第23話
ニューヨークへ旅立つ前
拓が改まって、話があるって…
「美桜…お願いがあるんだ」
「どうしたの?真面目な顔して」
「美桜、ここに引っ越して来てくれないか?
俺がいない間、ここにいて、
っで…帰ってきたら、一緒に住まないか?」
「…うん、わかった。
私、ここにいるね。
ここで、拓の帰りを待ってる!
おかえりって言うね」
「ありがとう。俺、頑張ってくるな」
そして、私は彼のいない部屋に住み始めた
彼の香りに包まれる毎日は嬉しい反面、
どうしようもない空虚感に押し潰されそうな日もあった
拓のベッドで一人で眠る夜
寝付けなくて
電話した
「拓…」
「美桜、そっちは夜か?」
「うん」
「眠れないんだろ」
「どうして、わかるの?」
「俺は美桜のことは何だってわかるんだよ」
「声…聞きたかったの。
ごめんね。弱い彼女で」
「弱くないだろ。美桜はむちゃくちゃ、つええだろ?
俺に行ってこい!って送り出してくれたじゃん」
「……うん」
「美桜…空見て」
窓を開けて夜空を見上げた
「俺も見てるよ、なっ」
「うん、そうだね。そうだよね!
おやすみなさい。拓」
「おやすみ、美桜」
強い私と弱い私が心の中で喧嘩する
彼の夢を応援する
それは私が決めた道なのに……
声を聞くと会いたくて
触れたくて
抱きしめてほしくて
眠れない夜は
あなたが恋しいよ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ニューヨークに来て
目に入るものすべてが刺激的で
少しでも取り入れてやろうと、
俺はいつも、五感をフルに研ぎ澄ませていた
そんな中
美桜には毎日、連絡した
いつも明るい元気な彼女の声が俺の糧となったけど、
きっと無理してるんだろうなと思ってた
会いてぇなぁ
マンハッタンの空を仰いだ時
美桜から電話が鳴った
いつもと違うか声に胸が痛んだけど、
今日は無理してないんだと安心した
同じ空を見上げようなんて、クサイこと言ってしまったけど、
今の俺にはそんなことぐらいしか、言えなかった
美桜、
泣かせて、ごめんな
絶対……笑顔にするから
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