3#風船好きなタンチョウとフラミンゴ?!

 「ゴム風船みっけ!」


 タンチョウツルのリサは、青いゴム風船の紐を嘴でくわえてキャッチした。


 その青い風船の所有を巡って、空中戦を繰り広げたコハクチョウのチエミとコブハクチョウのユジロウは、いきなりの『漁夫の利』に呆気にとられてしまった。


 「何でこんなところにタンチョウが飛んでるんだよ~!タンチョウはもっと北でしょ?」


 コハクチョウのチエミとコブハクチョウのユジロウは、青い風船の紐をくわえて優雅に飛んでいくタンチョウののリサを追いかけた。


 「だってわたくし、はぐれちゃったんだもん!この前の暴風雨で吹き飛ばされてねっ!お母さんとお父さんを探してたら、たまたまわたくしの大好きなゴム風船が現れてね。」


 「この風船は私・・・」


 「いや、俺のです!」


 2羽はまた空中戦を繰り広げている隙に、風船くわえたタンチョウのリサは、どんどんその場から遠ざかっていった。


 「ママ~!!私達を置いていかないで~!」


 コハクチョウの3羽娘が半ベソをかきながら母ハクチョウのチエミのそばに飛んできた。


 「お父さんずるいよ~!」


 コブハクチョウの息子フッドも、遅れて父ハクチョウのユジロウのそばにやってきた。


 「ごめんね!みんな。思わず風船が気になってね。あっ!あの風船ね、タンチョウさんが持って行っちゃった!」


「タンチョウさんだって?」


 ミキは仰天して目を丸くした。


 「嘘~!こんなところにタンチョウさんって・・・見失っちゃったから言い訳してんでしょ~!」


 スウは2羽の親ハクチョウを疑った


 「タンチョウさ~ん!遭いたいな~!」


 ランは目を輝かせた。


 「それより早く湖に行かなきゃ!連れてってよ早く!」


 フッドは覚めた目で言った。


 そこに、バッ!と見慣れない桃色の大鳥がタンチョウ家族をかすめ飛んで行った。


 「ぬわにぃ~~!!フラミンゴぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 コブハクチョウのユジロウは呆気にとられた。


 「何でここにフラミンゴまでいるのよ!!あたし訳分からなくなったわ~!」


 コハクチョウのチエミは翼で頭を抑えた。


 ハクチョウ家族は、飛んでいくフラミンゴを追いかけた。


 親ハクチョウは、そのフラミンゴがあのタンチョウのリサのくわえている風船を奪おうと、空中戦を挑んでいることにビックリした。


  「タンチョウさ~ん!!こっち向いてよ~!」


 ランは、思わず叫んだ。


 「しいっ!」


 スウはミキの嘴を翼で抑えた。


 「やあ、ハクチョウの子供かい?」


 タンチョウのリサの嘴からスルリと青い風船が抜けた。


 「あっ!やばっ!」


 「貰った~っ!」


 フラミンゴは太く曲がった嘴で青い風船の紐をパクっとくわえて飛ぼうとした時、ハクチョウの家族と目が合った。


 「やあ、お揃いで!」


 今度は、フラミンゴの嘴から風船がスルリと抜けて飛んでった。


 「あ~っ!」


 「ぷっ!」


 タンチョウのリサは、フラミンゴに思わず吹き出した。


 「あっ!笑ったな!笑ったな!」


 フラミンゴは、タンチョウにまた空中戦を繰り広げた。


 「やめ~!やめ~!喧嘩やめ~!」


 父ハクチョウのユジロウは叫んだ

 「お前のせいよ!お前のせいよ!」


 今度はタンチョウのリサは声をかけたハクチョウの子のランに嘴で攻撃を始めた。


 「痛いよ~!ママ~助けて~!」


 ランは泣きわめいた。


 「よくもあたしの娘を!!」


 激怒した母ハクチョウのチエミは、タンチョウのリサにくってかかった。


 「まあまあ!待ちなさい!」


 父ハクチョウのユジロウまで戦列に加わった。

 「いいのよっ!!いいのよっ!!」


 娘のランはベソをかきながら、


 「ラン!ランってば!!」


 とスウやミキが、


 「父ちゃん!父ちゃん!早く行こうよ~っ!」


 とフッドまで加わり、全部揉みくちゃになって入り乱れ、空中戦が激しくなった。




 「しゃらっぷ!しゃらっ~ぷ!!かあああああ!!しゃらっぷ!!」


 そこに、2羽の通りすがりのハシボソガラスが割り込んで叫んだ。

 

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