第16話
雪が降ってきた
真っ暗な夜空を見上げると
舞い落ちる雪が目に入って涙と混じる
拓海くんと一緒に見たかったな…雪
「美桜、待てよ!」
息を切らして走ってくる彼
「何がサヨナラだよ、ふざけんな」
「拓海くん、もう、いいよ」
「俺はよくない」
「私がもし、もしね、次の誕生日に最悪なことになったらどうするの?
拓海くんを巻き込めない」
「俺はそんなに頼りにならないか?美桜?なぁ」
「違うよ、違うの。
好きなの、拓海くんが…だから」
「俺の気持ちは?俺の気持ちはどうなるんだ?」
「拓海くんの?」
「俺はどんなことがあっても美桜の側にいたい。大好きだから」
「ウウッ…ふぇ」
涙で言葉が出てこない
拓海くんはゆっくり近付いて私の頭に手を置いた
「美桜、俺はお前を一人にしない
どんなことがあっても、一人で泣かせない。
…お前の涙は絶対俺が拭ってやる
俺がそうしたいんだ」
「ほんとにいい…の?」
「俺がしたいって言ってんだろ、わかった?」
声が出なくて…大きく首を縦に振ることで精一杯だった
髪を優しく撫で、背中に下ろされた手が私の身体を引き寄せ、あなたの腕の中にすっぽりとおさまった
「クスクス、美桜、ちっちぇー、もっと食えよ」
「子供扱いしないでよ」
彼の胸を押して上目遣いで睨んだ
「バカじゃねぇの?子供がこんなエロい唇してないだろ」
拓海くんは私の唇を親指でなぞった
思わず俯いた私の顎に手を添えて何度も唇を重ねる
どんどん深くなってくるキス
「くっ、苦しいよ」
「ごめん、止まんなくなった」
「美桜、帰ろう
もう1回…クリスマスやろ」
笑顔で頷いて彼のあったかい手を握った
拓海くんの髪に積もった雪がキラキラと輝いてる
そっと、背伸びしてはらうと、抱きしめられる
「美桜、もうどこにも行くなよ」
「行かないよ、ずっといる。
ねぇ、なかなか帰れないよー?」
「ハハッ、そうだな」
美桜の温もりをずっと感じていたい
思えば思うほど
いつか、なくなってしまいそうで、
消えてしまいそうで、
不安だった
でも、これからは…ずっと一緒
White Christmasの静かな夜
俺達の少し早い鼓動が
雪の夜に響いているようで幸せだった
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