第6話


もう、人を好きにならないと決めてたのに…


彼の笑顔が繰り返し浮かんで

どんどん広がっていく

私の中が彼でいっぱいになっていく


今日、また会える

そう思うと

1日中、上の空で時計ばかり見てた




「お疲れ様」


「こんにちは。……」


「なぁーに、してんの?早く乗りなよ」


「うん」


「…何処に行くの?」


「今から、俺の店に行って着替えて、そんで、○○ホテルでパーティがあるから、それに出席する。以上、今日の予定」


「パーティ?どうするの?だから、こんな格好でいいの?って昨日聞いたのにぃー」


「ちゃんと、聞けよ。だから、俺の店で着替えるって言ったでしょ?

美桜ちゃんのも用意してあるから」


「ほんとっ!楽しみ」


店に着くと彼がちょっぴり自慢気に差し出した洋服


「はいっ、これ着てみて」


拓海くんが用意してくれてたワンピース


シルク素材の淡い桜色

胸元があいてて裾がフワリと広がって、すごく素敵なものだった



「可愛い~」


試着室で急いで着替えた


拓海くんは2階で準備してる様子


私が試着室から出でくるとスーツ姿の彼が立ってた



「拓海くん、かっこいいね。私は?どう?」


聞いてるのに何も言ってくれない


「おかしいかなぁ?」


「いやっ、いいんじゃない」


「ほんとに!」


「あぁ」





美桜ちゃんに似合うと思って用意したワンピース


予想以上に綺麗で言葉が出なかった


このまま、

俺だけのものにしたいと思った




「そうだ、アクセサリーも借りてたんだ。つけてみて」



胸元のあいたワンピースに合わせたアクセサリー。

白い肌に輝いた



「行こっか」


「うん」



斜め後ろからちょこちょことついてくる彼女が可愛くて、思わず手を繋いだ


(あー、このまま、どっか行きてぇ)

にやつく顔を手で覆った



「どうかした?」


前に回って覗きこんでくる彼女


「何もねぇよ」


そんなキラキラした瞳で見つめられたら、心の声が隠しきれなくなるじゃん




大通りに出てタクシーを止めた


「今日は車じゃないの?」


「酒飲むからな」


「そっか」




本当はこの手を離したくないから…



いつの間にこんなにも

好きになってたんだろう

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