Part5:休日に部活動に励む生徒は大概変わってる

「んじゃ、改めて学校をまわるとしようかね」


昼食を食べ終えた兎は、改めて学校を案内してもらう。


まずは教室棟。3階建ての建物で、1学年ごとに教室が各階に分かれている。

1年生が3階。以下2階に2年、1階に3年がいる構成だ。

生徒会室は3階にあるので、今年からは生徒会室に行くには階段を上らないといけないと奈々が愚痴っていた。


「西教棟は、厳密にはいろんな建物の集合体でね。化学室や生物室とかの実験棟、空き教室がいっぱいの特別教室棟、あとはホールなんかもあるよ」


続いて、3階の渡り廊下を使って西教棟へと戻ってきた。

昼前に通った廊下には保健室と空き教室くらいしかなかったが、2階と3階には様々な特別教室がある。いくつかの建物は細かく通路が仕切られており、ちょっとした迷路のような有様だ。

元々は私塾として始まったこの学校、最初は教室だけの小さな校舎が始まりだったそうだ。しかし、正式な学校として改装され、さらに実験棟や多目的ホールなど設備を増築、年々増加する生徒数に対応するため校舎の増改築を繰り返したため、校舎全体が複雑な作りになってしまったのだ。

結果、教室が学年でバラバラに配置されたり、狭い通路を行き来することを強いられたりと、校舎内の移動が非常に不便になってしまったため、数年前に東教棟を新設、通常の授業を行う教室を丸ごと移動させた。基本的に学生はほとんどの時間を東教棟で過ごすことになり、西教棟に残る教室は特別教室として、各教科の準備室になったり、文化祭などのイベント限定で使われるようになったのだった。


「ま、普段は人気の無い部屋が並ぶわけだからね。男女でこっそりと密会したりするにはうってつけなわけよ」

「その情報いるか?」

「にゃはは、シュンはしょっちゅうこの辺に呼び出されるからねぇ」

「そ……そうなん、ですか?」

「呼び出すのはお前だよな、主にイタズラ仕掛けるために」


奈々の冗談を交えながら、一行は1階に戻ってきた。


「あとは体育館と部室棟だねー」


渡り廊下を進み、部室棟へと足を向ける。

校舎から少し離れた2階建ての建物は、いくつもの小さな部屋が並んでいる。

それぞれのドアには各部の掛札が掛かっていた。


「部活動は、入部届け出していればいつでもどこでも所属できるよ。

掛け持ちも出来るからね」


瞬助によると、部活動の掛け持ちしている人間は多いらしい。

特に文化部の人は大体2つくらい部に入っており、メインにしている部活が休みの時にもう一方に顔を出す、といったことをしている人が多いようだ。

ちなみに、小夜は弓道部、奈々は生物部と料理部に所属している。

瞬助は生徒会以外はやっていないが、時々運動部の助っ人に出ることもあるそうだ。


「よぉ、会長。まだ転校生の学校案内やってんのか?」


部室棟の廊下で、一人の男子生徒が声を掛けてきた。

細長い包みを持った、がっしりした体格の男子だ。


(おぉっ、背が高い!!ワイルド系イケメン!?

担いでるのは竹刀!? それとも木刀!?

しかも眉に傷って! ヤーさん!? ヤンキーなん!?

会長とタメを張る裏番とかやってたりするのかなっ!?)


「おっす、猪宮。まぁ色々あってな。

今から部室棟と体育館を見てこうかってところだ」


猪宮と呼ばれた男は瞬助の答えを聞くや否や、兎に対してびしっと親指を立てる。


猪宮 凱イノシシミヤ ガイだ。気軽に凱と呼んでくれ!」

(違う、熱血系だ!! 笑顔が暑苦しい!!)


ニカっと全力スマイル!歯がきらーんと輝いた気がする。

放っておいたら『もっと熱くなれよぉ!』と叫び出すかもしれない。

たった一言で猪宮に対する第一印象は定まった、のだが。


「よかったね、ちょみー。芸能人仲間が増えて」

「ちょみー……」

「ほら、猪宮だから」


(なんか急に可愛らしい印象になった!

ゆるキャラか!? 熱血系ゆるキャラなのか!?

っていうか、芸能人仲間ってどういうこと!?)


「はっはっはっ! オレは超ローカルでしか知られてねぇがな!」


猪宮は特に気にした様子もなく笑い飛ばす。

とはいえ、兎には彼のような同業者に心当たりが無い。

そんな疑問を知ってか知らずか、瞬助が紹介してくれた。


「あぁ、こいつはいわゆる『ご当地ヒーロー』って奴やってるんだよ。

たまに町のイベントなんかで役者やってんだ」

「町の心は正義の心! 住み込み超人イバラキアをよろしくってな!」


びしっと台詞つきで決めポーズを決める凱。

そういえば、この町には物凄くローカルなご当地ヒーローがいると聞いた事がある。

兎は特に特撮好きというわけでもないので、すぐには思い当たらなかった。

どんなヒーローだっけ。


「スーツもなしにやっても締まらんでござるな」


今度は、自分たちが歩いてきた通路から男子の声が聞こえてきた。

つば広帽を被った男子が近づいてくる。


「分かってんだよ、んなことは。

つか、お前こそ何してんだ。化学部も今日は部活あんのか?

実験棟はごっそり鍵掛かってるだろ」

「参ったでござるよ。今日は部室棟の方でレポート作業でござるな」


(こ、こっちもイケメン!? っていうか外人!? 鼻高い!

金髪碧眼だし、でも日本語流暢に喋ってるし!!

なんで屋内で帽子被ってるんだろ?

てか何でござる口調!? 時代劇好きだったりするのかな!

時代劇に見惚れて日本にやってきたとか!?)


「む……そうか、お主が噂の転校生でござるな」


帽子の男子は兎に気付くと、紳士的に礼をする。


「拙者は亀井 透カメイ トオル。よく仲間内からはトールと呼ばれるでござるよ。

ちなみに、日本人とアメリカンのハーフでござる」

「あ……えと、よろしく、お願いします」


答え慣れてるのだろう、外国人寄りの外見の理由を先に答えてくれた。

が、一番知りたいのはそこじゃない。


「いやー、やっぱり気になるよね。トールのその喋り方」

「む……あまり気にしないでほしいでござるよ。ただの言語機能の乱れでござるから」


小夜が兎の気持ちを代弁してくれたが、透もまた慣れているのかすぐに答えてくれた。


そんな二人を指して、瞬助は紹介を続ける。


「猪宮と亀井は、生徒会の一員でもあるんだ。何かあったときに頼って問題ないぜ」


(なんと、この2人もそうなのでござるか!

……いかん、口調が移った。

にしても、今まで女の子ばっかりで会長さんハーレム状態だったけど、ちゃんと男子の生徒会もいるんだ。ちょっと変わった人ばっかりだなー。

でも、なんか楽しそうだ会長さん)


「おいおい、あんまオレらをこき使うなよ?」

「拙者らはワーカーホリックではないでござるからな」

「そっくりそのまま返すぜ。最近みんな、俺に遠慮なさ過ぎだ」

「会長は典型的な、ノーと言えない日本人でござるからなぁ」

「ありていに言えば、チョロいよな」

「ひでぇ」

(なんとなく、そんな気はしてました)


男子3人は気安いやり取りを続ける。

ふと、凱が口調を真面目にする。


「ま、なんだかんだ言っても頼りにしてんだよ。

生徒会の発足だって、こいつが尽力して実ったもんだしな」

「うむ、いつだったか瀬見殿の騒ぎの時も、会長殿の働きで穏便に済んだのでござるからな」

「あれは大変だった……ああいう事件がそうそう起きてたまるか」

「へっ、騒ぎだったら遠慮なく力を貸すぜ」

「拙者らの力が必要なら遠慮なく声を掛けるでござるよ」

「あぁ、頼むよ」


「んじゃ、俺は剣道場の方にいるからよ。

見学は自由だぜ、今日は俺しかいねぇがな!」

「拙者も部室に行かねば。少々、レポートが滞っているので」


2人が去ったのを見送ってから、兎はふと冷静に考える。


(いい感じでまとめてたけど、さりげなく、騒ぎが起きなきゃ何もしないって丸投げしてるようにも聞こえる。

2人の言うとおり、会長さんって案外チョロいのかもしれない。

それよりも……)


一点気になる点があったのだが、瞬助達が移動を始めてしまった。

一度質問を保留し、慌てて付いていった。




部室棟の先にあるのは体育館。この学校には2つ体育館があった。


第1体育館と呼ばれる大きい方は、ステージがあるのが特徴だ。

現在、始業式に向けての準備中だった。といっても、スピーチ用の教壇が設置されてるくらいだが。


第2体育館と呼ばれる方はステージが無く、完全に運動用の施設だ。

覗いてみたところ、ちょうど女子バスケ部が練習していた。

たまたま飛んできたボールを小夜が投げ返すと、きゃーっと黄色い悲鳴が上がる。どうやら、小夜は同姓に人気がありそう、という予想は当たっていたらしい。


2つの体育館は、地下にそれぞれ異なるものがある。

第1体育館の地下はいくつかの部屋が分かれており、剣道場や柔道場、卓球場が並んでいた。ちょうど凱が剣道場で訓練していたらしく、掛け声がずっと聞こえていた。実によく通る声だ。


第2体育館の地下には温水プールがある。

授業で使うのは夏のみだが、1年中使用可能ではあるらしい。ちなみに、水泳の授業は基本的に男女別であるが、唯一水泳大会は男女混合だという。兎の視線は思わず奈々の方に向いてしまう。そのとき、小夜もまったく同じ視線の動きをしたことに気がついた。なんだか小夜とも仲良くなれる気がした。


ひととおり見て回ったが、その間も(主に奈々のおかげで)会話が途切れることが無く、学校の謂れや注意すべき先生、大雑把な今後の予定も話してくれた。

また、時々生徒が通りがけに挨拶してくるが、みな生徒会の面々にお疲れ様です、と声を掛けるくらいで、兎がアイドルだと気付く者はいなかった。実は初めての人を見るたびに緊張していたのだが、特に喋ることもなく済んだのでほっとしている。


そうこうするうちに、最後の予定が回ってきた。


「さてと、最後に職員室へと行くか。

色々、書類とか書いてもらわないといけないからな。

その前に、質問とかあるかい?」


質疑応答の時間だ。

そこで、兎は先ほどから気になっていたことを聞くことにした。


「あの、いいですか?」

「ん? どうしたよ?」

「さっきの話……凱さん達が言ってた、生徒会を発足したって」

「あー……」



生徒会といえば学校の運営には欠かせない組織のはずだ。

この学校もそれなりの歴史があるはずだが、凱たちの話が、まるで生徒会が今まで無かったかのような口ぶりだったのが気になった。

ちょっとした好奇心だけで聞いた兎の質問に、瞬助は顔を曇らせる。

まずいことを聞いてしまったのだろうかと考えるが、すぐに答えてくれたのは小夜だった。


「1年前まで、この学校の生徒会ってちょっと問題があってね。

今の生徒会って、瞬助やあたし達が作り直したものなんだよ」

「やー、シュンが会長に立候補してくれてよかった!」

「お前ら……ほとんど俺に押し付けに近かっただろ」

「にゃはは。まぁまぁ、それでもちゃんとやってくれたじゃん!

ウチらも手伝ったけど、こうして学校案内を任されるくらいにはなったじゃん」

「それに多分、瞬助じゃなきゃまとまらなかったよ、この学校の生徒会は」

「まぁ……発足してよかったとは思うけどよ」


溜息交じりの瞬助だが、ちょっと嬉しそうではある。

奈々と小夜が持ち上げてるせいだろうか。

やっぱりチョロいのかもしれないが、少なくとも彼は生徒や先生から信頼されているんだというのは、今日一日一緒にまわってみてよく分かった。


「ま、片桐さんもこれからうちの生徒なんだ。

困った事があったら、遠慮なく生徒会に助けを求めてくれ」

「シュンは大抵のことは相談に乗ってくれるからね」

「もちろん、あたしたちも力になるからね」


3人は笑顔で答える。

実に頼りがいのある同級生である。

たぶん、マネージャーを除けば、今まで出会ってきた人の中で、一番安心できる人達かもしれない。



だからこそ。




(巻き込みたくないなぁ……)



もうすぐ起こるであろうことについて、相談することが出来ないのだった。




☆★☆★☆★☆★




西教棟にある職員室では、年配女性の先生が書類を持って待機してくれていた。


どうやら兎の学校案内が終わるまで待っててくれたらしい。

本来ならお昼には終了していた行事にも関わらず、だ。

感謝と謝罪をしてから、書類を受け取り記入していく。


瞬助たちはその間、職員室を出ている。

広い職員室に先生と二人きりという居心地の悪さを感じながらも、時折内容を確認してもらいながら書類を書いていく。


その間、兎はずっと無表情で。

気が重くなるのを感じながら、ノロノロと書類を書き終えた。



書類作成を終えて職員室を出た時刻は4時半。

学校案内に夢中になってたせいか、既に日が傾きかけていたことに気がつかなかった。

時間はもう迫っているだろう。

職員室の前では瞬助達が待っててくれていた。玄関まで見送るというので同行してもらうことにした。


「あっそうだ!

このあと空いてるなら、一緒に行かない?

美味しいクレープ屋さんが近くにあるんだよー」


実に魅力的な提案だ。兎は甘いものに目がない。

何もないなら迷わずこの奈々の提案に飛びついていただろう。


だが、今日はまずい。

夢で見た出来事は夕方だ。遠く西の空は既に赤みがかっており、予想の時間まであと僅かなのが分かる。


巻き込みたくない兎は結局。


「ごめんなさい……行きたいけど……このあと、仕事が……」


嘘をついた。

表面と内面が一致しない彼女は、表面だけ苦笑したまま答えた。


「うーん、そっかー。アイドルの仕事じゃしょうがないねー」

「また機会もあるだろうさ」


喋りながら歩いても、玄関まではすぐそこだ。

靴を履き替え、外に出る。

今日の予定は終了だ。


「明日からまたよろしくな」

「………はい」


瞬助の挨拶に礼をしてから、兎は今日一番信頼した人物にテレパシーを送る。


≪猫衣さん、本当に楽しかったです。ありがとうございました≫

≪いいっていいって! ウチらも明日から楽しみだからさっ。また明日ね!≫

≪はい……それでは、さようなら≫


「…………?」


奈々がきょとんと首をかしげたのも目にくれず、兎は走り出して校門を出て行った。







どれくらい走っただろうか。

自分は体力がある方ではない。たいした距離は走っていないだろう。

ただ、後ろを振り返ると学校は既に見えなくなり、兎はようやく足を緩めた。


周囲は簡素な住宅街。見知らぬ場所…いや、夢で見た光景だ。


「はぁ……」


一人町を歩く中で、今日のことを思い返す。



学校案内の感想は一言、楽しかった。



確かに、楽しかった。

ただ説明を受けるだけのはずだったのに。

びっくりするような美男美女に出会って。

秘密を知られて、それでも恐れずに楽しく接してくれて。

超能力を使ったイタズラなんかもして。

アイドルだって知ってる人もいれば、知らない人もいて。

ずっと楽しくお喋りとかして。


「ふぅ……」


そもそも同年代の人間と喋る機会すら少ないのだ。

いつになく、はしゃいでたのかもしれない。

あるいは、この夢のことがあったから、無意識のうちに楽しもうとしてたのだろうか。


チラリと後ろを見る。

夢で見たとおりの車が近づいてくるのが見えて、小道へと入る。


いつからだろうか。

表面と内面が一致しないようになってしまってたのは。

いつからだろうか。

お喋りをしないようになったのは。

いつからだろうか。

超能力アイドルという仕事を、ただ機械的に過ごすようになってしまっていたのは。


(なんだろう…そうだ。人間らしい、だ。)


久しぶりに、人間らしい生活をした気がした。


今まであまり気にしていなかったけれど、石猿会長や猫衣副会長や烏間さんと喋ってると、静かに、機械的に、流されながら生きてきた自分の生き方がひどく空しいものに思えてきた。


マネージャーが助けてくれるとは言ってくれてるけど、この先どうなるかの保証はない。

今朝までは、攫われても”そういうもの”で流すことが出来た。

もしこのまま命を失っても、そういうもの、で済ませていたと思う。


(あーあ、なんでこんなタイミングで、こんなこと思っちゃうのかなぁ……)



もっと彼らと、楽しく過ごしていたい。



久しく感じていなかった、友達と過ごしたいという、シンプルな願い。



だけど、それを突っぱねてしまったのは自分なのだ。

自分の事情に巻き込みたくなかった。

そんな自分の事情のせいで、友達と過ごすという大切な時間を壊されたくなかった。

自分のせいで犯罪に巻き込まれでもしたら、今度こそ関係が壊れてしまうかもしれない。


人との付き合い方が下手な兎は、助けを求めることも忘れてしまっていたのだった。


やがて、夢で見たとおりの場所にたどり着く。

後ろから来た車が止まり、現れた数人に囲まれる。

何かの薬を嗅がされて、意識が遠のいていく。


(あーあ、結局、夢のとおりか……非常識だなぁ……)


このあとどうなるかは分からない。

ただ今は、自分の非常識な境遇に心の中で悪態をつくしかなかったのだった。




だが、意識を失った兎には気付けなかった。


超能力を操る自分よりも、遥かに非常識な存在がいたことを。




☆★☆★☆★☆★




「た、大変だぁぁ……!」


猫衣 奈々は目撃していた。兎が攫われる瞬間を。

テレパシーでの会話で兎のテンションが低かったことが気になり、少し様子を見ようと付けてきたのだ。

小道に入っていった奈々が見たのは、気を失った兎が車に連れ込まれる瞬間だった。

よもや、こんなに堂々と車で拉致する人間がいようとは。


慌てて追いかけようとしたが既に車は発進。直後に車は曲がり角を右折。

せめてナンバーだけでも確認しようと追いかけたのだが、車は忽然と姿を消してしまっていた。

いくら閑散とした住宅街だからといって、まるで音も無く消えたかのようだった。


そして、非常識な奴が現れる。


「猫衣さん、よかった! 緊急事態です!」

「理緒!!」


眼鏡を掛けた男子が、音も無く奈々の隣に出現する。

いつも脅かしてくる厄介な人だが、この場にいるということは彼も目撃しただろう。


「キミ、もしかして片桐さんに付いてたの!?」

「そのつもりでした。ですが、彼女を攫った車は異常でした。

そこの曲がり角に入った途端に忽然と姿を消したんです」


いつも飄々としている理緒だが、口調は真剣だ。


「消える直前、車の周りが光って、魔法陣みたいなものが展開されていました。

おそらく、転移(ワープ)の類です」

「……『異能者』!?」

「はい、僕や彼女と同じく、何かしらの『異能』の持ち主が、誘拐犯にいます」


理緒が見た異常な事態を聞いた奈々は、すぐにスマホを取り出し連絡を取った。


「シュン、ごめん!!

兎ちゃんが『異能者』に攫われちゃった!!」


非日常が始まり、普通じゃない奴が自重しなくなる。

それを分かっていながら。

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