8#ハクチョウの女王様
破裂した青い風船の破片は、とある大きな湖のそばに落下した。
「おんや?また割れた風船が墜落したんか。早く拾って女王様に持って行こう。」
この湖を司る女王様・・・オオハクチョウの女王様のメグの召使いのガチョウ、ブンは岸から上がってヨタヨタとお尻ふりふり割れた風船が墜落したと思われる場所に急いだ。
「早く見つけなきゃ、また女王様に怒られて羽根で『ペシペシ』されるからなあ・・・!全くどこに風船が墜落したんだろ・・・あ~あ、僕も飛べたらこんな苦労しないんだけど・・・」
ガチョウのブンはひとりごとをブツブツ言いながら、太い嘴で草原を弄り探した。
大空にはブンと同じ召使いでマガモのマガークが旋回して、やって来た。
「お~い!ブンちゃん!割れた風船見つかったの?」
「マガークちゃん!ブンちゃんじゃなくて僕は『ブンチョウ(文鳥)』なんだけど。」
「ぷっ!『文鳥』がこんなに図体でけえかよぉ~!」
マガモのマガークは、先々で回収した割れたいっぱいの風船を嘴から落ちないように気にしながら笑った。
「いいぢゃないか!!僕はガチョウの格好をした文鳥なの!!・・・ん?
・・・あったあ!!しかし、この風船は高度がかなり揚がったとこで気圧で膨張してパンクしたなあ。破片がチリチリになってらあ!ゴムの匂いもだいぶ時間が経過した状態のキツい匂いだ。」
ガチョウのブンは、拾った割れた風船に嘴についている鼻の穴を近づけて言った。
「ブンちゃん!風船の見分けを付けられるなんて、やっぱり女王様にお目にかかっただけあるねえ!」
マガモのマガークはガチョウのブンにヨイショした。
「それ程でも・・・!で、マガークちゃんはこの集めてきた風船の見分けつくの?」
「当たり前でしょ!?例えば、このオレンジ色の風船は木の枝に接触してすぐにパンクしたようだな。まだ新鮮なゴムの匂い・・・」
「そこ!無駄話する暇あったら集めてきた割れた風船を渡して、もっと私の風船見つけて来なさい!!」
オオハクチョウの女王様は、どや顔をして会話をしていたる2羽に怒鳴った。
「はいっ!すみません女王様!!今回収してきた風船を持って来ます!」
2羽の召使いは、女王様に回収してきた風船を献上して一目散に元の持ち場に行った。
女王様の前に持ってきた割れた風船は共に、どこかしらから飛んできてヘリウムが抜けたり大気の変化で膨張破裂して墜落した風船だった。
2羽の召使いも、風船がどんな状態でパンクしたか分かる目利きをもち、尚且つ鼻が犬をも凌ぐゴムの匂いに反応する嗅覚の持ち主だった。
オオハクチョウの女王様のメグは、早速召使いが持ってきた風船を調べた。
召使いガチョウのブンが持ってきた、チリチリになっている青い割れた風船を見つけた。
「こ・・・これはっ!!」
「えっ!?」
「私が膨らました風船だ!」
「えっ・・・あっそうだ!」マガモのガーコは思い出した。
マガモのマガークは、割れた青ざめ風船の記憶をたどってみた・・・
マガークが落ちてる風船が見あたらず、街中の道端のゴミ箱から捨ててあったイベント配布で要らないと、人間が膨らんだ状態で捨てた青い風船をマガークが気合いで拾い上げて、萎ませて献上した時に
「何かまともな風船ね!」
と、女王様が思い切り青い風船に息を風船に吹き込んだ。
「また女王様のお気に入りの風船膨らまし割りが始まるよ・・・!」
ガチョウのブンは必死に翼で耳をふさいだが、マガモのマガークは目を輝かせた。
ふぅーーーーーーーーっ!
ふぅーーーーーーーーっ!
ふぅーーーーーーーーっ!!
ふぅーーーーーーーーっ!!
ふぅーーーーーーーーっ!!・・・
ハクチョウの女王様はめいいっぱい頬をパンパンに膨らませ、顔を真っ赤にしてゴム風船を膨らませても、女王様の気品どころか、美しさまでかもしだしていた。
ハクチョウの女王様に思わずうっとりしていた、マガモのマガークは、
「風船膨らましてるとこ、すいませーん。」
「誰に言ってるんだよ・・・!」
ゴム風船を一生懸命に膨らましているところを邪魔されて、ハクチョウのメグ女王様はムッときた。頬を膨らませたままだったので、怖さが際立った。
「あの・・・いつもお美しい女王様!!」
「なあんだい♪」
メグ女王様は、ニッコリと微笑んでガーコを向いた。
「あの・・・この膨らませてる風船・・・割れるまで膨らませてるんですよね・・・どうせ割るんなら、ぼ・・・わたしにくれませんか?」
「それって、か・・・間接キッス!?」
ガチョウのブンは、ニヤニヤした。
「うるせえ!!」
マガモのマガークは、ガチョウのブンに脚の鰭キックをお見舞いした。
「ええっ!!風船飛ばさないでね・・・!」
「はい!?普通、嘴で膨らませた風船は飛ばないんでは・・・」
マガークは、ヘリウムガスより重い二酸化炭素の息を吐いて、半信半疑になった。
「飛ぶよ♪あたしの息はそんじゃそこらのハクチョウと違って、軽いのよ♪ぷぅーーーーっ!!」
メグ女王様は、更に青い風船を大きく膨らませた。
「わー!!割れちゃう!!割れちゃう!!」
ガチョウのブンは、翼で頭を押さえて怖がった。
「このくらい膨らませばいいかな。」メグ女王様は、嘴と舌を巧みに使って、風船の吹き口を縛った。
「はいっ!!風船!あっ!!紐ひも♪」
メグ女王様は、風船の結んだ吹き口に、嘴と舌で他の割れて拾った風船から流用した紐を縛った。
「はいっ!!風船!」
「あ、ありがとー・・・わっ!!わっ!!わぁーーーーーーーー!!」
メグ女王様から嘴渡しで受け取ろうとした、マガークは、興奮しすぎて慌てて嘴をすべらせた。
するりとお互いの嘴から、風船の紐が抜け出してふわふわと空中に舞い上がった。
マガークは青ざめた。
どんどん上空高く飛んでいく風船に、あっけにとられたマガークに、メグ女王様の激がとんだ。
「何してるのよ!!飛んでいって、風船を捕まえなさい!!」
「は、はいっ!!」
しかし、女王様が膨らませた風船は浮力が強く、マガモのマガークの翼ではいくら何でも追い付けなかった。
どんどん飛んでいく青い風船に、絶望したマガークはどうすることもできずに、メグ女王様に謝りに諦めて舞い戻ってきた。
「じょ・・・女王様・・・!せっかく膨らませてくれた風船を飛ばしてしまって、す・・・すいませんでした!!」
「うるさい!」女王様は、マガークの頬を大きな翼で思いっきり引っ叩いた。
「この風船で、他の飛んでいる野鳥に迷惑かかるだろうが!お前では当てにならないから、他の召使いにお前の尻拭いをしてもらうことになったからな!」
「だ・・・誰ですか?!」女王様の強烈なビンタに涙が出る程痛がるマガークは、震えながら言った。
「新入りのオオワシのリックだ!翼も目も鼻もお前より信用できるから、お前は・・・」
「ひいいっ!」
「落ちている風船をもっと拾って来い!」
「は・・・はいっ!!すいません女王様!!反省します!!」
「でも、誤って飛ばしたこの風船が、他の野鳥に危害は加えることもなく、上空で破裂して落っこったんだから結果オーライですよねえ、女王様。でも、女王様の吐息は不思議ですねえ。あたしの息で膨らませしてもこの風船全然浮かないし、羨ましいわ。」
マガモのマガークは、この前拾った萎んだ状態で道端に転がっていたオレンジ色のゴム風船を、あの青い風船のことを思い出しながらパンパンに嘴でぷぅーっと膨らませて、嘴と舌で吹き口を縛って地面に置いてみた。
「あーっ!!言ってる間に!女王様と間接キッスかよ!!」
ガチョウのブンは、割れた青い風船の結んだ吹き口にくわえていた。
「どうだあ!ぶちゅぶちゅ!」
ブンはニヤニヤして、メグ女王様が膨らまし飛ばした風船に口付けをしていた。
「この風船どこを飛んできたか分からないのになあ。人間の工場のスモッグとか?」
「ぶっ!!」
「それより、あたしの膨らましたこの風船をあげるわ!!」
「お断りだ(ニヤリ)だって、お前の息臭いもん!!」
「んまあっ!?」
ガチョウのブンの発言に憤慨したマガモのマガークは、ブンの目の前で、そのオレンジ色の風船に思いっ切りのし掛かり、
パァン!!と破裂させた。
「あひゃあっ!!」
風船は好きなのに割れる音が大の苦手なブンは、仰天して退けぞった。
「マガーク!!ブン!!今さっきから何してるんだい!!こんな暇があったら、さっさとまた落ちてゴミになってるゴム風船を探して来たらどうだい!!」
オオハクチョウのめ女王様は、2羽に渇を入れた。
「はいっ!!分かりました!!・・・あっ何週間待ってだよ!オオワシが帰ってきたよ!!がーがー!!」
マガモのマガークは、プンプン不機嫌な女王様に大声で報告した。
「おーい!!オオワシぃ!!リックぅ!!リックぅ!!ここだよーーーーーーーー!!がーがーがーがーがーがー!!」
ブンは、ガチョウ特有のやかましい鳴き声を揚げて、上空に舞っているオオワシのリックに呼び掛けた。
「全く、風船が割れる音は怖がるくせに、自分自身がうるさい声で・・・。」
マガモのマガークは、嫌味にボソッと言った。
「今さっき何て言った?」
「何でも無いよっ。」
「おおっ、マガークだ!!ブンもいる!!女王様だあ!!おーい!!帰ってきたよーーーーーー!!」
「リックぅーっ!!後ろに着いてきてる奴は誰だぁー!!」
メグ女王様は、オオワシのリックに聞いてみた。
「こいつは、脚に風船の紐が絡み付いたコブハクチョウの子供です!」
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