第7話 vs 腐り系生徒会

「・・・クソが」

「はい、クソとか言わないの」


出席番号20番、山石井やまいし佑樹。


「リア充死ね」

「死ねとかもだめ」


まぁ、何ていうか、わかりやすいよね。周りだけが青い春を順風満帆に過ごしているって考えて、世の中なんて知るか、みたいに思ってるタイプ。絶対思ってるほどみんな充実してないと思うんだけどなぁ。あと、全然関係ないけど、苗字の最後の井っている?っていっつも思う。苗字に文句言ってもしょうがないんだけど、山石、か、石井でいいよねって思ってしまう。最後の井は読まないし。


「白昼堂々いちゃつきやがって、見せびらかしてんじゃねぇ・・・。どうせ高校のときの彼氏彼女なんて殆どのケース破局に終わりやがるんだから、ハナから付き合うなってんだ・・・」

「いやそうかもしれないけど、抑えられない想いってあるでしょ」

「いちゃついてねぇ奴は奴で、『俺たち勝ち組だから(笑)』みたいに内心周りを見下してやがるんだろうが・・・。見下すぐらいなら、人前でいちゃついて恥を晒せってんだ・・・」

「え、舌の根も乾かないうちに意見変わってるけど」

「あー、喧嘩するほど仲がいいらしいよ、って円満なカップルに唆して、『お互いのこともっと知るために嫌なこと言い合おう?』みたいな展開にさせて、そのまま喧嘩しすぎて別れねぇかな・・・」

「望みが具体的過ぎるよ・・・」

「つーか、喧嘩してるカップルも最終的にはお互いが自分のことが悪かった、みたいに考え直してより仲睦まじくなるくらいだったら、最初から喧嘩なんてすんじゃねぇ・・・」

「さっきから願望が相反してるけど!?」

もぉ、青春ヘイトが凄すぎて、意味が分からなくなってるよ。なんか歌にして世間に訴えかけそうな勢いだな・・・。山石井くんの場合は、すぐに死ねとか悪い言葉使うのを直せばだいぶ変わると思うけど・・・。

「まぁ、付き合った奴ってのは結局現を抜かして気持ちがふわふわになって落ちぶれていくからな。学生の本分は勉強だろ?だったら、付き合うなんて愚かな行為なんてせずに、真剣に学業に取り組んだほうが将来にも役立つよな」

「まぁ、そうかもね。両立できれば一番なんだろうけど、なかなか難しいだろうし」

「あーあ、勉強なんてどうでもいいから付き合いたい」

「なんなんだよ!!」

最早情緒不安定かよ!!

「だいたいよ・・・」

あー、リミット外れちゃったな、これ。このままじゃ延々と続くよ、この愚痴が・・・。何か話題変えないと・・・。

「そういえば、山石井くん。今、生徒会は何してるの?」

「は?何だよ、急に」

山石井くんは、部活に入らず生徒会に所属している。役職は、会計だったっけ。

「何か気になって」

「別に、雑務をこなしてるだけだ。取り立てて言うこともない」

「ふぅ~ん。でも、何か意外なんだよね」

「俺が生徒会にいることが、か?」

「そう。無理やり入れられた、とかじゃないんでしょ?こう言うと悪いけど、山石井くんって生徒会っていうタイプに見えないからさ」

「まぁ、俺も男だからな・・・。一応、生徒会でやりたい野望みたいなのがあんだよ」

「野望?」

「まぁ大したもんじゃねぇがな。一つ、校則を作りたいだけだ」

「校則って?」


「恋愛したら死刑」


「横暴!!いや、横暴通り越して暴挙だよ!!国民から反対されるよ!!」

大したものじゃん!!違う意味で!!

「そうか?根暗男なら誰しもが賛同すると思うが・・・」

「しないよ、そんな規則!!アイドルですら恋愛したらクビで済むのに死んじゃってるじゃん!!」

「まぁ、女のお前には分からねぇよ」

いや、性別は関係なくない・・・?

「・・・堤、まさかお前もそっち側の人間とかいうんじゃねぇだろうな」

「なに、そっち側って・・・」

それ何か闇の中で生きる人みたいだから止めてくれないかな・・・。

「リア充なのか、って聞いてんだよ」

「ああ、つまり彼氏がいるか、ってこと?いないよ、別に心配しないでもさ」

「・・・竹馬ちくばとはどうなんだよ」

智大ともひろ?あいつはただの幼馴染で、別になんともないよ?お互い昔から一緒にいるからね、もう何も思わないっていうか」

「・・・でもあいつとはかなり仲良いんだろ?」

「まぁ、見る人によっちゃあ勘違いされるかもしれないけど・・・。確かに、あいつと一緒にいたら落ち着くし」

付き合い長いしね・・・。

「ふん、たまに竹馬が羨ましいと思うぜ・・・」

「え、何て?」

ぼそっと小さい声で何か言われた。よく聞こえない。

「何でもねぇよ・・・。ところで、何で俺なんかの話聞いてくれるんだ?」

「何で、って?」

「お前、俺みたいな口悪い奴、嫌じゃねぇのかよ」

「嫌だとか、一言も言ってないよ。ただ、それを直せば付き合えるかもよ、って思ってるだけ。それに、山石井くん、ずっと鬱憤を貯めてたら、いつか全然関係ない人に爆発させそうだし・・・。何か、ほっとけなくてね」

「・・・けっ」

あれ?山石井くんは、少しだけ嬉しそうに笑った。


「悪かったな、付き合わせて。そろそろ帰るか」

「ん、そだね」

「最後に一つ言っとくが・・・」

「なに?」

「俺みたいな陰気な奴は、すぐに心が揺らいじまう。だから、発言には気を付けておいたほうがいいぜ、小悪魔さんよ」

「へっ?」

「じゃあな」

「あ、うん、また明日・・・」


・・・?どういうこと?


to be continued...

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