第13話 vs 親密系幼馴染

「柳田ぁ!!」

「・・・うおっ、びっくりした・・・」


出席番号13番、竹馬ちくば智大ともひろ


「・・・って、あれ?智大?」

「何してんだ、お前・・・」


幼馴染。小学生、中学校、高校と当たり前のように同じ学校に通っている。家族の付き合いも深いから、昔からしょっちゅういっしょに遊んでいた。山石井くんにも言ったけど、もう距離が近すぎてきょうだいみたいな感じで、お互いに恋愛感情は無い。気持ち的には私が姉かな。


「何、って、そっちこそ・・・。ここ、科学部の部室じゃん。何で部員じゃない智大がいるの?」

「別に・・・。たまに遊びに来てんだよ、柳田とは仲いいからな」

「あ、そうだった!柳田くんは!?私、彼に言いたいことあってここに来たんだから!」

「あいつなら用があるとか言って、今はいないぞ。まぁ、いずれ帰ってくると思うが」

「はぁ?あの泥科学者ぁ~」

上手いこと私から逃げてからに・・・。

「何があったんだよ?」

・・・まぁ、扉をばんと開けて、柳田なんて叫んで入ってきたんだから、気にならない方が無理あるよね。柳田くん待つついでに、智大と話すか・・・。


「いやね、ほら、音無さん、っているでしょ?」

「ああ、あの内気な子か。心なしか、最近は少し明るくなったように見えるが」

「そう!実はこの前、しずちゃんと一悶着あったんだけど・・・」

「一悶着って・・・。大丈夫だったのか?」

「あ、違う違う、そんな大事じゃなくて、ちょっとしたトラブルというかね。それでね、その時、しずちゃんが飲み物飲んだの!そしたらあの子、目をとろんとさせて私に迫ってきちゃって・・・」

「何だよ、それ・・・。何飲んだんだ?」

「媚薬だよ!もしくは惚れ薬!それを作ったのが柳田くんだっていうもんだから、今日直接会って文句言ってやろうと思って!」

「別に、わざわざ部室来なくても、同じクラスなんだから教室で言えばいいのに」

「私だってそうしたかったけど、あいつ、今は忙しいとか言って取り合ってくれないんだもん!あんまりしつこいのもあれだし・・・」

「あいつ呼ばわりかよ」

「いや直接現場見てない智大には分からないと思うけどさ、結構ピンチだったんだよ、私!苦言の一つくらい言ってやらないと・・・」

「それで、直接ここに来た、というわけか」

「うん、放課後はここにいる、っていうから・・・。そしたらいないし・・・。ホントもう、振り回されっぱなしだよ・・・」

「まぁ、柳田はそういう奴だしな」

「智大も悪いと思うでしょ?怪我の功名で、今回は上手くしずちゃんに働いてくれたけど、一歩間違えたら私もしずちゃんも何か大事なものを失うところだったんだよ?」

「まぁ、それは災難だったと思うが、もし本当に惚れ薬があるのなら、欲しいと思わないでもないがな・・・」

「・・・む。なに、智大は柳田くんの援護に回るわけ?」

「援護っていうか、好きな女を振り向かせたい、っていう気持ちは誰にだってあると思うが・・・」

「え?」

「あ」

智大は口を滑らせた、みたいな感じの顔をする。でも、私は見逃さない。

「えっ、好きな子?智大、今好きな子いるの?え~誰ダレだれ!?私の知ってる子?」

「えらくテンション上がってるな・・・」

「だって気になるじゃん!教えてよ~」

「嫌だよ。小っ恥ずかしい」

「えぇ~?じゃあヒント!どんな性格の子?」


「・・・そうだな・・・。面倒見がよくて、みんなに優しい。おかしいと思ったことにはきちんとつっこめるしな。ただ、その分八方美人というか、誰にでも関わってあげる断れない性格でもある。俺としては、少しは断ってもいいと思うんだけどな」


・・・んん?そんな子いたっけ・・・。私の知らない人なのかな?

「へぇ、しっかりした子なんだね!私も会ってみたいなぁ」

「・・・何でここまで言って分からないんだよ・・・」

「ん?何か言った?」

「いいや、何でもないよ」

「とにかく頑張りなよ!私、応援してるからさ」

私は純粋に背中を押したつもりだったんだけど、智大はとてつもなく大きなため息をした。

「はぁ・・・。何で伝わらないかなぁ・・・」

「ああ、その子、いわゆる鈍感なんだ・・・。大変だね・・・」

「・・・はは、ホントにな・・・」

なかなか難しそうだなぁ、その女の子に気持ち伝えるの・・・。でも智大に好きな人、か・・・。実際に智大に彼女ができたら、私、どう思うんだろ。


「よう、帰ったぞ」

私が気軽に話を楽しんでいると、がららと科学室の扉が開いて、今日の私の目的が入ってきた。

「あ、柳田くん!」

「おぉ、堤くん、どうかしたかね?」

「おぉ、じゃないよ!分かってるでしょ、私が聞きたいこと!」

「音無くんのことかね」

「そう!結果的にはあの子の殻が破れたから良かったけど、しずちゃんになんてもの渡したの!?私、結構ピンチだったんだよ?」

「なに、ただの栄養剤だ」

「へっ、栄養剤・・・?」

「ああ、特殊なものに見せる為に、若干着色したがね。いずれも体には無害だ」

「で、でも、あの子、飲んだ瞬間に急に大胆になって・・・」

「プラシーボ効果、というやつだよ。要するに思い込みだ。あの子は変わろうという意思は持っていた。あとあの子に必要なものはきっかけだけ。だから私が一つ手を貸してやっただけだ」

「・・・そ、そうなんだ・・・」

あれ?なんか、これだと柳田くん、良い人みたいじゃない?私が何も分かっていなかった、浅慮な子みたいじゃない?

「・・・で、でも!私が押し倒されたのは事実なんだから!あのままじゃ、私もしずちゃんも危なかったって!」

「まぁ、女同士ならばさしては問題ではあるまい。なぁ、竹馬?」

・・・?何で智大に聞くの?ていうか、問題大有りだよ!!

「まぁ、どこの馬の骨とも知らない男よりはな」

なんか納得してるし・・・。

「して、お膳立ての方はどうだった?上手くいったか?」

・・・お膳立て・・・?

「いや、さっぱりだ。せっかく機会を与えてくれて悪いが、こっちがいくつかアプローチをかけても、標的はまったくの無自覚だよ」

「だそうだ。君の幼馴染も、なかなかに苦労しているみたいだな、堤くん」

「・・・え?あ、ごめん、一体何のことかさっぱりなんだけど・・・」

「・・・」

「え、なにその目・・・」

じーっと二人がやれやれと言いたそうに、私をまじまじと見つめる。

「これはこれは・・・、しばらくは望めそうもないな、竹馬」

「まったくだ」

「えぇ!?一体何のことを言ってるの~?」


to be continued...

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