第18話

外が明るみ始める


私は隣で寝息をたてる愛しい人にキスをしてそっとベッドを出た



窓を開けると昨夜から降り積もった雪が朝陽に照らされてキラキラと光ってる



こんな幸せな朝は

あなたに抱かれた温もりを思いながら、

ほんの少し一人で浸っていたいもの


(拓って、呼んじゃった、フフフ)


嬉しくて思いだし笑いが出ちゃう




「なーにー、一人笑ってんの?」


「え?起きてたの?」


「さっき、起きた。

起きたら、美桜が一人でニヤニヤしてるから」


「してないよっ」


「してたよー。ひょっとしてさぁ、昨日のこと思い出してたの?

美桜、そりゃぁもう、エロくて…」


「言わないで」


寝ている拓の上に跨がって口を押さえた


イタズラっぽく笑った彼は舌を出して私の指を舐めた


「きゃっ」


慌てて逃げようとするとしっかり捕まえられて抱きしめられた


「おろしてよ~」


「おろさないよー。

なぁ、拓って呼んでよ。そしたら、離してやるよ」


「うー」


「ぶっ、何その難しい顔。早く」


「た、く…。拓」


「んっ」


「たーくぅー」


「はいはい」


「好き…大好き!」


「わかったって。

名前呼べって言っただけじゃん」


「可愛い~照れてるのー?」


「お前なぁ、調子にのんなよ」


上にのっかってた身体をクルリと回されて見下ろされる


髪をとかせながら見つめる彼の色っぽい目

それだけで身体の中心が熱くなる



「美桜…泣きそうな目してるよ」


拓が瞼にキスした途端、涙が一筋溢れた


身体を起こして彼に抱きついた



「美桜、どうした?」


「私ね、ずっと拓って呼びたかったの。

でも、でもね…」


言葉に詰まった唇が彼に塞がれた



「俺はちゃんと、わかってるから。

美桜の気持ちは伝わってるよ

心配すんな」


「うん」



「なぁ、も1回する?」


「す…る」


「っしゃあ」


私を押し倒そうとした彼を止めた


「っんだよ」


「今度は私が…拓を愛したい」


「マジで?」


恥ずかしくて下を向いて頷くと拓は私の頭を撫で髪にキスした


向かい合わせに座る彼の唇に届くように立て膝した


彼は私の腰をしっかり支えてくれる



「拓…目瞑っててね」


「ふっ、わかったよ」



肩、二の腕、お腹、全身にキスを落とす





美桜の柔らかい唇が至るところに触れて

たまらなくなっていた


大好きな彼女

愛してる人


そんな言葉ではうまく表せない

かけがえのない存在


世界中何処を探しても見つからなかった、

たった1つの輝きを手に入れた


そんな気分だった



「美桜…もう無理」


彼女の両手を掴んで押し倒した



「拓、まだだよ」


「もう、充分だよ、俺が抱きたい」




やっと、通い合った心と身体を

いつまでも繋げていたくて

何度も求め合った



抱き合うことに

言葉はいらない


お互い感じ合うだけで

心が触れ合う

愛しさが溢れる



大切な時間を大切な人と過ごすことって

こんなにも幸せなことなんだって

初めて思ったかもしれない



美桜、

俺はお前の過去も今も

そして、未来も

全部抱きしめるからな

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