第4話 vs 携帯イジリ系現代っ子

「おーい」

「え・・・?」


出席番号30番、能武のうぶ瑠璃るり


「私に言ってる・・・?」

「そ、キミに言ってる」


授業中、昼休み、食事中に至るまで、暇さえあれば携帯をいじっている、私から見ればTHE今時の女子高生、って感じ。私個人としては、携帯ばかりにのめり込む人は見ていてあまり気持ちの良いものじゃなくて、能武さんのことは、少し苦手としている。そんな彼女に、放課後の教室で話しかけられた。ちょっとすることがあったから教室に残っていたら、いつの間にかみんないなくなっていて、帰ろうと思った時だった。


「今から帰りかい?」

「う、うん、そうだけど・・・」

「何か用事ある?」

「いや、何も・・・」

ここで、嘘をつけないのが私だよなぁ・・・。嘘も方便っていうくらいだから、たまには嘘ついてもいいと思うんだけど・・・。

「そ、じゃあ、ちょっと付き合ってくれる?」

「・・・付き合う?」


彼女は私の席の隣に移動してきて、自分が持ってきた水筒を鞄から出す。何で持ってるか知らないけど、紙コップも出してきて、私にお茶を注いでくれた。

「はい、とりあえず飲んでいいよ」

「あ、ありがと・・・」

「はは、そんなに警戒しなくても大丈夫だって。下剤とか入ってないから」

・・・妙にリアル・・・。そこは毒とか入ってないって言われた方が飲みやすかったんだけど。ていうか、別にわざわざ言う必要ないよね・・・。え、何か入ってるの?

「心配なら、ウチが先に飲もうか?」

「あ、いやいや、大丈夫・・・」

冷静に考えて、入ってるわけないよね・・・。


「何でウチが話しかけたんだ、って顔してるね」

「・・・まぁ・・・」

私は正直に答える。だって、ほとんど喋ったことないし・・・。

「キミ、ウチみたいなタイプ苦手でしょ?本当に嫌なら、適当に言って誘い断っても良かったのに」

「でも、折角話しかけてきてくれたし・・・。私も能武さんのこと、何か分かるかもだし・・・」

人が苦手、っていうのは、大体が食わず嫌い、つまりは見た目で判断していることが多い。だったら、関われば印象も変わるかもだし。

「ふぅん、キミ、いい人だね」

にこっと能武さんが笑う。まだ掴めないなぁ・・・。

「そ、それで?どうして話しかけて・・・」

「うん?理由がなきゃ、話しかけちゃ駄目かい?」

「駄目ってわけじゃないけど・・・、何かあるんだろうな、って思って」

「そうだね。ま、無いこともないんだけど、単純に堤さんと話してみたい、って思ったのもあるんだよ。ウチ、堤さん、イケるから」

「イケるぅ!?」

って、どういうこと!?

「可愛らしいし、活発だし。結構タイプなんだよね、ウチ」

「い、いやっ、タイプって・・・。お、女だよね!?」

「なにさ、今日日、同性婚なんて珍しくないじゃない」

「け、結婚!?」

話飛びすぎ!てか、女にタイプって言われたら、こんなに危機感を覚えるものなの!?

「ははは、冗談だよ、面白いリアクションするねぇ、キミ」

「じょ、冗談って・・・」

どっちが・・・?結婚の方が、それともタイプの方が・・・?願わくば両方で・・・。


「さて、そろそろ本題に入ろうかな。キミはウチのこと、携帯ばっかりいじる奴、って思ってるでしょ?」

「う、うん・・・。だって常に持ってるし・・・」

「何してると思う?」

「何・・・?SNSとか・・・?」

「まぁ、そうだね。それもしないことはないけど、ウチ、小説書いてるんだよ」

「小説!?」

い、意外・・・!てっきりツイッターとか2チャンネルとかやってると思ってたのに・・・。あれ、でも・・・。

「確か、部活、科学部じゃなかったっけ・・・?」

「ん、良く知ってるね」

私は人の部活動を覚えるのが、少しばかりの特技だった。

「文芸部とかじゃないの・・・?」

「小説っていうのは、ネタの採集がキモだからね。科学部の方がいろいろ転がっているかな、って思ってさ」

「へぇ・・・」

変わった理由だなぁ・・・。

「それでね、自分の書いた小説を見せるっていうのは、自分のお尻の穴を見せるようなものって聞いたことある?」

「お、お尻っ!?」

いや、ないけど・・・。

「ウチ、ネットで小説公開してるから、その話通りにいくなら、ウチは世界中で肛門を公開している、ってことになるわけだよね」

「・・・そ、そうかな・・・」

そんな恥ずかしいこと、よくすらすら言えるなぁ・・・。

「でも、どうしてもその二つが同義だって思えなくてさ。だから・・・」


「今から、ウチのお尻の穴見てくれない?」


「ぶーーーーっ!!!」

口からお茶を思いっきりこぼす。ごほごほと咳をする。

「な、なに言ってんの!?」

「え、だから、ウチの・・・」

「いや、そうじゃなくて!!何で見せようとするの!?」

「一回でも見せたら、どんな気持ちか分かるでしょ」

「だとしても!!私で試さないでよ!!」

「あれ、そうかい?キミだからこそ、なんだけど」

「えっ、わ、私だからこそ・・・?」

って、なに不意にどきっとしてるの私・・・。

「いいかな、堤さん」

「え、えぇ・・・?」

能武さんは私の答えを待つことなく、スカートの中に手を入れて、下に履いているショーパンを脱ぎ始める。

「あ、いや、ちょっ、ホントに・・・」

ホントに見せるの・・・?この人、イメージと違いすぎるんだけど・・・。

「や、やめっ・・・」


「ふふ、あははははっ」

「・・・へ・・・?」

「なんてね。可愛いね、顔真っ赤にさせちゃって」

「・・・はひ・・・?」

「ごめんごめん、最近新しい小説書き始めてさ、その登場人物に関するリアルな情報が欲しくて」

「リ、リアル・・・?」

「そ、どんなリアクションするのかな、って」

「じゃ、じゃあ、今までのは全部・・・」

「うん、全部小説に関するネタ集め。ごめんね、困らせちゃって」

「・・・全然反省してないよね・・・」

にやにやして楽しんでたし・・・。

「ま、キミも演技に気づけなかったんだし、楽しかったでしょ?」

「楽しくないよ!身の危険を感じたよ、リアルに!」

ていうか、下剤入れたり、女子が女子に好きって言ったり、挙句の果てにはお尻を見せたりするって、どんな小説・・・?レズもののR18を書いてるの?


「・・・ふぅ、何か疲れて怒る気にもなれないよ・・・」

「ごめんって。ウチはもう少しここにいるけど、キミはどうする?」

「帰るよ、もう・・・」

私は少し機嫌が悪いように出ていく。その時だった。


「あ、そうそう。ウチがキミのことタイプだっていうのは、ホントだよ」

「・・・ふんっ」


最後にまたそんなこと言って・・・。からかい上手の能武さん、ってこと?


to be continued...

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