護りたかったモノ

レイガーシュ視点


ルシファー『貴方はそれでいいのか』


レイガーシュ『………良い』


ルシファー『……分かった』


レイガーシュ ルシファーとの契約………護りたい存在のために失った翼………


レイガーシュはかつて「天使」だった………それも天界で絶対的な権力を持つことが出来る「大天使 ミーシャ」………レイガーシュは護りたかった存在の為にその翼をルシファーとの契約で失い………結局護りたかった存在も失った


レイガーシュ「…………」


悪夢とも呼べない過去の記憶を見てレイガーシュは背中の傷が傷んだ………そして左肩から右脇まである裂傷痕(れっしょうこん)も痛み出して……レイガーシュは痛みから逃れたく風呂に入り髪を乾かしてから服を着る………その後に食事をとっている2人の後ろを通ろうとするが………


ウェルーシャ「出かけるのか?」


とレイガーシュに気がついたウェルーシャに聞かれて一旦行動を停止


レイガーシュ「2週間程家を留守にする その間ヤクバの教育を頼むぞ」


ヤクバ「気をつけて!(笑顔)」


レイガーシュ「ん ウェルの言うことちゃんと聞けよ?ヤクバ」


ヤクバ「はーい!」


ヤクバの頭を撫でウェルーシャに「気をつけてな」と言われレイガーシュはいつもの服を着て外へ


レイガーシュ「……我魔界に通ずる者なり………魔界の門よ開け」


レイガーシュが魔界に通じる門を開きその門を通ると魔界に到着


悪魔「予言者様」


と門番の悪魔に呼ばれレイガーシュは来ていた上着のフードを脱ぐ……すると黒い髪は真っ白に染まり顔の半分を覆う黒い部分が露骨に見える


レイガーシュ「………ルシファーは居るか?」


悪魔「魔王様は執務室におります」


レイガーシュ「了解」


悪魔にルシファーの場所を聞きレイガーシュは自分持つ力を使って執務室の窓まで飛ぶ


ルシファー「レイガーシュ 前も言ったけど扉から来てよ」


レイガーシュ「減るもんじゃないし良いだろ」


そう言ってレイガーシュは窓から入っていつも座っている出窓のところに収まる


ルシファー「人間界はどう?ミーシャ」


レイガーシュ「その名は捨てた」


「ミーシャ」………神に与えられたその名をレイガーシュは堕天した時に捨て「レイガーシュ」と名乗り、今では悪魔も天使も「予言者」としてレイガーシュに頼っているが天使達は、レイガーシュを「ミーシャ」に似せて頼っているので、何回か戦闘の手助けを頼まれたが丁重に断ってきた


ルシファー「………貴方の選択は間違っていなかった………けど神はそれを良しとしなかった」


レイガーシュ「それで失った命だ ………記憶のない息子とその弟………ウェルーシャとヤクバ……」


ウェルーシャは元天使で堕天したことによって記憶を失い、ヤクバは人間として不老不死のまま記憶をなくして転生………妻だけがレイガーシュの近くにいない


レイガーシュ「………何のために翼を黒く染め片翼を失ったのか………」


ルシファー「………貴方は正しい」


レイガーシュは泣いていた………それを見たルシファーは席を立ちレイガーシュの涙を拭う


レイガーシュ「ルシファー 教えてくれ………俺は何故天使として生を受けた?何故お前と同じ「悪魔」になれなかったんだ?」


ルシファー「落ち着いてレイガーシュ」


そう言ってルシファーはレイガーシュを抱きしめた………レイガーシュとルシファーは極限まで魂が近い………神の手で天使と悪魔でわけられた本当の双子の兄弟………


レイガーシュ「俺はただ愛する存在を守りたかっただけなのに……!!!!」


ルシファー「レイガーシュ………」


レイガーシュ「なんで………!!!!」


ルシファー「兄さん………」


レイガーシュはただ泣いた………ルシファーの腕の中で………最愛の弟に抱きしめられて………


ルシファー「落ち着いた?」


泣き出してからどれくらい経ったのか………レイガーシュは漸く落ち着きルシファーから離れる


レイガーシュ「仕事中だったのにすまない」


ルシファー「気にしないで もう終わる所だったから」


レイガーシュ「そう」


泣いたせいで腫れた顔を余り見られたくないのか真っ暗な空を眺めだす


レイガーシュ「力抜いていいか?」


ルシファー「良いよ」


レイガーシュはルシファーに断りを貰ってか普段から込めているら力を抜く……すると「バサッ」と言う大きな音と共に黒く必要以上に大きい翼が現れる………しかしもう片方の翼は失われているために出てこない


レイガーシュ「そう言えば根元から翼引きちぎられた時めちゃくちゃ痛かったな」


いつの間にか腫れが収まっていたその顔は微笑を零すがその瞳は暗い


ルシファー「兄さん泣きながら声耐えてたからこっちが冷や冷やしたけどね」


レイガーシュ「お前あの時の顔凄かっ………」


途中まで言った言葉をルシファーが目の前に来たことで止めた


ルシファー「無理しないでいいよ 兄さん」


レイガーシュ「…………」


ルシファー「疲れたんでしょ?だからここに来た」


レイガーシュ「今日だけで何回お前に抱きしめられるんだろうな」


ルシファーに抱きしめられるとレイガーシュは心が安らぎ落ち着く………それをルシファーも知っているからこそ兄を労る


レイガーシュ「………疲れた」


1度深呼吸をしてからレイガーシュはルシファーの身体に腕を回してそう言う


ルシファー「疲れたよね………休みなよ」


レイガーシュ「ん………少し寝る」


レイガーシュは一瞬完全に目の色が水色になりそのまま目を閉じた………感情によって変化する瞳の色は黒は通常で一瞬見せた水色は疲労


ルシファー「疲れきってるこっち来るからわかり易いんだよなぁ」


少し目を閉じただけで眠ってしまった兄を背中に背負って(翼はしまった)部屋を後にする


悪魔「おや………眠ってしまわれたんですか?」


ルシファー「疲れきっているからな ルウェーイはどうした?」


悪魔「今は上級階級者と戦闘訓練をしております 何か御用が?」


ルシファー「いや 戦闘訓練をしているのならいい」


部屋の外で待機していた側近にルウェーイのことを聞き兄を自室に運んで、眠っているのをいいことに部下が見ていて制止されたのにイタズラをしてから出ていく


悪魔「後で兄君に怒られますよルシファー様」


ルシファー「兄にあれくらいのイタズラをしておかなければ引き止められん」


「ただでさえ滅多にこっち来てくれないからな」と言いながらルウェーイ元へ向かった……


〜数時間後〜


レイガーシュ「身体だりぃ………イタズラしやがったなあいつ………」


数時間後 寝起きはスッキリしたが身体のだるさを感じつつ風呂に入り服を着る………


レイガーシュ「………顔のヤツ消えてるし………」


そしてレイガーシュは顔半分の黒く染まっていた部分がなくなり昔の肌に戻っていた


レイガーシュ「ルシファー」


ルシファー「おはよう兄さん 数時間も寝てたよ?」


レイガーシュ「∑(゜△゜;)マジカ………ってそうじゃなくてお前イタズラしたろ」


ルシファー「あっバレた?」


レイガーシュ くっそ可愛い………じゃなくて!!


ルシファーのイタズラ心溢れる表情に可愛いと思いつつ呆れ顔


ルシファー「呆れられた………」


レイガーシュ「寝てたら抵抗しないって考えたんだろ………?普通呆れる」


ルシファー「じゃあ抵抗しないでよ」


レイガーシュ「兄貴が弟に抱かれるなんて普通は抵抗するからな それと顔治ってるんだけど何か知ってるか?」


少し頭を抱えたくなったレイガーシュだがルシファーに聞くとルシファーも知らなかったのか、「本当だなくなってる」と言う


悪魔「………翼を広げて見ていただけませんか?」


と側近の悪魔に言われて出してみると………失われていたはずの片翼が復活している………と言っても両方黒いのだが


ルシファー「もしかしてさ………誰か………兄さんが大切にしてる人が蘇った?」


悪魔「可能性はなくはありません」


レイガーシュ「…………」


悪魔とルシファーの言葉にレイガーシュは素直に喜べなかった………もし自分が天使と対峙することになれば………レイガーシュは強制的にでも引き離されて天界に連れて行かれるから………





今ではもうレイガーシュの護りたいモノは天界と天使達ではなく………弟とウェルーシャ、ヤクバだけ………

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