11#ハシボソガラスの嘴の風船
「カーキチが・・・!おいらの相棒のカーキチが・・・!」
ハシボソガラスのカースケは、涙でぐしゃぐしゃになった顔で泣き喚いた。
「お前らはあの時、青い風船を嘴で割ろうとしたカラスどもだな!それにその時俺のフッドを・・・」
「やめてよ父さん!僕、あの時父さんが叱ったでしょ?」
息子ハクチョウのフッドは、父ハクチョウのユジロウをなだめたが、更に最悪の自体になった。
そこに、フッドを襲ったオオワシのリックがやって来たのだ。
「オオワシさん!!良いところに来た!俺のカーキチを・・・」
「どけ!!」
父ハクチョウのユジロウの声色が荒くなっていた。
「やめてパパ!!オオワシさんを責めないで!僕を・・・・僕の脚を救ってくれたんだ・・・!」
「うるさい!!」
父ハクチョウのユジロウは既に我を失い、息子のフッドを蹴り倒した。
バシッ!!
母ハクチョウのチエミは翼で激しくユジロウの顔を叩いた。
「ユジロウさんの馬鹿!あなたは何考えてるの!?
カラスやオオワシがあなたの息子さんに危害を加えたという思い込むのは勝手だけど、息子さんまで八つ当たりしてどうするの?
あなたは憑かれてるわ!いい加減眼を覚ましなさい!それに・・・」
チエミに叩かれてもんどりうったユジロウは、そう言いかけて涙をためてうつむくチエミに茫然とした眼差しで見つめていた。
オオワシのリックは、カラスのカーキチの風船が複雑に絡んだ嘴をまじまじと確かめた。
「あーこうなって、こうなって、斯う来るのね。ハイ分かった。ちょっと痛いけど我慢してね。」
リックは、割れた風船を銜えてそっと絡まった部分をたぐった。
「うーん・・・複雑に絡んでるなあ。ちょっと紐切るよ。」
リックは、嘴と脚の爪を器用に使って風船の紐を切って再び紐を手繰り寄せた。
その作業は慎重に慎重を重ね、やがて・・・
「よし!風船は嘴から取れたぞ!カーキチとやら、ちょっと嘴を動かしてみな?」
「こう・・・あっ!嘴が動いた!風船と紐がが邪魔で口を開けられなくて・・・何も食べられなくて・・・」
カーキチは、感激の余り涙声になっていた。
「どうしてもうなったの?」
オオワシのリックは、カラスのカーキチに聞いてみた。
「俺・・・飛んでいるこの赤い風船を嘴で割ろうとしたら、いきなり突風が吹いてきて・・・
どんどんどんどん俺の嘴に風船が煽れてて・・・どんどんどんどん紐が嘴に・・・俺の落ち度だったのに、本当に・・・ありがとう・・・!」
ハシボソガラスのカーキチは、オオワシのリックに翼で抱きかかっておいおいと泣き始めた。
「ごめん・・・!ごめん・・・!
ごめんよ・・・!オオワシよ・・・
カラスよ・・・!疑って・・・
ごめんよおおおおおおおおお!!オオワシ!女王様から聞いたよ!脚の絡んだ風船取ってくれたんだってな・・・!
俺の大事な息子をを助けてくれてありがとうなああああ!!本当に!本当に!ありがとうな!!」
そこにいきなり父コブハクチョウのユジロウは、2羽を羽根で覆いかぶさように抱きかかえ、大粒の涙を流して大声で泣き喚いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます