第7話

都心のホテルでのパーティー


拓海くんの先輩がブランドを立ち上げたらしい



会場にはお洒落な人がいっぱい。

私には場違いなような気がして、不安になってきた




「ねぇ、拓海くん、私、ここにいてもいいの?」


スーツの袖を引っ張って小声で言うと、

彼は少し屈んで耳打ちした


「いいに決まってんだろ。俺から離れんな」


「うん、わかった」




「おー、拓海ぃー、久しぶりだな。今日はありがとう」


「お久しぶりです。おめでとうございます」


「今、どうしてる?」


「相変わらずですよ」


「お前ならもっと上にいけるだろ、いつまであんな小さな店やってんだ」


「別に上にいきたいとは思いません。

俺はいいと思った服を選んで、喜んで着てもらえる人に着てもらいたい。

俺は俺のやりたいようにしてるだけです」



拓海くんは真っ直ぐにその先輩を見て

キッパリと言い放った



「そっか。まっ頑張れよな」




拓海くん…ほんとはここに来たくなかったんだよね。

無理してるんだよね



「美桜ちゃん、やっぱ、帰ろうか。

何か、ここ疲れるよな」




私達は会場を後にし、しばらく、黙ったまま、歩いた



11月の夜

風はもう冷たかった



拓海くんは何か考えてるようで、

そっとしてあげたくて…。


少し距離を置いて彼の背中を見てた



急に立ち止まって振り返った拓海くんがズカズカと私の方へ歩いてくる



「お願いがあるんだけど…」


「なに?」


彼は首を傾げた私の髪を撫でながら泣きそうな笑顔で言った




「抱きしめても…いいかな?」




そんな切ない顔されたら、私が抱きしめたくなるじゃない



「いいよ」




~~~~~~~~~~~~~~~~~~



今まで、抱きしめてもいい?なんて

聞く前に抱きしめてた



何でだろう


大切にしないと壊れてしまいそうな気がして…




彼女の柔らかい髪が頬をくすぐる


細い腕を精一杯伸ばして、小さな手が俺の背中をさすってくれてる



そんなことされたら……


泣きそう



泣いちゃうじゃん

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