第41話「声をかけてきたのは…」
「んー、なるほどなるほど」
クラスメイトの北条に文化祭の件について尋ねてみると、なにやら納得顔で数度頷き、やがて表情に笑みを浮かべ始めた。
「それはねぇ、当日までのお楽しみってところかな」
「何だそれ、北条は何か知ってるのか?」
「多分ね、あの二人が考えてることは何となく分かるよ。ただ……それを今私が言っちゃうのは、ちょっとおもしろ──おっと、何でもないよ」
完全に今、面白く無いって言おうとしただろ。
「まあ、当日には分かると思うからさ。それまではほら……我慢? みたいな」
「北条もそれか……ったく、一体何だって言うんだ」
結局、昨日二人がこそこそと話していた内容は分からずじまいのままだった。
学園でも屈指の情報通である北条に聞けばもしくは、と思ったんだが……どうにも教えてくれそうにない様子。
「それよりどう? 生徒会の様子は」
「生徒会……そうだな、何とかやれてるよ。男一人ってのが大変だけど」
「そうだよねぇ。なんたってあの葉隠先輩と皐月先輩の下だもんね」
「やっぱ、あの二人は有名なのか?」
「そりゃもちろん! あの二人は学園の中でもツートップだからね。……そうだ、知ってる? 橘君、今学園で結構注目集めてるんだよ?」
「俺が? どうして」
「だって、そんな二人と花咲姉妹、四人に囲まれて生徒会活動をしてるんだもん。そりゃあ学園中の男子が黙って無いでしょ!」
そ、そうだったのか……?
そういえば最近、やけに人からの視線を感じるなとは思っていたが。
「気をつけなよ? 大丈夫だとは思うけど、中には変なこと考えてる人もいるかもしれないからね」
「……できれば考えたくないが、一応気をつけることにするよ。ありがとうな」
「うんうん、また生徒会でのこととか色々聞かせてね! 楽しそうなことは記事に──おっと、何でもないよ?」
「お前……ごまかせば何言っても良いと思ってるだろ」
「なはは、それじゃまたねー」
さっと反転し、逃げるように教室から出て行く北条。
……まあ最後のはともかく、俺が注目を集めてるって話は頭に入れておいたほうが良いかもしれない。
どこで何があるか分からないしな……。
◇
「さて、会議を始めようか」
生徒会メンバー全員が揃ったことを確認し、葉隠先輩──もとい、会長が言葉を発す。いよいよ文化祭に向けた本格的な話し合いの始まりだ。俺にとっても高校生活初めての文化祭、それも生徒会としての参加になる。これは気を引き締めていかねば……と思っていたのだが。
「ひとまず、各クラスから出し物についての要望がこぞって来ている。まずはこれの整理をしなければならない」
「整理って、例えばどういう?」
「そうだな、他クラスと被っていないか。倫理に反していないか、そういった基本的なことだけで大丈夫だ。あくまで高校生がやるに相応しいと判断しなければ、要望を受け入れることはできない」
「なるほど……ちなみに、それを判断するのは」
「無論、私だ」
なるほど。確かに相応しいかどうか、それを判断するのは一年生の俺たちには難しいかもしれない。
……と、なると。
「あんまり人手が要らないですね、それだと」
「そうだな。今日はあやめもいるし、正直この作業は私たち二人で事足りる。……そこで、だ」
そう言うと、会長は鞄から何やら取り出し始め。
「今日君たちにお願いしたいのは、こっちだ」
可愛らしいがま口の財布と、メモが書かれた紙を手渡された。
◇
「つまりお使いってことだよな……」
会長からの指示を要約すると、文化祭に向けて必要な備品を買い揃えて来い、と言うものであった。
「まぁまぁ。今日は私たちがいても役に立てそうにないし、お願いされたお使いを頑張ろう?」
「柚希の言うとおりね。今日のところは大人しく買い物しましょうか」
まあ、結構買うものもあるし、これも立派な生徒会の仕事ってことだろう。
そう思い、メモをチェックしていく。
「えーっと、必要なものは……って、これ売ってる場所が結構バラバラだな」
「あ、本当だ。んー……これは手分けした方がいいかも」
「そうだな。んじゃ、俺は二階に向かうから二人は一階の店を周ってくれ」
「分かったわ。また買い物が終わったらここに集合で」
こうしてショッピングモールへ到着し、それぞれ買い物を手分けすることに。
比較的重さがありそうな品は二階に集中していそうなので、そちらを俺が担当。残りを二人にお願いすると言う形で、一旦別れる形となった。
「さてと、まずはどこから……」
「──おい、橘」
どの店から周ろうか。
メモを見ながらぐるっとフロアを見渡していると、見知らぬ男性から声を掛けられた。
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