第13話

彼女の規則的な寝息が子守唄のように、心地よくて、俺もいつの間にか眠ってしまってた



目覚めると横に美桜がいる



すぐにでも俺のものにしたいけど、手にした瞬間に消えてしまいそうな気がして…


瞼にそっと口づけた



腰の辺りのシャツをぎゅっと握ってる手をゆっくり離してベッドから出た



「拓海くん?」



「美桜、俺、店あるから、帰るな。

ごめんな」



「うううん、ありがと」



「なんだぁ?帰ってほしくないの?」



「……」



「また、すぐ来るから」



優しく頭を撫でてくれるおっきな手



「うん」


「じゃな」


「うん」


「あー、そんな顔されたら、帰れねぇじゃん」



私はめーいっぱいの笑顔を作って言った



「大丈夫だよ。早く行って。お仕事あるでしょ。いってらっしゃい」



「おー、いってきます」



いってきますと手を振る彼


背中を見るのは…嫌い

このまま、いなくなっちゃいそうで…



ベッドに残る拓海くんの温もりが消えてしまうのが淋しくて、

彼のいたところに寝返りをうって頬を寄せた





好きになれば、なるほど

弱虫になる


愛すれば、愛するほど

求めてしまう



相手に何かを求めるだけでなく

自分も与えられる人になりたい


そう思えば

きっと、愛し合えるのだろう



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