第9話
1週間後
あの時、美桜ちゃんが着ていたワンピースがクリーニングに出され、宅配便で届いた
『ありがとう。私の服は捨ててください』
と一言書かれた手紙と共に。
ふざけやがって、アイツ!
本気で会わないつもりか?
そう、簡単に引き下がるかよ
夕方、和菓子店の前で待った
俺はストーカーかっ
でも、何と思われようと構わない
このまま、彼女に会えないなんて考えられない
仕事を終えて出てきた美桜ちゃんに声をかけた
「美桜ちゃん、忘れ物」
「捨ててくださいって、書いてたでしょ?」
俺と目を合わせず、さっさと帰ろうとする
「捨てれるかよ。ちょっと待って。
頼むから、乗ってよ。話がしたいんだ」
渋々、車に乗った美桜ちゃん
俯いて何も話さない彼女に声をかけれず、少し車を走らせた
車内は重い空気
「ねぇ、何処行くの?」
「何処行こっかぁー」
「用事ないなら帰ります」
「あるよ」
高台の駐車場に車を停めた
「俺…美桜ちゃんのあんな顔見て、簡単に諦められないんだ」
「どうして?別に私じゃなくても拓海くんなら、相手にしてくれる人いっくらでもいるでしょ?
何度も言うけど……私は、ダメなの」
「じゃあ、理由を聞かせてよ」
「それは…言えない」
「じゃあ、諦められない」
「お願い、もう、私の気持ちをかき乱さないで」
消え入りそうな声で言った彼女
「俺は…ただ、美桜ちゃんの側にいたいんだ。それだけ」
「でも…でもね、拓海くん…」
涙がポタポタとぐっと握りしめた彼女の小さな拳に落ちる
そっと頭を抱えるようにして俺の胸におしあてた。
彼女は俺のシャツを遠慮がちに摘まんで肩を震わせてる
「美桜ちゃん、もう、理由は聞かないから、だから、泣くなよ、なっ」
「ほんとにほんとに私でいいの?」
「いいって言ってんだろ
美桜ちゃんが…
美桜がいいんだ」
「グスッ、私…拓海くんのこも好きになってもいいの?」
「いいよー」
おっきな潤んだ瞳で見上げられて、そんなこと、言われたらたまらないよ
「ほんっと、ずるいよなぁ」
「へ?何が?」
「何でもない」
涙に濡れた頬を親指でなぞって、キスをすると恥ずかしそうに俯こうとする
助手席に身を乗り出して、首の後ろに手を回し、今度は唇に触れるだけのキスをした
「好きだよ、美桜」
「私も好き」
「だろ?わかってたよ」
「なによぉー、それ」
美桜
きっと、
俺の方が…ずっと、好きだ
それは言わない
…けど
そんなに真っ直ぐに見つめられたら、
心の中まで見透かされそうで……
彼女の身体を優しく包んだ
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