をつっこんでいると、急に教室の窓ガラスにカラスがぶつかった。
「びっくりした・・・。うわ、何か不吉・・・」
「はは、気にし過ぎだっての、偶然だ偶然」
「でも・・・、こういったことって結構気になっちゃうよね」
「迷信だよ。俺がまだ小学生の頃な、何の前触れもなく湯呑みに急にひびが入ったことがあってよ」
・・・普通に言ってるけど、湯呑みに急にひびが入るなんてそうそう無いからね?
「別に気にしないで家を出て学校に歩いてたら、何か歩きづらくて。ぱっと下見たら靴ひもが切れててな」
「・・・ほどけてた、じゃなくて?」
「ああ、根本からぶちって。まぁ、どうでもいいんだけど」
よくないでしょ・・・。
「後は、黒猫が横切ったり、学校のトイレで鏡見てたら急にひび割れたり、その日が13日の金曜日だったりいろいろあったんだが・・・」
「オンパレード!!」
「そんないわゆる不吉とされるものが重なっても腕を骨折するぐらいしか起こらなかったんだぜ?やっぱ迷信だろ?」
「あぁ、そうなんだ。確かにね、・・・じゃないよっ!!え、なに、腕折ったの!?」
「ああ、複雑骨折」
「しかも複雑かよ!!」
「何もないところでつまづいてな、それで腕やっちゃって」
ただつまづいただけで複雑骨折って・・・。
「・・・ねぇ、それ以来骨折とかしてないの?」
「ああ、俺は骨折は今まででそれっきりだ」
「だったらもう確定レベルだけど・・・?どう考えても、その不幸の予兆の連鎖のせいだって・・・」
「ただの偶然が重なっただけだろ。信じるもんじゃない。それに不幸っていうのは死ぬことだけだ。生きてりゃあとはどうとでもなるだろ」
「・・・ポジティブだね・・・」
本人がいいならいい・・・のか、これ・・・。
「でもさ、綾貸くんって現実のオカルト現象はまったく信じていないわけでしょ?他の部活のメンバーと折り合い悪くないの?」
「そりゃあ入部当初はいろいろあったが、あいつらに言わせれば、どうやら俺は素質があるらしくてな」
「・・・素質?」
って何の・・・。
「ほら、これ見てみろよ」
彼は懐から一枚の写真を取り出す。そこには綾貸くんが映っていた。
「ここ。俺の後ろに何かぼやーって映ってるだろ?」
「・・・あの、ぼやーっていうか、結構はっきりと人ならざるものが映っているんですけど・・・」
めちゃくちゃ怖いんですけど・・・。
「部活のメンバー曰く、俺って霊を集めやすい体質みたいでさ。ま、馬鹿馬鹿しくて全然信じてないけど、俺が写真を取ったら、大概5割で何か別のものが映る」
「お祓い行けよ!!」
「やだよ、んな無駄に金がかかるのなんて」
「っていうか、行ってよ!何か周りに危害が出そうなんだけど!?」
「考えすぎだっての。全部、迷信で偶然だ」
「到底そうは思えないんだけど!!」
・・・なにこれ・・・。散々心霊体験しておいて本人まったく気にしてないって、どんなハートしてるわけ・・・?
「あ、そういえば、心霊現象の調査、手伝ってくれるか?」
「行くかぁ!!」
「心配するなって。当日は俺もいるから」
「だからだよ!!」
全力でお断りさせていただいた私でした・・・。
to be continued...
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