第14話 vs 責任感強め系リーダー

「ごめんね、手伝ってもらっちゃって」

「いいって、いいって」


出席番号34番、道引みちびきすすむ


「それ、そこに置いといてくれればいいから」

「ん、オッケー」


ウチのクラスの学級委員長。委員長を誰がするか、というのはクラススタート当初、割と大きめの問題なんだけど、ウチの場合はなんてことない。率先して道引さんがしてくれるから。彼女、高校に限らず、小学、中学からずっと委員長をしてきてるみたいで、あだ名もそのまま委員長になっている。しかし、よくもまぁ、面倒くさそうなことをやるもんだ・・・。ありがたいけど。


「よし。ありがとね、堤さん。御陰で助かったよ」

「いやいや、これくらいね」

委員長は知らないだろうけど、私、最近いろんなことやってるからね・・・。ホント、ただ書類を保管室に運ぶだけなんて序の口だよ。

「・・・でも、私ここに初めて入ったよ。いっぱい本やら資料やらがあるんだね」

「そうね、私たち委員会関係は結構使うんだけど、一般生徒には縁無いかな」

「へぇ~」

委員会の仕事を少し垣間見たところで、部屋を出ようしたときだった。

「あ、ちょ、ちょっといい?堤さん・・・」

「ん?」

「実は折入って相談があるんだけど・・・」

「相談?委員長が?珍しいね」

「時間あるかな?」

「うん、いいよ」

まぁ、クラスで唯一の常識人って言ってもいいだろうから、妙な相談はされないでしょ。


「じ、実はね・・・」

私たちはそのまま保管室の椅子に座って、テーブルを挟んで相談に乗る。委員長はそのしっかりとした性格から、多くの人に相談を受ける立場だ。そんな人から相談される、って、不思議と嬉しかったりする。

「そ、その・・・」

・・・それにしても、さっきから歯切れが悪いな・・・。ハキハキしてる委員長らしくない。何かモジモジしてるし・・・。

「は・・・」

「は?」


「初体験について具体的に教えてくれないかな!?」


「・・・は?」

初体験ってつまり・・・。せっ・・・。

「って、はぁぁ!?」

委員長、あなたもなの!?あなたもそっち側の人間なの!?私のさっきの思考思いっきりフラグだし!!

「ご、ごめん。戸惑うのは至極当然なんだけど・・・」

「う、うん、ちょ、ちょっとびっくりした・・・」

あ、でもきちんと謝るあたりは委員長だし・・・。きっと、何か事情があるんだよね、聞いてあげないと・・・。

「は、初体験、だっけ?」

「うん、そう・・・」

「初体験って、つまり、あれだよね・・・。あの、あれだよね・・・」

「うん、その、それ・・・。ベッドの上の・・・」

「あ、うん、分かった、だよね・・・。な、何で?」

「私って、たまに同級生の相談とかにのってるんだけど、この前、『彼氏と絶対に失敗しない“初めて”のやり方教えて』って相談されて・・・」

どんな相談だよ・・・。あ、私、人のこと言えないや。

「でも私、自分のみさおなんてまだ誰にも渡したことなくて、そういうことに関しては全然知らなくて・・・」

操、って・・・。言い回しが古いような・・・。

「くぅ、あの時程自分の力不足に無力さを感じたことはないよ・・・!」

「いや、大丈夫だから。絶対そこまで気負わなくて」

委員長、真面目なのはいいんだけど責任感が強すぎなところがあるんだよなぁ。そこは適当に受け流してもいいのに・・・。

「だから、経験豊富そうな堤さんに相談したくて!」

「なるほどね。それで私に白羽の矢が・・・じゃないよ!!!え、何で私!?」

「え?だって、堤さん、最近男女問わずに手玉に取ってる、って噂だから・・・」

「いや違う違う!何そのデマ!」

別に私は巨乳の胸を揉んだり陸上部を縄で叩いたりラグビー部の頭にかかと落とししたりしてるだけで・・・って、あれ?これ十分まずくない・・・?

「デマなの?それにしては汗すごいけど・・・」

「こ、これは、ちょっとこの部屋が暑いだけだから!!とにかく、私だって委員長と変わらないって!その、私もほら、まだだし・・・」

この間も自分の未経験を言ったばかりなのに、また言う羽目になるとは・・・。

「あ、そうだったんだ・・・」

・・・あれ?ちょっとがっかりさせちゃったかな・・・。一応、私のことを頼ってくれたんだもんね・・・。

「ごめんね、力になれなくて・・・」

私は一応謝る。

「ううん、謝らなくていいよ。こっちこそごめんね、変な疑いかけちゃって・・・。でも良かった!堤さんがまだで」

「え?」

「相談受けたときも、堤さんの噂聞いたときも、もしかしたら私だけが遅くて、みんなもう終わってるのかな、ってちょっと不安になっちゃってたから・・・。そうだよね、みんな、まだだよね!」

「委員長・・・」

あぁ、やっぱりこの子常識人だよ~!最近は本当にもう、非常識ばっかりだったから、こういう子がいてくれると助かるなぁ~。今回は久しぶりに平和に終わ・・・。


「だったらさ!今度の休み、いっしょにビデオ屋の暖簾のれんの向こうに行ってみない?」


「何でそーなる!?」

もうすぐでエンドロール流れそうだったのに!ここから番狂わせ!?そんなちょっと遠くへみたいなノリで言わないでよ!

「私ね、まだまだ甘かった。この前の相談でまざまざと感じたよ・・・。実際に経験する必要はないとしても、ここは委員長として、もっと見識を広めておかないと!」

「いやいらないよ、その責任感!!ていうか、私たちまだ高校生だよ?18歳未満は入れないし・・・」

「大丈夫。私も堤さんも童顔じゃないし、何も言わなければ大人に見えるから」

「年齢詐称する気かよ!?」

そうか、委員長って、目的の為ならルールなんて問わないタイプかぁ・・・。

「私一人だとどうしても心細くて・・・。お願い、堤さん」

「そりゃ私だって恥ずかしいし・・・」

大体女の時点であれくぐるの男の何倍も勇気いるし、それに女二人でアダルトコーナーって相当目立つんじゃないの?それこそ同級生に見られたらおしまいだよ・・・。

「あっ!私の操あげるから!」

「いらねぇよ!!」

名案思いついた、みたいに言わないでよ!


* * *


「そっか・・・。まぁ、仕方ないか・・・」

ふぅ、やっと諦めてくれた・・・。長かったな・・・。

「別にさ、他の人に見られるのが恥ずかしいなら、ネットで調べればいいじゃん。今はちょっと調べれば大量に出てくるよ」

「でも、ウイルスに感染されたら困るし・・・」

「あ、そうだね」

やっぱそこらへんはしっかりしてるなぁ・・・。

「・・・ねぇ、堤さん」

「うん?」

「見たことあるの?そういう動画」

「へっ?」

「私、さっきの理由でネットでは危ないサイトに入らないから、そんな動画今まで見たことないんだよね」

・・・あ、これ地雷踏んじゃった説・・・。

「でも、堤さんの言い草だと、あるんだよね?」

目、きらきらさせてるんですけど。好奇心旺盛な子供のそれなんですけど!?

「い、いや、あるっていうか、ほんのちょっと、お触りくらい、・・・だよ?」

「ねぇ!教えて!具体的に子作りってどうしてるの!?」

「ど、どうって・・・。委員長だって操云々言ってるんだから、知ってるでしょ!?」

「でも所詮保健体育止まりだから!お願い!」

「あ、いや、その・・・」


その後、赤裸々に細かいところまで発言させられた私は、以前、何で興味本位でアダルトサイトに足を踏み込んでしまったのだろうと、猛烈に後悔したのだった。


to be continued...

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