5#暴風雨を超えて
ビュウウウウウウ!!
ゴウウウウウウウ!!
暴風雨が息子コブハクチョウのフッドと、娘コハクチョウのミキを打ちのめした。
「どこに・・・うっ!雨が・・・前が見え・・・あっ・・・あった!」
2羽が追いかけている青い風船は、雨風に煽られ吹き飛ばされながらフワフワと飛んでいた。
「もう少し・・・もう少し・・・うっ!また吹き飛んだ!待ってくれ!」
フッドは嵐の中に煽られながら、右往左往に流される風船を何とかして追いつこうとした。
「ん・・・?何?!君は・・・ミキちゃん・・・?!何でミキちゃんまで?!他の姉妹は?」
コブハクチョウのフッドは、コハクチョウのミキまでこの暴風雨の中でこの風船を追いかけていることにビックリした。
「親も・・・心配・・・うっ!してるぜ!早く戻んな・・・!」
「い・・・嫌よ!・・・わあっ!あたしも・・・この風船を追いかけてんの・・・あんたの・・・親も心配してるわ・・・!お互い様でしょ!」
「ミキ~~~~!!ミキ~~~~~!!どこに行ったの~~~~!」
「フッド!!フッド!!フッド!!」
2羽の親ハクチョウは、嵐の中に消えた二羽の子供ハクチョウを大声を張り上げてよびかけたが、既にその姿は暴風雨の中へ消えていった。
コブハクチョウの子のフッドは暴風雨の中、必死に青い風船を探した。
視界は何も見えなかったが、かすかに風船の気配だけを頼りに雨風でかなり重くなった翼を羽ばたかせて夢中に青い風船を追いかけた。
「痛い・・・キリキリする・・・何でこんな時に・・・僕のチャームポイントが足かせになるなんて・・・」
フッドの脚に絡んだ割れた風船の紐が、雨風で脚の締め付けられた傷口を傷めつけた。
どんなにハクチョウの脚が頑強でも、風船の細い紐が絡めば血管が圧迫されれば、たまったものではない。
「ちくしょう!!こなくそ!!」
フッドは脚の痛みを気合いで堪えながら、青い風船を更に追いかけまくった。
「フッド!!フーーーーッドー!!フーーーーーッド!!」
後を追いかけるコハクチョウの子のミキは、暴風雨をついて青い風船を追いかけまくるフッドを金切り声を張り上げて呼んだ。
「もう風船はもういいわよ!!もう追いかけなくてもいいわよ!!それより!!早くここから脱出することに・・・・うわっわぁあああああーーーーーーー!!」
「み・・・ミキちゃああああああーーーん!!」
いきなりの突風に煽られてミキはバランスを崩し、吹き飛ばされたのだ。
「そ・・・そんなああああああ!!」
フッドは動転した。
もはや風船探しどころではなくなった。
「ミキちゃあああああん!!」
「おっと!!」
吹き飛ばされたミキを受けとめたのは、親コブハクチョウのユジロウだった。
「バカ野郎!!フッド!!この子が危うく事故りそうになっただろ!!だからお前は・・・」
「もういいわよ!!ユジロウさん!!こんな大変だった時に叱らないでよ!!ミキちゃ
ん・・・無事でよかったわ・・・・」
親コハクチョウのチエミがユジロウに涙を雨風の中で流しながら訴えた。
「ミキちゃん!」「ミキ!!」
姉妹のランもスウもミキの無事を喜んだとたん・・・
「キャアあああああ!!」
今度はランとスウが吹き飛ばされた!
「おっと!!」「あぶねえ」
二羽を受けとめたのは、後を追ったタンチョウとフラミンゴだった。
タンチョウとフラミンゴは、ふぅ~~~~~~っ!!と安堵の吐息を吹いた。
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