4#いたずらハシボソガラス

 「!?」


 ハクチョウ家族やタンチョウ、フラミンゴが思わず喧嘩をストップした。


 「誰だおまいらは!?」


 父ハクチョウのユジロウは言った。


 「おいらはカースケ」


 「おいらはカーキチ・・・って、みんな固まってんなよ!羽ばたかないと墜落するど~!」


 「えっ?あっ!うわぁ~~っ」


 ハクチョウ家族やタンチョウのリサとフラミンゴは墜落寸前ギリギリに全員羽ばたき、元の体制に戻った。


 「で、何してたの?みんなで空中戦なんかおっ始めて?」


 ハシボソガラスのカーキチはみんなに聞いた。


 「あれだよ!あの風せ・・・ああっ!!や・・・やめたまえ!!」


 ハシボソガラスのカースケは、みんなで追いかけている青い風船を嘴で突っつき割ろうとしていた。


 「カースケ!俺に割らせろ!」


 カータロは目の前にふわふわと浮かんでいる青い風船を見たとたん、目の色を変えて加わった。


 「僕の風船に触るなぁ~~っ!!」


 いきなり飛び込んで来たのは、息子コブハクチョウのフッドだった。


 「フッド!待ちなさい!!」


 フッドは、とっさにバッ!と青い風船の紐を嘴にくわえ、カラス2羽組の嘴攻撃から避けた。


 フッドは大きな羽根で青い風船を庇うような体制で、


 「この風船を割りたいなら、僕を殺してから割れ!!」


 と、言い放った。


 「何を言ってるんだフッド!!風船より自分が大事だろうが!!やめなさい!!」


 父ハクチョウのユジロウが無謀な行為をする息子に言い聞かせたが、息子のフッドの目は真剣だった。


 「では、お望み通りだ!!」


 ハシボソガラスのカースケとカーキチは、一斉に息子ハクチョウのフッドに攻撃を仕掛けてきた。


 バシッ!バシッ!


 2羽のカラスは、鋭い嘴や脚の爪でフッドを激しく攻撃してきた。


 「やめろ!!やめないか!!」


 親ハクチョウのユジロウは、ハシボソガラスを蹴散らした。


 「俺の息子に何をする!!」


 ハシボソガラスのカースケとカーキチは、


 「覚えてろ!」


 と捨て台詞を吐いて、その場から逃げ去った。


 青い風船を庇って体、全身傷だらけのフッドは、


 「パパ・・・ありがとう。」


 と言おうとしたとたん、


 バシッ!


父ユジロウは、息子フッドの頬を大きな羽根で叩いた。


 「ユジロウさん!息子に何するの?!」


 母ハクチョウのチエミは言った。


 「うっ・・・うっ・・・うええええ~~~~~ん!!」


 フッドは大声で泣き出した。


 「フッドさん・・・私達もあなたのような勇気があったら、きっと同じことをしていたわ!泣かないでよ・・・私まで泣けるじゃないの・・・」


 長娘ハクチョウのランは、目からうるっともらい泣きの涙を漏らしてフッドを庇った。


 「・・・ってまた、風船がまた飛んで行っちゃったし・・・!」


 末娘ハクチョウのミキは、空の彼方へ離れていく青い風船を風切り羽根の先でゆびさして叫んだ。


 「・・・ったく!せっかくあんたが風船を捕まえたのに、また離して、どうしてくれるのよ!あんたが責任取って捕まえに行けよバカ!!」


 次娘ハクチョウのスウは、まだ泣きじゃくるフッドに当たり散らした。


 「ちょっとスウ!!フッドさんは風船を守ろうとしたのよ!!そんな言い方無いでしょ?!」


 ランはスウに食ってかかった。


 「そんなことしてる間に風船が行っちゃうよ!!私もう行っちゃう!!フッドさん!風船守りたいなら、メソメソしてないで一緒に行きましょう!じゃあ!!」


 ミキはフッドと一緒に、2羽の娘ハクチョウと親ハクチョウを置いて飛び去った。


 「ミキちゃん!」


 「ミキ!戻ってきて!!」


 「ミキ!どこ行くのよ!!」


 「フッド!また勝手な行動をする気か!!もうすぐ嵐がやって来る兆しが来てるんだぞ!!」


 残ったハクチョウ達は、2羽の子供ハクチョウを追いかけて飛んでいった。




 「・・・あれ?タンチョウさん、みんなは?」


 「あっ!いつの間に!!どこいったんだ?!フラミンゴさん!」


 「あっ!タンチョウさん!いたよ!ほら向こう!」


 「フラミンゴさん!きっとあそこにあの風船もある筈だ!急ごう!」


 「やべえ!風が強くなった!」

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