第15話
Christmas eve
拓海くんは何処かに出掛けようと言ってくれたけど…彼の店で過ごすことにした
私はあの空間が大好きだった
初めて行った時からどこか懐かしくて落ち着いて…
「メリークリスマス、美桜」
「メリークリスマス、拓海くん」
「うっま、凄いなこれ、全部、美桜が作ったの?」
「まぁねぇー」
「出たよ、美桜のどや顔」
店の2階が拓海くんの部屋
Christmasのお料理やケーキを並べて二人で過ごした
「ご馳走さまでした。
じゃ、片付けは俺がやるよ」
「いいよ」
「いいって、美桜は座ってて」
鼻歌混じりに洗い物してる拓海くんの背中を見てると…
今日こそ、すべてに話そうと思った
「拓海くん、あのね、私ね、話したいことがあるの」
「なに?」
「後でいいよ」
「気になるじゃん」
「うーん、じゃ、座って」
テーブルに向かい合わせに座った
「拓海くん…いきなり、なんだけどね」
なかなか、声が出なくて俯いてしまう
「美桜、俺、何でも聞くから言ってよ」
「えっと、拓海くんは…
5年生存率って知ってる?」
「聞いたことは…ある」
「それね、それなのよ、私。
4年前まで私は駅前のオフィスビルで働いてた。
あの頃、仕事も楽しくて毎日がキラキラしてた。
病気になって入院して退職したの。
………それから、年に1回の誕生日
大概の人が幸せな時を過ごす日
私は悪魔の宣告をビクビクしながら待ってた」
「拓海くんと出会った頃、4回目をクリアしたところだったの」
拓海くんは何も言わず、しっかりと私の顔を見てくれてる
「びっくりするよね。こんなこと急に言われたら…
親は早くに亡くしてたから、病気になって、恋人も友だちも初めは心配してくれたのよ。
でも……少しずつ離れていった。
だからね、もう、誰かを好きになることをやめようと思ったの
…いつか…いなくなるから」
拓海くんが…………泣いてる
大粒の涙を流してる
「ごめん、ごめんね、拓海くん
私になんか…会わなければ、良かったね」
「美桜…お前、4年も、ずっと一人で…グスッ…たった一人でそんな辛い時間を過ごしてきたのか」
彼はテーブルに肘をついて頭をかかえて泣きじゃくった
「どんなに…ウッウッ、どんなに不安だったか…
会わなければ……なんて思うかよ。
もっと早く出会ってたら良かった。
そしたら……そしたら、一緒にいてやれたのに」
拓海くんは今の私だけでなく、
まだ、出会ってない過去の私のことまで思って泣いてくれた
もう、充分だよ
大切なあなたに辛い思いはさせたくない
「たった、3ヶ月だったけど、
拓海くんと出会って、笑って、泣いて、こんなにも素敵な思い出があれば、頑張れるよ」
「拓海くん、さよなら
……ありがとう」
私は大好きな彼をおいて…
部屋を後にした
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