第22話
「拓ぅー、おはよう」
そぉーっと部屋に入っていくと
テーブルに突っ伏せたまま、眠っている
「拓、風邪ひくよ、ベッドにいかないと」
「ん?み…お?」
彼は座ったまま、慌てて私の腰を引き寄せた
「どうしたぁ?」
冷えきった身体をさすった
「何、とっとと帰ってんだよっ」
「ごめんなさい、淋しかった?」
「べっつにぃ、ハンバーグ、こんなに食えねぇだろ」
「フフ、そうだね」
私は拓の髪を撫でながらゆっくり話始めた
「拓、大事な話…言えなくなったらダメだから今日顔見たらすぐに言おうと思ってた。
あのね、やっぱりニューヨークに行って。
っで、拓のやりたいことを思いっきりやってきて」
「でも、それじゃあ、美桜の側にいられない」
「拓、私はずっとついててくれなくても大丈夫なの。もう、病人じゃないんだから」
「わかってる。わかってるけど…」
「私は拓にぶら下がって、生きていきたくないの」
「ぶら下がってる…なんて」
「うううん、やっぱり、そうだよ。
私も私らしく頑張ってみようと思うの。お互い前に進もうよ。ねっ?」
「……わかった。半年頑張ってくる
10月には…
美桜の誕生日には必ず帰ってくる」
「うん、了解…
キャッ」
彼は私を持ち上げて膝の上に乗せると優しいキスをした
「拓、浮気したら許さないからね」
「するわけねぇだろ」
「お前こそフラフラすんなよ」
「するわけねぇだろ、クスッ」
「むかつく、そんな口聞けないようにしてやる」
「ちょっ、ちょっと朝だよ」
「関係ないよ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
春の桜が咲く頃
拓はニューヨークへ旅立った
私は和菓子店を辞めて
以前、勤務していた時の同僚の紹介で商社に戻った
彼と再会した時
今より輝いていたいから
拓、私も負けないよ‼
愛しい人にただ、寄り添っていたい
誰しも、そう思うもの
でも、
大切な人が遠く輝く星を見上げていたのなら
その星を私も同じように見上げたいと思う
離れていても空は繋がってる
いつか、肩を並べて煌めく夜空を見上げる日が来るまで…
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