12#フラミンゴとオオワシと風船

 「みなさーん!感激して泣いているところすみましぇん!ハクチョウの女王様がみんなをお呼びです!至急、湖そばの草原にきてくだしゃーい!」


 マガモのマガークは、上空からみんなを呼んだ。


 「ん?なんだってぇ?!ねえ行こうよランスウミキ!」


 母ハクチョウのチエミは、3姉妹を呼び寄せた。


 「何かなあ?何か美味しいものご馳走してくれるのかなあ?」


 「ここは、風船しかないから風船を食べるとか?」「げっ!」


 と3羽は冗談を言いながら、母ハクチョウについていった。


 「あっ!僕も!」


 息子ハクチョウのフッドもそこについていった。


 「じゃあ、おいらたちも。」


 タンチョウのリサとフラミンゴも行った後、残ってまだおいおい泣いていたのは、カラス達とオオワシのリック。そして父ハクチョウのユジロウだった。


 「あれ?誰もいないや・・・」


 「しまった!置いてけぼりくらった!」


 「さあ急いで後を追おう!」


 鳥達は、女王様に言われた集合場所の草原に行った。




 「女王様遅いなあ。」


 待ちぼうけの鳥達は、みんなヤキモキしていた。


 そこにガチョウのブンと、マガモのマガークがノコノコとやって来た。


 「ま、女王様はここで歓迎の儀式をするためにちょっとその準備で忙しいからここで雑談でも・・・ってもう始めてるし!」


 ガチョウのブンは嘴をあんぐりとした。


 「おーい!フラミンゴさーん!ずーーーーっと気になっていたんだけど、本当の名前聞いてなかったなあ。」


 タンチョウのリサは、そばで首をキョロキョロと動かしているフラミンゴに声をかけた。


 「おいら?あ、え・・・と、おいらの名前はショーって言うんだ。SHOWのショーだ。」


 「ふーん・・・ショーって言うんだ。」

と、フッド。


 「おいらは、ここからずっと南の方の人間の娯楽施設の“N川アイランド”で沢山のフラミンゴ仲間とフラミンゴショーをやっていたんだ。でもねえ、この“N川アイランド”が閉鎖されて・・・」


 「あらら・・・」


 「路頭に迷ったおいら達は、動物公園にまとめて引っ越すことになったんだけど、その動物公園でフラミンゴの翼の羽根が二度と飛べないように風切り羽根をむしられるのが怖くてさ、」


 「ひでえ・・・」


 「脱走出来る気配を見計らって、何とか飛び出したんだけど、如何せんおいらは超が付くほど方向音痴でさあ、もうあっちこっち。

 東西南北、古今東西。生まれ故郷はどっちだっけ?

 いろんな所を飛び回ったな。

 で、頼りになるは大海原を悠々と泳ぐシロナガスクジラだな。」


 「クジラあーーーーーーっ!きゃあーーーーー!」


 娘ハクチョウのスウは目を輝かて叫んだが、「しーっ!」と周囲に注意された。


 「大海原を渡るには、どうしてもシロナガスクジラさんのフォローが必要であ、何も無い海の上で羽根を休める時とか、大陸をナビゲートして貰うとか。

 そして、海を渡る暇潰しにクジラさんの海の話を聞かせて貰うんだ。」 


 「ふーん、で、どんな話?」

 

 チエミが相槌を打った。


 「おいらの心にグッと来たのは、海ガメが口からビニール袋だけでなく、大量の萎んで落ちたゴム風船を吐きだしたのを見たときだな。」


 「うわああああ!!!」


 みんなは、このことにどよめき出した。

 「更に、違うシロナガスクジラではズタズタに引き裂かれたセイウチの腹の中から、大量のゴム風船がが飛び出していたのには、おいらも・・・」


 フラミンゴのショーはここまで言うと、うっすらと涙がこぼれてきた。


 「すげえ惨い話を聞いたなあ・・・」


 ユジロウは羽根を畏怖で震わせた。


 聞いていたみんなも畏怖で声が出なかった。


 「ねえ、リック・・・」


 タンチョウのリサは、目配せをした。


 「そう思うと、本当に生きてて良かったよ・・・

 あの時・・・

 君が行方不明になった時・・・

 私は夜通し泣いていたよ・・・

 何でてここに?」


 「それはね、リサちゃん。」


 オオワシのリックはモジモジしながら後ろめたさに小声で言った。


 「それはね・・・俺・・・風船に恋してしまったせいなんだ・・・!」


 「ぷっ・・・!」

  

 娘ハクチョウのランは、思わず吹き出してしまった。


 「ぷははははは!!!!!!」


 やがて、今度は全員が笑い転げた。


 「しゃらーーーっぷ!」


 その時、タンチョウのリサのツルの一声が笑いが止まらなくなったみんなを黙らせた。


 「俺は本当に風船に恋をしてしまった。俺は誰も仲間はいなんだ・・・

 周りの奴らは何故か俺を軽蔑していたんだ。

 いつも決まって、

 『たかがワシでお高くとまってやがる』

 とかね。俺の親が余りにも獰猛で、ひどく嫌われていたので、そのツケが俺に回って来たというのかな?まあいいけど。」


 オオワシのリックがそこまで話すと、いきなタンチョウのリサが口を割ってきた。


 「で、リックさんが風船に興味を持ち始めたのが、北の森に黄色い風船が飛んで来た時。あの時はリックは周囲が嫌っているのに『風船!風船!』と興奮気味だった。」


 「うわ!そこ言わないで!」


 オオワシのリックは、翼で耳を塞いだ。


 「でも、リックは周囲の奴らを見た途端、引き返したんでしょ?」


 「そ・・・そう。」


 翼で耳を塞いリックはうなずいた。


 「で、私はその黄色い風船で森が騒動に参加したの。そのことを、高い木の上で怖気づいているリックに言ったら、更に

 『風船!風船!参加すりゃ良かった!』

 と興奮しまくってさ・・・」


 「うわー!そこまで言うの?!リサちゃん!」


 オオワシのリックは、殆ど赤面していた。


 「別の日、大きく膨らんだ風船が数個飛んでいるのをリックがみつけたとたん・・・」


 「そうです。俺は風船を見た興奮で、居ても立ってもいられなくなって、飛んでいる風船の束に突っ込んでいったんです。

 そしたら、翼が絡まって身動きが取れなくても俺は風船に見とれていて、気付けば北の大地はとっくに過ぎて、もうここはどこ状態になっていたんだ。」


 「それを降ろしたのが私なんだよリック君!」


 そこに現れたのが、マガモのマガークだった。


 「私が、オオワシに絡んだ風船の栓を1つずつ外してガスを抜いて降ろしたんだよ。」


 「で、紐を体から取り除いたのが僕。」


 今度は、ガチョウのブンが現れた。


 「リック君があの時、『チョイ右!』とか、『そこたぐりよせて!』とか『そこ切って!』とか指図してくれたから、紐取り除くのがやりやすかったんだよ。


 これが、後に女王様の召使いとしてリック君を採用したきっかけになるとは、知る由もなかった!」 


 ブンはおどけた。


 「それと、風船の匂いに敏感なゴムっ鼻も君を女王様の召使いに招待した理由なんだよ!」


 「ええ?そうかなあ?」オオタカのリックは嘴に付いている鼻の孔を翼で抑えてフンフンとしていた。


 「申し遅れたけど、俺達女王の召使いの単距離担当のガチョウのブン!移動動物園で、子供の風船を誤って食べて窒息しそうになったことがありまーす!」

 「私は中距離担当のマガモのマガーク!左脚に長年風船の付いた紐をぶらさげて生活してきましたぁ!」


 「そして、長距離担当のオオワシのリック!自己紹介は今さっきやったから、以下省略!」


 「3羽揃って・・・えーと・・・名称考え中!」


 「あららー!」


 聞いていた全羽はズッコケた。


 「私達は、この身の回りの世界から風船によって危害が加わったり命を落とす鳥仲間を減らすために、

 風船が大好きだから、

 風船との共存の為に、

 風船のせいで飛べない体になっても、風船が大好きな女王様のために、飛んでる風船や道端や山林に落ちてゴミと化した風船を拾っては女王様に献上をするのが任務でぇーす!!」


 「お~頑張れ!」


 「やんややんや!」


 カラスのカースケとカーキチは、3羽の召使いに翼で拍手を送った。




 「みんなぁーお待たせぇー!今から歓迎の儀式始めちゃいままーすっ!」


 萎んだ風船をいっぱい嘴に銜えて、オオハクチョウのメグ女王様がのそっつとやって来た。

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