第5話


彼女をばあちゃん家で見た時、


透き通るような白い肌

大きな瞳


今まで出会った女とは正反対の彼女の空気感にドキっとした



穏やかに笑う表情にどこか陰があるようで気になって仕方なかった



そんなことを思ってた矢先

駅前で偶然、彼女を見かけた


本当に辛そうでほおっておけなかった



華奢な身体を支えると壊れそうで…。


震える肩の温もりを感じ、

溢れる涙を見ていると

身体だけでなく

心ごと守ってやりたいと…


自然にそう、思ってた




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「あーーっ!」


「なんだよー、いきなり」


「私、お店に戻らなきゃ、お客様にお届け物があって出て来たっきり」


「ハハハぁー、お前、変わったやつだなぁ。今の今まで、ビービー泣いてたくせに。ってかそんな、でっけぇ声出るんじゃん」


急に慌て出す私を見て、彼は大笑いした



「送ってやろっか?みーおちゃん」


「へっ?」


「何か美桜さん、ってのもなぁ。お前いくつ?」


「27」


「もっと、下かと思った」


面白がって私の頭を撫でる彼


「もう、バカにしないでよ。色気なくてすみませんねぇ」


子供扱いされてるようでムカついて、そっぽ向いた



「何ふてくされてるの?送らなくていいのかなぁ。急ぐんだろ?」


「あっ、急ぎます。お願いします」



にこりと笑って立ち上がった彼が急に何か思い付いたように振り返った



「そうだ!送ってやるから…明日……」


「明日?」


「うん、明日、ちょっと一緒に行ってほしいとこあるんだけど…。」



何故か、彼の顔が少し曇ったように見えた



「何処に?」


「詳しいことは後で話すよ。とりあえず、行くぞ」


「あっ、うん」




この間、初めて送ってもらった時、

あまり話さなかった彼が今日はゆっくりと

自分のことを話してくれた



お店のこと

洋服のこと

友達のこと



あっという間にお店に着いた




「ありがとう。助かったぁ

たっくん…じゃなくて

あの…拓海くんって呼んでもいい?」


「いいよー」



照れくさそうに返事しながら、ハンドルを片手で持ち、車をバックさせる

そっと、助手席のシートにかけられた左手に胸がビクンとした



「明日、仕事何時まで?」


「明日は5時まで」


「じゃあ、迎えに来るね」


「どこ行くの?」


「それは明日な」


「でもー、いつもの格好で大丈夫なところなの?」


「それは心配なし!楽しみにしといて」


「んー、わかった。じゃ、またね」




すっかり彼のペースで次の約束をしてしまった

……けど



"さよなら”じゃなくて

"またね”って言えることが嬉しくて


彼と話すひととき、

気付くと……

昔の何も荷物を持っていなかった頃の私に戻ってた。



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