第10話 vs 豊満系淑女
「肩凝っちゃって・・・」
「へぇ、肩凝るんだ」
出席番号32番、福世加奈子。
「あと、水に浮いちゃって・・・」
「へぇ、浮くんだ」
巨乳。
「どうすればいいかなぁ・・・」
「・・・」
「あれ?つつちゃん?」
「・・・し」
「し?」
「知ったことかぁぁぁぁぁぁあああああ!!!」
どっかーん。私は体を爆発させる。
「いや知らないよ、マジで知らないよ!というよりも贅沢だよ、贅沢ここに極まれり、だよ!どれだけ贅沢な悩みなわけ!?」
「そんなぁ・・・。見捨てないでよ、つつちゃん~。わたしぃ、本気で悩んでるんだからぁ~」
クラス一の巨乳。制服、って、生地も様式もしっかりしてるから、胸の大きさはあまり目立たないんだけど、それすら押しのける圧倒的存在感。前、体育の授業で持久走があったとき、偶然にも加奈ちゃんと並列で走ってしまったことがある。その時の格差社会を感じたときの空しさと来たら・・・。
「・・・ああ、世界って不公平だよね・・・」
「ちょ、泣かないでよ、つつちゃん!」
いや、私だってさぁ、何かこんなベタな感じで胸が大きい子に怨嗟の念を送りたくないけどさぁ!せめて自分が巨乳なことにプライド持ってほしいよね!それはもう神様からの贈り物なんだから!だったら私だって、あ、もう世界が違うな、って諦めもつくのに!!この子の場合、巨乳で困る~、みたいに思ってるし!それどれだけ敵作ってるか分かってるの!?
「・・・何かにつけて邪魔になること多いしぃ、服を選ぶのも苦労するしぃ・・・」
加奈ちゃんは加奈ちゃんで悩んでいるんだろうけど、ごめん、今回のことは全然可哀想だと思えない。
「それに何より恥ずかしいんだよぉ・・・。みんなに見られちゃうしぃ・・・」
「もうそれは宿命なんだよ・・・」
巨乳の避けられない使命なんだから・・・。
「うぅ~、こんな胸いらないよぉ~」
ぴくっ、私はその言葉に、猛烈に反応した。
「加奈ちゃん、そんなこと言っちゃだめ」
私は加奈ちゃんの両肩に手を乗せる。
「加奈ちゃんの体は、あなたの両親がしっかりと世話をしてくれた末のものなんだから。あなたのその大きな胸には、親の愛情が詰まってるんだから。そうでしょ?」
「・・・つつちゃん・・・」
「だからね、そんなに気にしないでいいよ。悩まなくていい。私はありのままの加奈ちゃんが好きなんだから」
たまに心底恨むけど。
「そうなの・・・?」
「うん、そうだよ!」
たまに心底妬むけど。
「そっか、そうだね・・・。ありがとう、つつちゃん!何か、元気出てきた!」
「そう?良かった」
私の心は折られまくりだけど。
「にしても・・・」
じーっと私は改めて彼女の胸を凝視する。・・・マジでかいよね、これ。
「ほんと、いいよねぇ・・・」
それは反射に近かった。最早、私は自分の手を抑えることができなかった。
「ひゃあっ」
「ここまでたわわだとさ・・・、需要ありまくりだよねぇ・・・」
私は思いっきり加奈ちゃんの胸を鷲掴みにした。
「あ、いたたた、ちょ、や、やめてよぉ、つつちゃん・・・」
やわらか・・・。なにこれ、ホントに私と同じ女・・・?
「・・・くれよ、少し」
「い、いや、わたしだって、できることならあげたいけど・・・、い、いたたっ!強くしないで・・・」
あげたい、って。余裕だよ。勝者の余裕だよ。持つ者から持たざる者への余裕だよ。
「い、いたい・・・けど・・・。んあっ・・・、つ、つつちゃん、上手・・・」
「あ、やめるやめる。上手とか言わないで」
気持ちよさげな顔しないでくれる・・・?最近私、テクニシャンのレッテル貼られかけてるんだから・・・。
「・・・わたし、今初めて大きな胸で良かった、って思ったかも・・・」
「いや、やめてよ!?なにそれ!?」
「・・・できれば、もっと求めたいかも・・・」
どんな快感だったんだよ!?
加奈ちゃんの申し出は丁重にお断りして、私は気になることを聞いた。
「でもさ、何でそんなに大きくなったの?」
「え?普通にしてたら・・・」
「それが一番困るよ!!」
普通ってなんだよ!?普通に生きてたらって何だよ!?だったら私だってもうちょっとあってもいいと思うよ?私だって至極一般に普通に健康的に生きて来たよ?『何で結婚できたの?』『え、自然の流れで』って言ってる女性ぐらい腹が立つよ!
「・・・はぁ、まぁいいや・・・。私もありのままでいた方がいいもんね」
それに、まだまだこれからだ、って可能性も・・・ある?もう高2だけど・・・。
「つつちゃん」
加奈ちゃんはぽんと私の肩を叩く。
「諦めないで」
「余計なお世話だよ!!」
止めろよ!終いには泣いちゃうよ!!てか、もう泣いてるよ!
・・・はぁ、何かものすごく空しい気持ちになった・・・。今日はもう帰ろう・・・。と思ったとき、加奈ちゃんが質問してくる。
「やっぱりつつちゃんも、胸はあった方がいいの?」
「そりゃあ、多少はね・・・」
私も年頃だし・・・。
「でも、伊都式くんが言ってたよ?つつちゃんはいい感じで胸が無いから、学校のモデルにはしやすい、って。だからそんなに気にしないでも・・・」
「・・・へぇ・・・」
「あ、あれ?つつちゃん・・・?め、目が座ってるけど・・・」
「別に?そんなことないけど?」
あの新聞記者、そういう理由で私に水着を着せたわけね・・・。
「ふふふ・・・」
「つ、つつちゃん、なんか怖い・・・」
私はぽきぽきと手を鳴らす。あいつ、いつまでも五体満足でいられると思うなよ・・・。
to be continued...
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