9#湖の再会
「ここはどこだ!?何だかゴムの臭いがする泉だなぁ・・・。」
コブハクチョウのフッドは、この不思議な湖を見渡した。
フッドの左脚にきつく絡み付いたピンク色の割れた風船は外れ、跡に青い痣がくっきりと残っていた。
上空でオオワシに出会った時、そのオオワシのリックが脚の風船を取り除いたのだった。
オオワシのリックは、コブハクチョウのフッドを襲ったのではなく、フッドを助けたのだ。
「なあ、フッドとやら。もしこのまま風船を脚のに絡ませたままだったら、絡んだ紐で脚の血管は圧迫されて化膿して、最悪そこから腐って脚がもげるんだぜ・・・
だから『これは僕のアクセサリーだ』と主張する気はわかるが、現実を見ろ。そしてひとのいうことを聞け。分かったか!?」
リックは、後ろから着いてきてるフッドに言い聞かせた。
フッドの脚の紐の跡がまだ痛むが気持ちは清々しかった。風船が脚から取れた時、フッドの中で何かが吹っ切れたのだ。
オオワシのリックとコブハクチョウのフッドは、湖のそばの草原にオオハクチョウの女王様達を見つけると、お互い着陸体制に入った。
「おーい!!みんなー!!待たせてごめんなさぁい!!」
リックは、上空から女王様達に呼び掛けた。
そしてリックは素晴らしく大きな翼を拡げ、空気抵抗を制御・・・と思いきや・・・
「おっとっとっとっとっと!!」
ドタッ!!
リックは、ずっこけて軟着陸した。
「ぷぅーっ!!くっくくく。リックは相変わらずだな!!」メグ女王様は無様なオオワシのリックに思わず吹き出した。
その後ろで、コブハクチョウのフッドが着陸しようと、鰭脚をかざした。
「ぐうっ!!」
風船の紐が絡んでいた跡がまだくっきり残る左脚が、地面を蹴ったショックでキリキリ痛みだした。
「うわっ!!危ない!!」
目の前に立ち上がろうとするリックに激突する!!と皆が目をそらしたがフッドは、すんでで止まる事が出来た。
「ごめんなさいリックさん。」
「別にいいってことよ!!それより脚は・・・?」
「まだ痛いけど、紐が取れた時よりだいぶ楽になりました。」
フッドは、リックに軽く会釈を入れた。
「フッドとやら、あそこの湖でゆっくり休んでてね。ここは滋養効果があるから、脚も回復して快く休まるだろう・・・あっ!!いけねえ!!忘れてた!!」
「なあに?リックさん。」
「いや、何でない。こっちのことだ。じゃあ。」
オオワシのリックは、オオハクチョウのメグ女王様のいる草原に血相変えて飛んできた。
「女王様ー!!あなたの青い風船は十分目を皿にしても、鼻の穴を膨らましても、汲まなくしらみ潰しに探しましたが、全然見つかりませんでしたぁ!!すいませぇーーーーーーーーん!!!!!」
「オオワシのリックやあーーーい!おつかれさまあーーー!!心配しなくていいよおーーー!!だってここに、その風船があったもーん!!割れて落っこってきたのおー!無駄骨御免ねえーー!!!」
「本当お?!良かったあー!!おーーーっとっとっとっと!!!!!!ぎゃん!!」
ドサッ!!
リックは、また着地を失敗してずっこけた。
「痛たたたたたたた・・・またこけちゃった。で、どれ?割れて落っこってきた風船は?」
「これだよ、リック!」
「ぬわにぃ!?」
オオワシのリックは、チリチリに破裂した風船に目を疑った。リックは、嘴に開いている鼻の穴でそのチリチリになった風船の結ばれた吹き口の匂いを嗅いでみた。
「いやはや!!本当に女王様が嘴で膨らませた風船だ!!よくもまあ、こんなになって・・・あっ!!ガーコ!!てめえが余計なことを女王様にやらかしたから、俺が大変な目に会ったんだろうが。謝れや・・・」
リックは、声色をあらげてこの青い風船を誤って飛ばしてしまったマガモを呼び掛けた。
「お帰りになられましたか、オオワシさん。本当にすいません!!もうこんなドジは・・・」
マガモのガーコは、飛ばしてしまった女王様の風船を取りに行ったオオワシのリックに謝罪しようとしたら、いきなり突き飛ばされた。
「ああっ!!俺が膨らませようとしてストックしておいた、オレンジ色の風船を勝手に膨らませ割ったな!」
「重ね重ねすいません!!あたしはあなたの風船だとは知らなかったんだ・・・」「知らなかったじゃ済まねえんだよ!!ちゃんとした膨らませてない風船を手に入れるのにどんな苦労を・・・」
バシャーーン!!バシャーーン!!バシャーーン!!バシャーーン!!バシャーーン!!バシャーーン!!バシャーーン!!バシャーーン!!
湖で何かが墜落してきた音が聞こえた。
「な、なんだあ!?」
オオワシのリックとマガモのガーコ、ガチョウのブン、そしてオオハクチョウのメグ女王様がそこにいた。
「ぷはぁーーーつ…何とか助かったみたいだわ。あーんな高ぁーいとこから落っこちて、無事なのが奇跡だわ。
湖から顔を出して、嘴から飲み込んだ湖水を勢いよく吹き出した母コハクチョウのチエミは、青空の遥か上空を感慨深そうに見上げた。
「ラぁーンーー!スウぅーー!ミキぃー!大丈夫ぅー!?大丈夫だったら返事してぇ!?」
「はぁーい!!大丈夫よぉー!!」
スウはガバッと湖から這い出ました。
「わたしも大丈夫よぉー!!」
スウの側から這い出たランは、頬を膨らませぴゅーっ!!と湖水をまスウの顔にランが、スウの顔に吹き掛けました。
「やったわねー!!」
スウはランとふざけあって、お互いの無事を喜びました。
「あれ?ミキちゃんは?」
ランは、ミキがまだこの湖にいないことに気付いた。
「全く・・・ミキはお騒がわせなんだから・・・」
スウは心配そうに言った。
「ミキー!!」「ミキちゃーん!!」
コハクチョウ親子は、湖の中を行方不明になった妹のミキをくまなく探した。
「ママぁ!!ミキちゃんは見つからないよお!!」ランは半ば涙声で言った。
「湖から外れて地面に叩きつけられてたらどうしよう・・・着地地点にキツネとかいて・・・」
スウは、顔を曇らせてぼそっと言った。
「なにいってんの!!絶対にミキちゃんは無事だって・・・」
「ぷはぁーーーーつ!!ふぅーーーー!水をたらふく飲んじまったぜぇ!!」
涙声で反論するランのそばで、コブハクチョウのユジロウが鼻から嘴から大量に湖水をドバッと吹き出して浮かび上がってきた。
またそのすぐそばで、ぴゅーっ!!と噴水のようにみずが嘴から吹き出して、ミキが浮かび上がってきた。
「ママぁ、ランちゃん、スウちゃん、わたしは無事よ!!」
「ミキちゃぁーーーーん!!」「無事で良かったぁー!!
ランとスウ、母のチエミはミキに翼で抱きついてお互い涙を流して喜んだ。
「ママぁ!!ラン!!スウ!!迷惑かけてごめんね・・・!!」
「僕もミキちゃんが無事で良かったよ・・・!」
「ああーっ!!」
「フッドさんが生きてた!!」
湖の靄の中から、オオワシに襲われて墜落した筈のコブハクチョウの子のフッドがニコニコして泳いできた。
「フッド!?お前は本当にフッドか!?」
「そうだよ!!パパ!!心配かけて本当にごめんなさい!!」
「フッドおおおおお!!」
「パパあああああ!!」
2羽の父子は、羽根でお互いを抱きしめてオイオイと再会の涙を流した。
コハクチョウのチエミとその3姉妹も、思わず貰い泣きをした。
「おーい!!ハクチョウさん達ぃー!!」
空の遠くから声がした。
「おおっ!!君達は、タンチョウのリサとフラミンゴの・・・なんだっけ?まいいかぁ!無事だったかぁ!」
「うん、お世話様で!向こうの岸辺でオオハクチョウの女王様がみんなを呼んでたよぉ!!」
「女王様!?」
「あっ初めまして、ハクチョウの女王様。私が母親のチエミで、私の子供のランとミキとスウ。そして・・・」
「俺が父のユジロウでこちらは息子の・・・」
「フッドと申します。」フッドは軽く会釈をした。
「ああ、フッドや。うちのオオワシのリックがフッドの脚の風船を・・・」
「ええっ?!リックですか?本当にいるんですか!?」
突然、タンチョウのリサはオオワシのリックと聞いて身をのりだした。
「オオワシだと!?ここにいるのか?よくも、俺のフッドを・・・」
突然険しい表情になった、コブハクチョウのユジロウは声を荒げた。
ハクチョウの女王様はタンチョウのリサとハクチョウのユジロウの顔を観たとたん、
「おーい、リックやあい!」
「女王様、何でしょうか?」
リサとユジロウの目の前にぬっと、オオワシのリックがスゴスゴとやって来た。
「リックううぅーーーー!生きてたんかいあっ!良かったよぉーーーー!」
「オオワシ!この野郎!よくも俺の息子を・・・!」
オオワシのリックは、感激の余り羽根で抱きしめようとするタンチョウのリサと憎さの余り逞しい鰭脚で足蹴りを「食らわせようとするコブハクチョウのユジロウにもみくちゃになった。
「ちょっとちょっとちょっと待ったあ!」
オオワシのリックを羽交い絞めにしている2羽を引き離したのは、タンチョウリサについてきたフラミンゴだった。
「僕達は客人何だから、はしたないことは止めにしようよ。ね、ね。」
「ふん!」「ふん!」
険悪になったリサとユジロウはお互いソッポを向いた。
「リックやい、体と翼は大丈夫かい?」
オオハクチョウの女王様は、何が起きたのか分からずにきょとんとしているオオワシのリックを優しい声でなだめた。
「さあて、みんな集まったかな?今から見せたい所があるんだけど・・・今まで青い風船を追いかけていたんでしょ?」
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